吉田 隆さん
(JAびらとり)
農家の時計

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今回の農家さん

吉田隆さん(JAびらとり)
1972年生まれ。平取町の農家の3代目として24年前に就農。2016年にJAびらとり野菜生産振興会トマト・胡瓜部会の副部会長に就任。ベテランの思いを受け継ぎ、次世代を引っ張るアニキ的存在。現在独身で、花嫁を募集中とのこと。

JAびらとりの特産物
『びらとりトマト』とは ?

全道一のトマトの出荷量を誇る平取町。2012年に商標登録されたびらとりトマトは、すべて『桃太郎』系の品種。糖度の平均は5〜6度と甘みに富み、実が締まり日持ちがよいのが特徴です。さらに、選果場で一つひとつ糖度を測定し、糖度4%以下のものは出荷しないなど独自の基準を設けています。
トマトジュースなどの加工品も豊富で、『ニシパの恋人』というブランド名で販売されています。

■吉田さんの1日(4月の一例です)

育苗と定植が作業の中心

びらとりトマトの収穫期は、例年5月上旬〜11月中旬。吉田さんも、最後の収穫まで時期をずらしながら栽培を行います。3月〜5月にかけては、育苗とビニールハウス内の苗床への定植作業が中心で、一番気を使うのはハウス内の温度管理だと言います。繁忙期は6月〜8月で、「収穫に追われるので、4時起きになります」と吉田さん。作業後は、仲間とバーベキューをしたり、お酒を酌み交わすのが日々の楽しみなのだそうです。

トマトの栽培が始まるのは真冬 !

平取町は、人口5000人ほどの小さなまちながら、トマトの年間販売額はなんと40億円以上 ! そんな一大産地を訪れたのは、冬将軍が猛威をふるう2月上旬のこと。トマトというと夏野菜のイメージがありますが、すでにビニールハウスでは育苗の真っ最中なのだそう。
ちなみに平取町は、北海道の中でも比較的雪が少ない地域で、ハウスのビニールは一年中張ったまま、という農家さんがほとんどのようです。真っ白な雪景色にいくつものハウスが立ち並ぶ中、私たちは吉田さんのハウスを訪ねました。

5月の初出荷に向けて、ハウスを埋め尽くす小さな苗たち

案内されたハウスには、苗、苗、苗 ! これらは1月10日にまいた種が発芽したもの。吉田さんは、トマトの苗を育てるポイントについて「温度と水の管理の徹底ですね。苗は生長し過ぎてもダメ。3月の定植に向けて、茎を太く育てることが大事です」と説明します。
吉田さんによると、定植する苗の高さは30〜35cm程度が最適なのだとか。それ以上生長すると苗が倒れやすくなるリスクがあるそうです。さらに、「育苗中に気温が12度を下回ると、トマトの実が割れたり、定植後に影響が出てくるんです」とのこと。冬の間は日中でも暖房をつけ、夜間はトンネルにビニールのカバーをかけて温度を下回らないようにするなど、細心の注意を払って育てられています。

昨年は大雪や大雨、夏場の低温などで厳しい年だったそうですが、それでも吉田さんは「仲間と情報交換しながらトマトを育てるのは楽しい。消費者の皆さんの美味しいという言葉がモチベーションになりますね」と笑顔を見せます。
最後に、トマトづくりへの思いについて尋ねると、「トマトは水管理で甘さと収量のバランスが決まる作物です」と吉田さん。「美味しさは当然ですが、その上で収量を上げられるかどうかは農家の使命で、頑張り次第だと思うんです」
私たちの生活は生産者の努力によって支えられていると、改めて実感した1日でした。