日本の食料自給率の話をしよう。
Q&A 日本の食の未来のためにできること
Q:GREEN編集室 A:農林水産省 小川 英伸さん
※農林水産省「知ってる? 日本の食料事情2020」より
Q. 日本の食の未来はどうなるのでしょうか?
A.2030年度に45%を達成するため、さまざまな施策が進められています。
低下し続ける食料自給率に対し、政府は2030年度に、45%まで引き上げるという数値目標を設定しています。そのための施策として、農業の担い手の育成や農地の確保といった農業基盤の強化、農産物の生産性を向上させる策としてのスマート農業の支援などを掲げ、官民が連携してさまざまな取り組みを進めています。
政府が特に力を入れているのは、農作物の輸出です。そこで「自給率が低いのに、なぜ輸出するの?」という疑問が湧いてきます。その理由は、海外への販路を拡大して、生産基盤の強化を図ることが、国内での食料供給力を高めることにつながるからです。
農業のある未来を次の世代へ
日本全国には、農業が産業を支えている地域が多くあります。また、多くの伝統行事が稲作を中心とした農業と密接にかかわっているように、農業は日本の文化に深く根付いています。今後の人口減少などの影響も受け、農業の活力が減退していけば、これまで築かれた文化の根幹が失われる可能性も、大いにありえます。
日本は今のところ、農業とともに、地域独自の文化も受け継がれ、私たちは一年を通して旬のおいしいものを必要なだけ食べることができます。私たちにとって当たり前のこの幸せを、次の世代に確実に手渡すために、一人ひとりが食や農業への関心を持つことが重要です。
Q. 食料自給率を上げるために私たちができることは?
A.国産を選ぶことが、日本の未来を支えることにつながっているという意識を持つことです。
食料は、人間が必要な物資の中でも特別なものです。毎日安定して供給されなければ、人間は生きていけず、健康で楽しく生きていくためにも不可欠です。
国産の農畜産物を選ぶことは、家族の健康や、安全・安心でおいしい食事のためだけではありません。地域の農業の生産力が上がれば、流通や加工、小売業など食に関係する幅広い産業の活性化を促します。私たちが国産を選ぶことで生まれるこの好循環は、日本の未来を支えていくことにもつながります。
政府は国民の農業への関心を高めるために、国民に向けたPR活動を広く展開して、食育や地産地消の取り組みなどを支援していく予定です。
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※2017年9月1日から順次。2022年3月31日までは、食品メーカー等が準備する猶予期間としています。 ※消費者庁「全ての加工食品の原材料の産地が表示されます!」2020年より
はじめの一歩は食卓の会話から
日常的に国産を選んでいる人にとっては、食料自給率が上がっても、普段の生活に変化はあまり感じられないかもしれません。小川さんは、「家族との会話から生まれる、うれしい変化もあるかもしれません」と、こんな話を聞かせてくれました。
「私はコロナ禍で在宅勤務が多くなり、通勤時間がなくなったおかげで食材の買い出しや料理を作る機会が増えました。そこで、食事の時間にお米の種類や産地、今が旬の野菜や魚などの食材にまつわる会話を増やしたところ、子どもがごはん好きになりました(笑)」身近な人と食料自給率の話をしようとすると、構えてしまうかもしれません。まずは、食材にまつわる会話の時間を増やすところから、はじめてみませんか。