北海道とつくるおいしさ[03]
カルビー(株)

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北海道とつくるおいしさ03

カルビー(株)の「ポテトチップス」は、1975年の誕生当初から、原料に北海道産馬鈴しょが使われていました。現在は加工用馬鈴しょ品種「トヨシロ」「きたひめ」「スノーデン」などが、「じゃがいものおいしさを生かしたパリッと軽い食感」や揚げた時の色の美しさといった同社のこだわりを支えています。本社と新宇都宮工場を訪ね、産地と一体となった独自の商品作りを取材しました。

原料となる馬鈴しょの8割が北海道産

今年4月に創業70周年を迎えたカルビー(株)。同社の売上高の約7割は、「ポテトチップス」「堅あげポテト」「じゃがりこ」「Jagabee(じゃがビー)」といった根強い人気を誇るポテト系スナックが占めています。原料となる国産馬鈴しょは、その8割が北海道産。1972年に誕生したポテト系スナック第1号の「サッポロポテト」、その3年後に発売を開始した「ポテトチップス」のどちらも、最初から北海道産馬鈴しょを使っていました。(写真はいずれも発売当時のものです)

パリッと軽い食感、
きれいな黄金色を生む

「『サッポロポテト』の生地工場を千歳市に建て、原料もその土地で調達しようと試みたのがきっかけのようです」と教えてくれたのは、購買本部馬鈴薯(しょ)対策室の川崎滋生室長。「北海道産の馬鈴しょは、でん粉含量が高く歩留まりがいいんですよ。パリッと軽い食感が出せますし、きれいな黄金色になります。『ポテトチップス』にはなくてはならない原料です」と表情を緩めます。

生産者との架け橋、フィールドマン

「ポテトチップス」は、生産者との協力体制を築くことで通年販売が可能となっています。1980年に原料部門を分社し、帯広市にカルビーポテト(株)を設立。独自の水準を満たした馬鈴しょを栽培するためのサポート役として、フィールドマンと呼ばれる社員を産地に配置しました。川崎室長は「フィールドマンは、当社と生産者をつなぐ架け橋のような存在」と語り、その仕事の様子をこう説明します。「生育期間は、畑を巡回して異常があれば生産者に報告し、防除のタイミングを見計らって声をかけることも。生産者と同じ目線で、栽培技術や品質の向上を目指しています」。

貯蔵は、生産者や品種等別に

収穫後の馬鈴しょは、生産者や品種、コンディションによって部屋を分けて貯蔵。この時、部屋ごとの温度、湿度、二酸化炭素の濃度を管理するのもフィールドマンです。「彼らは、生産者の収入を増やすにはどうしたらいいのか真剣に考え、行動しています。高品質、高収量の馬鈴しょ作りができれば、私たちも質の良い商品を消費者に届けられます」と川崎室長。生産者への思い、おいしさへのこだわりが感じられます。

複数品種をタイミング良く出荷

貯蔵庫から工場へ出荷する順番は、「ポテトチップス」にして最もおいしいタイミングを見定めて決定。揚げた時の焦げの原因となる糖度の高い品種は早めに出すなど、「トヨシロ」「きたひめ」「スノーデン」といった複数品種を使い分けています。北海道産の馬鈴しょは、例年、新じゃがが出回る9月から翌年5~6月、年によっては7月まで使えることがあるといいます。「生産者の皆さんが、完熟させて皮を強くしてから収穫してくれるので、長期保存が可能です。こういった質の高い馬鈴しょの安定的な確保のため、ホクレンと協力して、生産地開拓にも力を入れています」と、川崎室長は語ります。

いつ、どのエリアにも同じおいしさを

新宇都宮工場では、「ポテトチップス」の生産ラインを見せてもらいました。「いつ、どのエリアにも同じおいしさをお届けするために、製造の現場でもさまざまなこだわりがあるんですよ」と話すのは、人事総務課人事総務チームの福田賢一さん。「例えば、馬鈴しょの品種やでん粉含量により、スライスする時の厚みをコンマ数ミリ単位で変えています。使用する油や揚げる時間も常に同じというわけではありません。ほかにも、馬鈴しょは皮のすぐ下がおいしいので皮は薄くむくなど、細かなルールをいくつも設けています」。

生産者の仕事を消費者へ伝えたい

トレーサビリティーも徹底し、その一部は消費者にも公開。「ポテトチップス」の外袋にある製造日と製造工場を同社ホームページの「じゃがいも丸ごと!プロフィール」に入力すると、産地や生産者、品種の情報を見ることができます。「消費者に、私たちの大事なパートナーである生産者の仕事や、現場を伝えたくて」と、川崎室長はその想いを語ります。

同社では、「揚げたてのおいしさを知ってほしいから」と、新千歳空港や東京駅などにアンテナショップ「カルビープラス」を展開。ショップ内で揚げたアツアツの「ポテトチップス」を提供することで、原料である馬鈴しょの魅力をPRしています。「私たちは、もっと馬鈴しょの需要を広げるような仕事をしていきたいと思っています。そのためには生産者の皆さまの力が必要です。一緒に良いものを作って発展していきましょう」。
川崎室長から、温かく、心強いメッセージをいただきました。

子どもから大人まで、幅広く愛され続けてきた「ポテトチップス」。手が止まらない、あのおいしさは、馬鈴しょ生産者との二人三脚から生まれていることを実感しました。