地域限定から全国へ
産地サミットでおいしさを守る『ふっくりんこ』
- 函館育ちふっくりんこ蔵部 部会長吉田 優(よしだ まさる)さん
せたな町生まれ。会社員を経て1991年に農家の四代目として就農。水稲(ふっくりんこ、ゆめぴりか、ななつぼし、えみまる)のほか、大豆、そば、ブロッコリーを栽培。2015年「せたな地区水稲部会」部会長に就任。2019年より現職。
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北斗市の道南農業試験場で生まれた『ふっくりんこ』は、北海道の中でも、秋が長い道南の気候に適した晩生(おくて)の品種。「食味評価が非常に高かったのですが、当初は道南地域に作付が限定されていたため、2001年の時点では北海道が奨励する品種として認められなかったんです」
そう説明するのは、道南(JA新はこだて、JA函館市亀田、JA今金町)のふっくりんこ生産者で組織される「函館育ちふっくりんこ蔵部」部会長の吉田優さん。翌年には現地試験を拡大し、試食会を多数開催。「道南からブランド米を」という生産者たちの熱意が、地元の米卸販売業者などの心を動かし、2年後の2003年に栽培地域限定品種として、北海道の優良品種に認定されました。
「その翌年に発足したのが、函館育ちふっくりんこ蔵部です。まずは地元に愛されるブランド米を育てることを目的に、生産者の間で〝掟〟と呼ばれる厳しい基準を決めました。味や粘りの決め手となるタンパク含有率も定め、それをクリアした米だけを流通させる仕組みです」—そうです、この取り組みが、その後誕生するゆめぴりかの「北海道米の新たなブランド形成協議会」の礎となるのです。
「函館育ちふっくりんこ蔵部」では、1ha当たりの収量などの目標を設定し、生育調査を実施
「ふっくらとした食感で冷めてもおいしい」。地元消費者の圧倒的支持で、ふっくりんこの評価は上昇。さらに栽培試験を重ねた結果、2007年に空知地区の「JAきたそらち ぬくもり米生産組合」が、道南以外の地域で初めての栽培を行うことに。そこで、道南の生産者が守ってきた基準を広域でも維持するため、同年に、栽培方法や品質管理について産地協定を締結する「ふっくりんこ産地サミット推進協議会」が発足。2008年には空知地区の「JAピンネ ふっくりんこ生産組合」が、翌年には「JAたきかわ ふっくりんこ生産部会」が仲間に加わり、北海道初となるふっくりんこ産地サミットでの米作りがスタートしました。生産量も大幅に増加し、現在は販路も沖縄まで広がっています。
「産地が拡大し、産地サミットの仲間も増えましたが、発足当時から基準はずっと変えていません。取引先からは、ブランドの品質を崩さないで、という声もあります。ブランドを守ることは、生産者だけではなく消費者の信頼を守ることにもつながっていると感じます」と吉田さんは話します。
道南で生まれた品種を全国へと押し上げたのは、ほかならぬ生産者の熱い思い。吉田さんは今後の活動について、「消費者との接点を増やしたい」と意気込みます。
「地元では人気でも、道外での知名度はまだまだ低い。店頭に立って、このおいしさを多くの人に知ってもらいたいですね。ひと口食べてもらったら、選んでもらえる自信はあります」
年1回開催される「ふっくりんこ産地サミット」の様子。地域を超えて生産者同士が意見を交換できる貴重な場
せたな町生まれ。会社員を経て1991年に農家の四代目として就農。水稲(ふっくりんこ、ゆめぴりか、ななつぼし、えみまる)のほか、大豆、そば、ブロッコリーを栽培。2015年「せたな地区水稲部会」部会長に就任。2019年より現職。