2.補助金要件がより品質向上、担い手へ
今後の日本農政のあり方を検討する食料・農業・農村基本計画の見直しが17年春に策定されることになっています。その中で、施策を基本的に担い手に集中・重点化することと、品質向上を促すことにしています。本年度から措置された従来の生産調整補助金の3階建てに相当する重点作物特別対策では、小麦、大豆については品質要件と担い手要件を盛り込んでいます。
従来は技術要件に合わせ団地化もしくは土地利用集積を行えば、小麦、大豆を誰が作っても、品質がどうであっても補助金が交付されましたが、今回は団地化や作業集積要件の代わりに品質要件と担い手要件が定められています
(図1)。
このことによって、今まではほとんど交付された3階建て部分が、従来の品質で試算すると、予算の50%程度しか交付されません。
折角、農業予算が確保されたとしても、良いものを生産し担い手がいなければ、交付されないことになります。
3.水田経営の所得確保
米価低落もあって、14年産の米の所得は2万円台/10aとなっており、小麦所得にも及ばないほど収益性が落ちています (表2)。15年度は不作の影響によって収量が減少したものの価格が高騰したことから所得は47千円/10aと回復しましたが、今後このような米価上昇の見込みは少なく、米単体での所得確保は難しくなってきています。
一方、転作の主要作物である麦、大豆は生産性が低く、品質も劣っています。特に米主産地である空知、上川の小麦の単収は、十勝の単収の約半分程度と生産性が低くなっています (表3)。
したがって、水田農業の所得確保のためには米よりも収益性のある小麦などの転作部門で所得確保を目指すことが、水田地帯の差し迫った大きな課題です。そのために、単収向上と実需が求める品質の良い作物生産に取り組むことが必要です。
表3 水田地帯と畑作地帯の品質格差
小
麦
|
支庁名 |
収穫量 |
1等比率 |
石狩、空知 |
118,089 |
4.8 |
網走、十勝 |
118,089 |
81.9 |
全道計 |
600,074 |
61.1 |
|
大
豆
|
支庁名 |
収穫量 |
1等比率 |
石狩、上川 |
14,845 |
11,7 |
十勝 |
8,706 |
27,4 |
全道計 |
35,401 |
15,6 |
|
注)小麦:14年産、大豆:13年産
10年間(4〜13年)小麦単収
地区 |
平均 |
10中8* |
変動
系数
|
実数 |
比較 |
実数 |
比較 |
全道 |
352 |
100.0 |
356 |
100.0 |
17 |
石狩 |
276 |
78.5 |
280 |
78.6 |
26 |
空知 |
229 |
65.0 |
229 |
64.2 |
21 |
上川 |
245 |
69.7 |
244 |
68.4 |
23 |
十勝 |
425 |
120.8 |
431 |
120.9 |
19 |
網走 |
370 |
105.1 |
381 |
107.0 |
22 |
|
*最高、最低を除いた、8年間の平均値
|
表2 米、小麦、大豆生産費比較(統計事務所調べ) (単位:円、ha)
|
項 目 |
14年産米a |
14年産小麦b |
比較a/b % |
13年産大豆 |
10a |
60kg |
10a |
60kg |
10a |
60kg |
10kg |
60kg |
生
産
費
|
物財費 |
64,193 |
7,672 |
44,670 |
5,297 |
143.7 |
144.8 |
40,230 |
10,633 |
労働費 |
35,750 |
4,273 |
5,516 |
654 |
648.1 |
653.3 |
17,830 |
4,713 |
費用合計 |
99,943 |
11,945 |
50,186 |
5,951 |
199.1 |
200.7 |
58,060 |
15,346 |
生産費 |
95,520 |
11,417 |
47,721 |
5,659 |
200.2 |
201.7 |
57,967 |
15,322 |
収
益
等
|
収量 |
502 |
8.4 |
506 |
8.4 |
99.2 |
99.2 |
227 |
3.8 |
粗収益 |
94,922 |
11,345 |
76,538 |
9,076 |
124.0 |
143.7 |
46,472 |
12,283 |
所得 |
24,710 |
2,953 |
28,888 |
3,425 |
85.5 |
144.9 |
2,521 |
666 |
作付面積 |
5.83 |
6.15 |
94.8 |
2.15 |
|
*生産費:副産物差し引き
|