ひとつひとつの
いのちが輝く
チーズ
〜共働学舎
新得農場〜

白い滴のマリアージュ

今回のテーマ

ひとつひとつのいのちが輝くチーズ
〜共働学舎新得農場(新得町)〜

「シットク・ナイ」(山の端)が語源のとおり、日高山脈の北端にある新得町。この町の通称「牛乳山」と呼ばれる山のふもとに、共働学舎新得農場があります。
「競争社会ではなく協力社会を」の考えのもと、宮嶋真一郎さんが創立された共働学舎。
身体が不自由な人、精神的に不安な人、学校や会社に行きたくない人、動物と触れ合いたい人、色々な理由を持つ人が安心して生きられる居場所をつくることを目的としており、北海道内には3か所あります。どの場所でも、共同生活の中で、さまざまな仕事を分担して共に働き、経済的にも精神的にも自立できるよう互いに支えあい、人も自然もつながり、誰もがのびのびと生きられる豊かな暮らしを目指しています。

新得農場ではブラウンスイス種の牛を飼い、乳を搾り、チーズをつくっています。「乳は運ぶな」というジャン・ユベール氏※の教えのとおり、搾った乳はポンプを使わず高低差を利用した自然流下式のパイプラインで工房に運ばれ、熟成タイプチーズは、自然の軟石を積み、活性炭を敷き詰めた半地下の熟成庫でゆっくりと醸されます。すべては、牛や乳、チーズが中心。自然のリズムにあわせ、人が寄り添うということを徹底しています。

質の高いチーズをつくる技術は、今や、北海道のみならず、日本のチーズをけん引する存在です。チーズづくりをしている人、これからやろうと志している人、さまざまな人が学びに訪れ、それを快く受け入れています。いつまでも、創立の理念からぶれることなく、牛と人を中心に自然に寄り添いながら、日本らしさ、十勝らしさを追求する姿は、大切なものを守りながら、進化を続けています。

現在、フレッシュタイプからハードタイプまで約15種類のチーズが、1つ1つ丁寧に職人の手でつくられています。
「笹ゆき」(左)北海道に自生する熊笹入りの塩を使い、仕上げに熊笹の葉を巻いた白カビタイプは北海道ならでは。
「さくら」(右)日本酒由来の酵母を使用し、チーズの上に桜の花をのせた日本らしいオリジナリティを表現した酵母熟成タイプで、春限定。

※ジャン・ユベール氏…フランスAOCチーズ協会会長。