道産玉ねぎ
[後編]

おいしいの研究

道産玉ねぎ

vol.3

研究者:平原 啓甫さん

研究者:平原 啓甫さん

ホクレン農業総合研究所 作物生産研究部 園芸作物開発課 。玉ねぎの品種開発を担当して6年目。発芽試験や圃場(ほじょう)調査などを通じて年間数百種類の玉ねぎを見つめている。玉ねぎを使った好きなメニューはポテトサラダ。

早く大きく育つ玉ねぎを、
根気強く開発中!

北海道は、国内収穫量第1位の玉ねぎ王国です。玉ねぎといえば、肉じゃが、カレー、ハンバーグ…挙げればきりがないほど、さまざまな料理に使われる野菜ゆえ、年間いつでも流通していることが大切。前編では、そのために玉ねぎ王国に求められていることを、品種開発に携わる平原さんに聞きました。後編では、なかでも「早生(わせ)種」について掘り下げます。

早生よりも早い「早次郎(そうじろう)」

早生よりも早い
「早次郎(そうじろう)」

国内の玉ねぎの収穫は、春に佐賀県や兵庫県などで始まり、夏から北海道にバトンタッチして秋まで続きます。そのため、北海道の玉ねぎの品種開発には次の2点が求められてきました。1つ目は、貯蔵性を高めて全国的に収穫のない冬〜春にも流通させること。2つ目は、夏の切り替わりの時期に品薄にならないよう、より早い収穫を可能にすること。これが前編で平原さんに教えてもらったことです。

そして現在、平原さんが所属する農総研では、2つ目の需要に応える早生種の開発に特に力を注いでいるとのこと。さまざまな品種が植えられた圃場を見せていただくと、「これが、農総研が開発した『早次郎』です。2009年に品種登録されました」と平原さん。まさに早生種という感じの名前ですね。「はい。ただこれは、より早く収穫できる極早生(ごくわせ)というカテゴリーで、8月上旬から出荷できるんですよ」。

早さを求める開発はゆっくりと進む

早さを求める開発は
ゆっくりと進む

夏の極早生! なんだかビールを飲みたくなるような字面ですが、玉ねぎのお話ですよ。現在、農総研ではどんな早生種を開発しているのでしょう。「同じ極早生でありながら、もっと玉が大きくて収量が上がるものです。ちなみに玉ねぎの品種開発には10〜20年ほどかかるんですよ」。なんと! どうしてそんなに? 「玉ねぎの花は、種を植えてから2年目に咲きます。つまり、ある年に交配させた系統の種ができるのが2年後になり、それを何度も繰り返す必要があるため、どうしても開発がゆっくりになってしまうんです」。

根気が必要なお仕事ですが、平原さんのモチベーションとは? 「玉ねぎは食卓に欠かせない万能野菜です。毎年数百種類の系統を植えても、品種の候補になるものはほんの一握りですが、もしかしたら自分が携わったものから新しい品種が生まれ、たくさんの方に食べていただけるかもしれません。それがこの研究の醍醐味ですね」と、種を仕込む発芽試験用のろ紙を手に語ってくれました。現在開発中の系統が、無事に「品種」となることを楽しみにしています!

夏メニューにぴったりの「真白(ましろ)」

夏メニューにぴったりの
「真白(ましろ)」

ところで、「極早生よりもさらに早く!」という品種開発は行われているんですか? 「はい、一般的ではないですが、すでに超極早生と呼ばれるカテゴリーが存在します。7月下旬から出荷できる品種ですね」。極の前に超まで付いて! いったいどんな玉ねぎなんでしょう。「通常の極早生の黄玉ねぎより早く収穫できて、辛味の少ない白玉ねぎというものがあります」。白? 逆に白くない玉ねぎを知らないんですけど…。「いわゆる皮と呼ばれる一番外側まで白い玉ねぎのことです。農総研が栽培のサポートなどで携わっている『真白』が有名ですね」。

北見市の限られた農家だけで栽培されているブランド玉ねぎ「真白」。「柔らかくて傷みやすいため、栽培がとても難しいんですよ。辛味の少ないシャキシャキの食感が人気で、サラダなどにおすすめです」。夏の超極早生! ビールの話じゃないですよ。でも冷たい飲みものと一緒に味わう夏のひんやりメニューをつくるなら、超、極、ぴったりの玉ねぎです。スーパーなどで、ぜひチェックしてみてくださいね!