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![]() 麦作では、穂発芽を避けて適期に如何に速やかに刈り取るかは大変重要で、収穫体系に多くの改善を積み重ねてきました。そうした収穫体系を人工衛星情報、250mメッシュ気象情報などで小麦成熟期や低アミロ発生を予測して支援し、適期収穫する「先端技術を活用した小麦収穫システム」が平成17年度の指導奨励事項として普及に移されました。色々の新聞や雑誌もコンバインの効率的運行や乾燥経費低減の可能性を報じています。その概要を、試験推進・とりまとめを担当された十勝農試の中津栽培環境科長にご紹介いただきました。小規模な産地や個別農家の皆さんにも簡単に使えるパーツもあります。ぜひ参考にしてください。 |
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【道立十勝農業試験場 生産研究部 栽培環境科長 中津智史】 |
![]() そこで、大規模小麦栽培地帯において衛星リモートセンシングやメッシュ気象情報等の先端技術を用いて、小麦適期収穫を支援するシステムを開発するとともに、その効果を実証しました。
次に、成熟期前後の気象条件による低アミロ小麦の発生予測手法を開発しました。(主として十勝農試が担当)。最後に、これらの手法を組み合わせて小麦適期収穫支援システムを開発し、その効果を経済面からも検証しました(主としてJAめむろが担当)。
人工衛星により撮影された画像と小麦成熟期との相関を検討した結果、NDVI(正規化植生指数:近赤外と赤の反射率の比を表す)が成熟期と密接な関係を示しました。また、撮影時期については、早いほど成熟期との相関が低く、遅いほど相関が高まります(図2)。例えば、出穂直後の6月中旬の衛星画像では晩播や冬損による生育不良圃場は適用除外となり、推測精度もやや落ちます。 一方、収穫開始からおよそ1〜2週間前(7月中旬)の画像は、高精度に成熟期が推定可能となります(画像1および2)。画像1は芽室町内の一部地域を拡大したもので、圃場毎の成熟期の早晩や、一圃場内のバラツキも良く表現しています。画像2は芽室町全体を表示したもので、中央部の十勝川両岸地域で成熟期が早く、北部および南部の丘陵地帯で成熟期が遅いことが示されており、収穫順位決定に有効です。 このように、衛星を用いた予測は適期に画像が得られれば、予測精度は高くまた情報量が豊富で、GIS(地理情報システム)と組み合わせれば、デジタル圃場図として色々な応用が可能となります。ただし、衛星画像の取得・解析にはかなりのコスト(1シーンで40〜50万円、他に画像解析ソフトが80万円程度)がかかり、さらに画像の解析にはある程度の専門知識が必要となります。 2)土壌環境から見た成熟期予測 小麦の成熟期は標高および土壌環境の影響を受けることから、これらの情報を活用することにより、成熟期がおおよそ推測可能となります。具体的には、標高が高いほど気温が低くなるため、成熟期は遅くなります。低地および低台地で礫が出る圃場では、礫層が浅いほど水分供給が不足となるため、成熟期は早まります。中〜高台地では、気相率の小さい多湿黒ボク土(真っ黒な火山性土)で水分供給過剰のため成熟期は遅くなります。このような情報を既存の土壌分布図に組みこむことにより、土壌環境から見た成熟期予測マップが作成されました(画像3)。このマップを画像2と比較すると、中央部で生育が早く北と南に行くほど生育が遅くなるという、芽室町の地域的特徴をおおよそ反映しており、衛星画像が全く撮影できなかった場合には地帯別の刈り取り順を決める根拠となります。 ただし、あくまでも標高・土壌環境条件から見た成熟期予測ですから、個々の農家による営農管理(播種時期や施肥量、病害など)の情報は反映されません。逆にこの予測マップから大幅にずれた圃場については営農管理による影響が想定され、その要因を解析することにより栽培法の適正化に結びつけることも可能でしょう。さらに、土壌環境の不良部分が抽出されることにより、今後の土壌管理適正化の指針や土地改良対象地域選定の有力な情報となりえます。 3)リアルタイム250m気象メッシュ値を活用した 成熟期予測 芽室町全域をカバーする250mメッシュを設定し、町内の気象ロボット(8台)の観測データから、日別気象要素(気温、湿度、降水量、日射、日照時間)を推定する手法を開発しました。これは、従来の1kmメッシュよりも16倍細かいメッシュサイズで、推定精度も同等以上でした。 さらに、出穂期以降の気象条件(気温)から成熟期を推定するモデルを開発しました。このモデルは成熟期を誤差標準偏差2.5日で推測可能で、他地域(空知、上川、網走)へも適応可能でした。気象メッシュ情報と成熟期予測モデルから成熟期予測マップ(画像4)が作成可能となり、得られたマップは画像2、3と同様の傾向を示しており、成熟期の地域的特徴をよく反映していました。 |
