ホクレン営農技術情報誌 あぐりぽーと
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 BSEの発生、偽装表示等により、牛肉ではトレーサビリテイの義務化が間近に迫っている。生産者が蒔いた種ではないが、結局は生産者に刈り取りを始めていただかなければ「安全・安心」への対応ができない。もちろん、JAグループ挙げて、信頼回復の取り組みを進めている。その基本的な考えと先進的な対応事例を紹介し、生産から消費へ信頼情報を届ける参考に供したい。


牛肉トレーサビリテイとは?
【生産振興部 生産振興課】

 牛肉は、BSEによる騒動や牛肉偽装事件などにより、一度は失われた消費者の信頼(安心)を回復する過程にある。そのためには、消費者から求められる、牛肉の生産から流通までの履歴情報開示に取り組むことと、履歴情報開示の基礎として、より確実な安全性確保に取り組むことが急務である。こうした中で必要とされていることが、牛肉の履歴を追跡・遡及でき、開示できる仕組み、すなわち「牛肉トレーサビリティ」の構築である。
 この仕組みの構築のために国は、『牛の個体識別のための情報管理及び伝達に関する特別措置法(=牛肉トレーサビリティ法)』を今年6月11日に公布した。この法は、生産段階では今年12月1日から、流通・小売り段階では来年12月1日からそれぞれ施行予定であり、牛肉トレーサビリティが義務化されることは既に広く知られていることである。
 『牛肉トレーサビリティ法』の目的は、「牛の個体識別情報の適正な管理及び伝達により、BSEのまん延防止の基礎とするとともに、牛肉の個体識別のための情報を提供し、牛肉の生産、処理・加工、流通の各段階の健全な発展と消費者の利益の増進を図る」ことである。牛個体識別台帳(データベース)に記録されている牛に由来する特定牛肉(国産牛の精肉)が対象になり、輸入牛肉とひき肉などの加工牛肉は対象にならない。同法による牛肉トレーサビリティ制度の概要は、次の図1の通りである。尚、各種届出義務違反・耳標装着等義務違反・帳簿保存等義務違反・個体識別等番号表示義務違反に対する罰則(30万円以下の罰金)がある。
 この制度により、
(1)牛肉の生産から消費まで流れに沿った追跡と、牛肉の消費から生産までの各段階の履歴の遡及ができる。
(2)生産から流通までのルートが分かることで、食中毒事故等が万一発生しても、迅速に事故の原因と責任箇所を究明し、確実に製品回収をして、被害と損失を最小限に留めることができる。
(3)個体識別番号により、表示と流通経路の透明性を高めることができる。
 よって、この制度の着実な履行により、牛肉の生産から流通までの信頼確保に繋がると考えられる。また、信頼をより強固なものとするために『全農安心システム』の取り組みが参考になるので、後で紹介させて頂く。
 一方、トレーサビリティの基礎となる、食品の安全性をより確実に確保するためには、科学的根拠に基づいた製造管理手段として、HACCPが注目されている。HACCPは、一連の作業工程において、特に人などへの危害の発生が想定され、重点的に管理する必要がある箇所を、日常的かつ集中的に管理し、その管理内容を全て記録することにより、工程全般を通じて安全性の確保を図る方式である。牛肉の生産と処理・加工の段階でも、HAC
CPの考え方を取り入れた衛生管理を行っている箇所がある。これらについても、事例を紹介させて頂く。
 今後は、牛肉についてのトレーサビリティと、HACCPに代表される安全性の管理システムとを結合させ、消費者に対してより確かで、より安全な牛肉を提供することが、消費者の牛肉に対するより一層の信頼(安心)確保に繋がるものと考える。

図1 牛肉トレーサビリテイ法による牛肉トレーサビリテイ制度の仕組み
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