太平洋上をピストン運航
「ほくれん丸」


2隻の大型船で
道東から関東へ
北海道の中でも、とりわけ道東地区の農畜産物を全国へ送り届ける輸送手段として活躍しているのが、2隻の高速大型RO-RO船(※)「ほくれん丸」です。北海道屈指の漁港としても知られる釧路港から茨城県日立港まで、約800kmの距離をほぼ毎日ピストン運航しています。ほくれん丸が釧路港から輸送する貨物のうち、約4割を占めるのが生乳です。2023年度は生乳の移送用タンク(ミルクローリー)で約9300台分を輸送しました。
ほくれん丸は、生乳の道外移出拡大への対応の一環として1993年に就航。97年には第二ほくれん丸が就航し、2船体制となって隔日運航から毎日運航体制に移行しました。2隻とも06年に更新し大型化。現在、運航しているのは19年に入れ替えた三代目の船です。安全な運航はもちろんのこと、よりスピーディーに、そして生産者が手塩にかけた農畜産物の品質を損なわないよう、ほくれん丸は毎日、太平洋上を南へ北へと運航しています。
※RO-RO船とは、トレーラーごと輸送できる貨物船のこと
通年安定運航で
食卓にミルクを
生乳を例にほくれん丸の運航の流れを紹介します。道東各地の牧場で搾乳された生乳は、一旦、牧場のバルククーラーと呼ばれる貯蔵タンクで冷却され、集乳車によって中継地となるクーラーステーションへ。詳しく品質検査を行い、合格した生乳を船に載せるミルクローリーへ充填します。このとき、生乳を2℃まで冷却。このローリーは魔法瓶のような構造になっており、生乳の温度を保ったまま目的地まで運ぶことができます。充填が終わると、生乳はトラックで釧路港へ。
午後2時の釧路港には、日立港からのほくれん丸が到着。船内から空のミルクローリーが続々と降りてきて、入れ替わりに、生乳が入ったローリーが船内へ。波の揺れから、車両と生乳を守るために、ローリーをデッキの床にしっかり固定し準備を済ませると、午後6時には再び出港します。翌日午後2時に、日立港へ到着すると関東各地の工場へ陸路で輸送。牛乳等になって皆さまの食卓に届けられます。
-
釧路港で積み込み作業中のほくれん丸。船体前後にあるランプウェイからトラックが出入り
牛乳・乳製品は毎日の食卓に欠かせないもの。ほくれん丸は、そんな日常を支えます。一年を通して運休するのは定期点検と悪天候時など。荒天が見込まれる場合は運航スケジュールを変更するなど、影響を最小限に抑える工夫も。23年度は2隻で308往復しました。
また東日本大震災で日立港が被災した際には、発着を品川埠頭に変更し、いち早く運航を再開。非常時でも食料供給が途絶えることのないよう最善を尽くしています。近年、災害による鉄道の輸送障害に備え、JRコンテナの代行輸送を行うなど、本州と海を隔てた北海道の物流にとって、ほくれん丸は大きな役割を果たしています。
-
船内のデッキでは停泊する4時間の間にミルクローリーを積み込み、固定する作業が行われます