この手法では予測に必要な情報は気温だけであることから、最も簡便・低コストな手法といえ、気象メッシュ情報が無くても、農家が自分で出穂期を観測するとともに気温を測定することにより、成熟期の予測が可能となります。
4)成熟期前後の気象条件による低アミロ小麦の発生予 測 低アミロ小麦の発生予測を検討するにあたって、低アミロ耐性を指標として気象条件との関係を検討しました。低アミロ耐性とは、アミロ値低下の原因である ![]() 図3では成熟期以降に人工的な降雨処理を行い、低アミロ耐性の変化を調査したものですが、成熟期直後の降雨ですと、 ![]() そこで、平成3年〜16年まで圃場調査結果について、成熟期前後の気象条件と低アミロ耐性との関係を解析した結果、低アミロ耐性は成熟期1週間前からの降雨および気温と負の相関が認められ、成熟期以降は成熟期後日数および降雨と負の相関が認められました。また、連続降雨があった場合、低アミロ耐性は1ずつ低下しますが、15〜25℃では低温ほど降雨の影響が大きくなります。 これらを組みこんで表計算ソフト(エクセル)上で稼動する予測式を開発しました。この予測式は気温、降水量、(日照時間、湿度もあった方が予測精度は高まる)を入力すると、成熟期以降の低アミロ耐性を日単位で計算するもので、農家がパソコンレベルで活用することも可能であり、専門知識も必要なく低コストかつ簡便と言えます。 予測式を実際に圃場から採取された試料に適応した結果、その適合度は95.3%(n=448、図4)と高いものでした。ただし、低アミロ耐性がマイナスになっても、 ![]() 以上のことから、低アミロ耐性による低アミロ小麦発生の危険性と収穫等の対応を設定しました(表1)。耐性が1以上では低アミロ小麦はほとんど発生しません。また、低アミロ耐性日数相当の降雨があっても低アミロ化しないと推測されることから、子実水分や天気予報などを勘案して収穫時期を決めることが可能です。例えば、耐性が4日の小麦圃場で、今後2日間の降雨が予想される場合、降雨後でも耐性は2日程度残るため、低アミロ小麦にはならないと予測されます。したがって、降雨前や降雨の合間に無理して収穫する必要はなく、降雨後の圃場乾燥を待って収穫することが可能です。 逆に、耐性が0〜1では低アミロ小麦が発生する危険性があるため、早期に収穫する必要があります。また、地域で ![]() ![]() このように、気象条件から低アミロ小麦発生の危険性を予測することにより、極端な早期収穫をする必要はなくなるため、収穫期間の延長や収穫時水分の低減も可能となります。 5)生育情報を利用した小麦適期収穫支援システム 以上の手法を統合して小麦適期収穫支援システムを構築しました(図4)。JAめむろではこのシステムを活用することにより、収穫順位を統一した尺度で判断できるため、収穫小麦の水分格差が小さくなり、コンバインの効率的運行が可能となりました。その結果、コンバインの1日当たり収穫量は向上しました。また、乾燥施設では平均水分23〜27%と、それ以前より低く均一な原料を受け入れることができ、効率的な操業により乾燥費(人件費+燃油費)を低く抑えることが可能となりました(表2)。
本試験で得られたこれらの知見を活用することにより適期収穫および低アミロ小麦の発生軽減が可能となり、高品質小麦の生産流通が期待されます。 (本研究は農林水産省の「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」「大規模収穫・調製に適した品質向上のための小麦適期収穫システム」で実施されたものです。) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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