家族と仲間の信頼の証のチーズ
~プロセスグループ夢民舎~

白い滴のマリアージュ

今回のテーマ

家族と仲間の信頼の証のチーズ
~プロセスグループ夢民舎~

アラ・ピラ・ッぺ(片方に崖のある川)が由来の安平(あびら)町。2006年に早来(はやきた)町と追分(おいわけ)町が合併してできた町だが、1906年から1954年まで続いていた町名に戻ったという経緯は、知らない人も多い。
安平町は、1933年に北海道製酪販売組合連合会(後の雪印乳業)が、安平町早来遠浅地区に、日本で初めての大規模なチーズ工場を建設した場所でもあり、「チーズ専門工場発祥の地」と呼ばれる。

この工場は、半世紀の操業を経て、町外に移転してしまったが、町内にチーズづくりの灯火を消すまいと、現代表取締役の宮本正典さんを中心として、町内の酪農家、畑作農家などが集まり、1990年に「プロセスグループ夢民舎(ムーミンシャ)」を立ち上げた。
おりしも、町が給食センターの有効活用を模索していた。その給食センターは、夢民舎のチーズ工房となり、今に至るまで活用されている。

工房立ち上げから30年。宮本さんらの思いのとおり、夢民舎のチーズは、町のシンボルとなった。2018年の胆振東部地震では、震源地からほど近い安平町も、大きな被害を受けた。夢民舎も、工房の一部が損壊。水が来ない、電気が来ないなど、大きな被害が出た。
それでも、宮本さんご夫妻、そして娘で副社長の吉川絵理子さんは、前を向いて、一歩一歩復旧に歩を進めた。被災後数か月間、町内避難所での炊き出しを行った私は、町の人やボランティアの人達が、再開した「レストランみやもと(夢民舎直営のレストラン)」に足を運び、嬉しそうにチーズを買い求め、カマンベールソフトクリームを手にする姿を見てきた。

より品質の良いチーズを提供していきたいと、宮本さんは変わらず工房に立ち、絵理子さんは、お客様との丁寧なやりとりで遅くまで事務所での仕事に尽力している。
派手ではないが、多くの人が手に取りやすいチーズを広げていきたい。その思いが浸透し、町の看板となった。家族と、町の仲間との信頼の証としてのこのチーズを守るために、努力の積み重ねは続いていく。

チーズの紹介:スモークカマンベール
カマンベールを燻製したという、世界でも類のないチーズ。ベースとなる「カマンベールはやきた」は、容器に密閉した後に加熱処理しているため、いつでも日本人ごのみの「トロトロ」感が味わえ、賞味期限も長い夢民舎の看板のチーズ。日本人が大好きなスモークテイストが加わり、伸ばす手が止まらないほど、パクパクと食べ進んでしまう。