ホクレン営農技術情報誌 あぐりぽーと
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 北海道米の販売は、景気低迷と供給過剰による価格低迷、これに伴う産地間競争の激化など、非常に厳しい環境にある。
 このような状況下の北海道米の販売戦略としては、「高品質米生産による市場確保と価格浮揚」「安全性・信頼性の強化」「消費者ニーズに対応した米作りと産地形成」等、今後生産者と系統が一体となって取り組んでいかなければならない課題が数多くある。
 本特集では、「北海道米を巡る情勢と取り組むべき課題」を具体的に示し、農協・生産者に広く認識してもらい、北海道米販売拡大の一助としたい。


北海道米を巡る情勢と課題
【米穀部】

1.米穀市場における米流通の変化
 かつて消費者の米の購入先は米穀店、農協・生協、スーパーマーケットの順であった。しかし、規制緩和の進展と共に、購入パターンは変化し、スーパーマーケットが圧倒的な販売シェアを握っており、(表1)産地対応もこうした動きを十分注視する必要がある。

表1 平成12年度道政モニター定期意見調査
スーパー
マーケット
生産者
(親戚・知人)
穀物
小売店
農協
生協
ディスカウント
ストアー
その他
26.0% 20.3% 16.4% 14.8% 3.9% 18.7%

 精米小売業(内食)は米穀店からスーパーマーケットへのシフト、中食産業のコンビニエンスストア出店、外食産業による郊外型大手チェーンレストランの台頭というように、大手量販店を筆頭に仕入ルートが集約化している。すなわち、内食・中食・外食の市場は、総じて大手チェーンの全国ネット化が急激に進行しており、産地の原料供給に対して従来以上に「大型ロットの安定供給」と「品質の均一性」の要望を強めてきている。



<食市場の区分>
1.内食:家庭で調理して食べる
2.中食:家庭に持ち帰るが、調理加熱することなく食べる
 (コンビニ弁当、持ち帰り弁当、すし等)
3.外食:レストランなどに出かけて食事する

2.北海道米の生産・集荷・販売方針の骨子
 現在、全国的に良食味品種への作付集中が急激に進み、北海道産米の食味も一段と向上してきているが、デフレ傾向の中で、米の供給過剰による価格低迷の継続を予想せざるを得ない環境下にある。
 「北海道農協米対策本部委員会」では、以下の(1)から(3)を基本に、生産者所得の最大化を図り本道稲作の生産基盤の安定化に取り組んでいく。なお、生産・集荷・販売体制構築の前提として、「北海道水稲優良品種地帯別作付基準(平成14〜16年)」を基本に、品種別作付の適正化を推進する。

【取り組み内容】
北海道米を(1)高品質米、(2)一般用途米、(3)価格訴求米の3区分を基本として、加工用米、規格外米等を加え(表2、表3)、それぞれの生産・集荷・販売対策を明確にする。
(1)高品質米
 府県産主要銘柄に対抗できる商品力の確保と価格浮上を目指し、高品質米の生産拡大と安定供給を行う。

(2)一般用途米
 多様な市場ニーズに応じた商品をつくるため、一般用途米のなかに「実需者仕分米」を位置付け、基準を定めて集荷・販売する。特定の大口需要に絞った商品で、北海道米の独自性を追及する。

表2 北海道米の生産・集荷・販売フレーム
区分 摘要
自主流通
うるち米
(1)高品質米
(10万トン以上)
1.高整粒米
2.低蛋白米
3.高整粒米+低蛋白米
(2)一般用途米
(24〜26万トン程度)
1. 一般米
2. 実需者仕分米
  精米蛋白、異物除去、減農薬、有機米、低アミロース米、酒造好適米など
(3)価格訴求米
(4〜6万トン程度)
1.効率的生産と連動した商品
2.市場開発米
 (費用負担方式)
3.高蛋白米、2・3等米
(4) 加工用米 1.加工米飯・酒造・味噌・米菓
2.転作対応
(5) 規格外米等 1.系統集荷率向上による価格の安定化
2.部分的に価格訴求米を補填
3.需要に応じた調製による出荷
表3 北海道米の栽培品種
  品種名 品種特性・用途など 備考
うるち一般 きらら397 本道を代表する基幹品種 高品質米の対象品種
ほしのゆめ 北海道米のエース
あきほ かけ米、冷凍米飯用途
ゆきまる 直播栽培等(早生品種)
ほしたろう※ 広範な業務用米需要
ななつぼし※ 食味・収量共きらら超える
ゆきひかり 抗アトピー需要
ダル系 彩(あや) 冷めても硬くなりにくい
低アミロース米
(うるちもち中間品種)
栽培地区限定品種
はなぶさ
あやひめ※
酒米 初雫(はつしずく) 酒造好適米(醸造用米)
吟風(ぎんぷう)
もち はくちょうもち 主食用途が中心 団地
風の子もち 餅・殻粉が中心
※印は、採用年次2000年以降の新品種

(3) 価格訴求米
 低価格需要に対する供給米穀として、全体需要の確保と全体価格の維持に取り組む。品質に見合った価格設定により「品質と価格のバランス重視志向」に対応し、消費者の信頼を得る。

3.売れる米づくりは、ここが違う!
消費者ニーズに対応した広域産地形成
 売れる米づくりとは何か。米に携わる人ならば、常にこのテーマを考えているに違いない。端的に言えば「適正な価格で、タイミングよく出荷され、効果的な販売ツールと商品説明によって買い手の欲求に働きかける米づくり」ということになるだろう。
 実需者(ユーザー)から求められているのは、打ち出したい「顔」をはっきりさせることである。各産地にいろいろなブランドがあるが、ブランドで売るのでなく、ブランドの精神(産地の取り組み)を売るのである。そのためには、以下の項目を基本コンセプトにし、産地として品質を重視した本物志向の追及をどのように行っているかをPRすることが不可欠である。
(1) セーフティ(安全) 異物混入・残留農薬ゼロ
(2) フレッシュ(新鮮) 籾貯蔵、低温保管で鮮度保持
(3) ピュア(純粋) 種子更新率100%
(4) ナチュラル(自然) お米にやさしい乾燥
(5) ヘルシー(健康) クリーン農業(減農薬、減化学肥料)
(6) ティスト(味覚) 良食味品種、高整粒低蛋白米
 セールスポイントを多く持ったお米が消費者の心に入るもので、米市場で主役となれる。

表4 米穀広域産地の取組み例
地区 広域産地統一ブランド米 JA数
道南 函館育ち 4
胆振東 たんとうまい(胆東米) 2
石狩 グルメチックストリートいしかり 5
南空知南部 北のおいしい仲間たち 道恋しょ 4
空知中央部 大地のこだわり 情熱米 4
中空知 北海道の中心蔵 なかそらち米 3
北空知 北育ち元気村こだわり米 4
旭川市内 大雪山見て育ったの 4
上川南部 クリーン米ふらの 1
宗谷南部 天塩の大地 氷点の舞 4
宗谷北部 上川北部もち米 4

 各地区で高品質、安定供給を目指して表4のような広域ブランド米の取組みが進められている。また「北育ち元気村」では、先駆け的取組みとして、インターネット上にホームページを立ち上げ、販売促進につなげている。
 「売れる米づくり」を目指して、まずは北海道農協米対策本部の進める「北海道米の販売拡大取組み」に結集していただくとともに、全体品質の底上げを図りながら、実需者へのきめ細かい販売対応を展開していく必要がある。

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