北海道発、
JR貨物で全国へ

[前編]

はるばる来たぜ、食卓へはるばる来たぜ、食卓へ

北海道発、JR貨物で全国へ Vol.1

日本の食糧基地・北海道。年間約350万tもの農畜産物が、全国へ移出されています。海を渡って本州、四国、九州へ、南は沖縄県まで。その距離は札幌からでも最長2,000km以上。膨大な量を日常的に津々浦々へ届ける壮大なスケールの物流は、JR貨物による鉄道輸送がその一翼を担っています。3回連載のこの企画では、生産地と消費地を結ぶ大動脈の重要性に迫るとともに、作り手・運び手・買い手が三位一体となって取り組むべき課題などを掘り下げます。

4つの輸送手段を組み合わせて利用

ホクレンでは、北海道産農畜産物の年間移出量の約7割、約260万tを取り扱っています。「輸送手段別の内訳は、トラックが5割、JR貨物による鉄道輸送が3割、内航不定期船(船を借り切っての輸送)が2割、その他に量は少ないですが、飛行機も利用しています。鮮度を維持できる輸送機材か、販売ロットに合う輸送機材か、輸送距離はどうか。これらを考慮して、輸送手段を決定して利用しています。どれかひとつが欠けてもニーズに合わせて運び切ることは困難です」。ホクレン管理本部物流部の戸田弘二部長は、そう言い切ります。

バランスが秀でている、鉄道貨物輸送

「日本の輸送のシェアはトラック、船、鉄道の順です。JR貨物の輸送量は数%ですが、輸送量、スピード、コスト競争力のバランスは秀でていると自負しています」。こう語るのは、海運業に長年携わった後、転籍された日本貨物鉄道(株)執行役員の柏井省吾北海道支社長。トラックは数が多いものの、ドライバー不足が深刻です。船は500t、1,000t単位の輸送ができますが、スピードが遅く、港は多くありません。飛行機は、スピードは速いですが、輸送量が限られ、コストも高くつきます。「総合的な観点からいえば、北海道からの農畜産物の輸送において鉄道輸送が最良の選択でしょう」。

生産者の庭先から、消費地の市場まで

柏井支社長が、JR貨物がなくてはならない輸送手段と語る理由は3つ。1つめが、緊密な輸送ネットワーク網です。全国にはJR貨物の駅が147あり、北海道には札幌、帯広、北旭川、釧路、苫小牧、函館など14の駅があります。北海道と東北、関東、中部、関西、九州の大消費地圏を結ぶ直行列車と、各エリアのターミナル駅からの中継列車が結ぶ輸送ネットワークはすみずみにまで広がっています。また、それらの駅の多くは青果市場に近接しています。「たとえるなら、生産者さんの庭先で農畜産物をお預かりして、青果市場まで届けられるわけですから、小回りはとても良いと思います」と柏井支社長。産地から駅や港までの輸送コストも生産者の負担になることから、トラックの輸送距離は短いほど望ましいのです。

コンテナ1個、5t単位で運べる

2つめは、多数の種類から輸送ニーズに合わせてコンテナを選べることです。サイズは5t車相当の12ftから10t車相当の31ftまであり、1個から利用できます。戸田部長は、「北海道から道外へ運ぶ際、トラックで運ぶ場合は基本的に20tの積載です。最近はドライバー不足の影響から荷卸し先は2カ所程度、つまり1カ所に10t下ろすことになります。一方、JR貨物による鉄道輸送は5t単位の小口で持って行けます。この点は我々にとって大きなメリットです」と補足します。さらに、農畜産物の種類や季節によって、常温の汎用コンテナ、通風コンテナ、冷凍/冷蔵コンテナを選べるところも魅力だそうです。

ドライバー不足の解消にも

3つめとして、貨物列車1両には5tコンテナを5個積載できるため、道外で運行される最長26両の列車は5tコンテナ130個分、計650tの貨物を運べます。これは、10tトラック65台分に相当し、ドライバー不足の解消にもつながります。
※北海道発着列車は、施設の関係で貨車20両、コンテナ100個、計500t積載で運行

「一貫パレチゼーション輸送」を導入

柏井支社長、戸田部長が課題として挙げたのは、ドライバー対策です。農畜産物の輸送では、ドライバーはトラックでの輸送だけでなく、集荷場所から貨物駅までのコンテナ輸送、貨物駅から配達先までのコンテナ輸送も担っています。しかも、「手積み・手下ろし」が一般的だったことから、ドライバーの作業時間が長く、肉体的負担が大きいことから、敬遠されることが多くなっていました。この問題を解決するために、ホクレンは箱詰めした農畜産物をパレット積みのまま、発送から到着の荷卸しまで一貫して行う「一貫パレチゼーション輸送」を導入し、輸送力の安定確保を図っています。今後は、品目別にパレットに合う段ボールサイズの統一規格を設定するなどして、導入率を増やしていく計画です。

すべて運び切り、いつでも市場に

この秋も、十勝やオホーツクから馬鈴しょや玉ねぎの臨時列車が何本も運行されたように、北海道の農畜産物の輸送には鉄道貨物輸送はなくてはならない存在です。「北海道で生産された農畜産物は、すべて運び切ることが使命」と戸田部長。その言葉を受けて柏井支社長は、「いつでも市場に届けられるようにと、JA・生産者さん、ホクレンさんをはじめ農業関係者のみなさんが一生懸命に努力されています。我々も鮮度が命の農産品をなるべく早く、確実にお届けするために、みなさんとコミュニケーションを深めながら、我々の役目を果たさせていただきたいです」と、心強い言葉を寄せてくれました。

次回は、十勝から出荷される馬鈴しょの安定供給に向けた取り組みをご紹介します。