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ホクレン

特別対談

ホクレンアンバサダー・森崎博之が聞く 北海道農業の「今」と「これから」。

ホクレンアンバサダー・森崎博之が聞く北海道農業の「今」と「これから」。

北海道農業の危機は、
日本の食料の危機を意味します(森崎)

日本の食を支える北海道農業を元気に!
今、私たちにできることを考えよう。

森崎:新型コロナウイルスの影響により、今、世界中が苦しい状況に置かれているのは、みなさんご存じの通りです。そんな中、北海道が誇る農業も、大変な苦境に立たされています。北海道は日本の食料生産基地。北海道農業の危機は、日本の食料の危機を意味します。そこで今回、消費者として私たちにできることを考えるために、道内の生産者さんに現状を伺います。
ゲストは、十勝の芽室町で肉用牛を育てる「株式会社大野ファーム」代表の大野泰裕(おおのやすひろ)さんと、旭川市で酒造好適米(酒米)を作る今野雅義(こんのまさよし)さんです。大野ファームでは、和牛、交雑牛、乳用種肥育牛を飼育、出荷されています。今野さんは稲作農家の3代目。日本酒の原料となる酒米「吟風」を生産されています。お二方とも今日はよろしくお願いします。
大野・今野:よろしくお願いします。
森崎:大野さんは、北海道肉用牛生産者協議会や北海道産牛肉消費拡大強化対策実行委員会の会長を、今野さんは上川地区酒米生産協議会の会長を務めていらっしゃいますので、今日はお二方に各業界を代表してお話しいただこうと思います。

「おいしい」という言葉に
やりがいをもらっています(大野)

杜氏さんの要望に沿う酒米を作ろうと
試行錯誤を重ねています(今野)

評価が高い北海道の牛肉と日本酒。
生産者のたゆまぬ努力が実を結ぶ。

森崎:北海道産の牛肉は、本当においしいですよね。
大野:「おいしい」という言葉に、やりがいをもらっています。同時に、責任を持って安全・安心な牛肉を生産しなければと改めて気持ちが引き締まりますね。
森崎:おいしさの秘訣は、北海道の環境の良さですか。
大野:エサの影響も大きいですね。肉牛農家は、牧草だけでなくとうもろこしや大豆かす、小麦をはじめとする穀物を取り入れるなど、エサの工夫にも努力を惜しみません。
森崎:おいしいといえば、北海道の地酒も負けていません。ここ数年でどんどんレベルが上がっていて、私は今、道外の人にも積極的にオススメしていますよ。
今野:北海道で酒米生産が始まったのは、20年ほど前です。それまで道内の酒蔵は道外産のお米を買っていました。私たち生産者は酒蔵の杜氏さんと意見交換を行い、要望に添える酒米を作るため試行錯誤してきました。最近は地産地消の気運も高まり、道内の酒蔵では道産酒米への切替が進んでいます。
森崎:吟風、彗星、きたしずく、これらは北海道の風土に合わせて生まれた、まさに道産子の酒米ですよね。その評判を聞きつけて道内どころか、今では道外でも道産酒米を使ってお酒を造る酒蔵が増えているそうですね。これはもう、日本酒界の革命といってもいいくらいです。

新型コロナウイルスの影響で落ち込む消費。
それでも生産者は今までと変わらず前を向く。

森崎:私は12年ほど、北海道の農業をPRする番組に出演していますが、全道各地の生産者さんを訪ねる中で、食べることは命をいただくことだと実感しました。しかし、世界情勢がどうなろうと、命を扱う生産者のみなさんは、その手を止めることができません。この新型コロナウイルスの影響により、北海道の農業に何が起こっているのでしょうか。
大野:生産現場は、何一つ変わっていません。ただ、飲食店の休業等で牛肉の消費が落ち込み、価格が下がっています。このまま供給過多が続けば、出荷を止めなくてはなりませんが、牛舎では毎日子牛が生まれています。子牛の行き場がなくなることだけは避けたいですね。
森崎:命の生産調整はできません。輸入の自由化で、ただでさえ逆風が吹いていた国産牛肉が、新型コロナウイルスの影響によりさらに追い打ちをかけられた形ですね。
大野:生産サイクルが一度止まってしまうと、それを元に戻すには数ヶ月から数年かかると言われています。今が正念場です。
今野:私たちが懸念していることも同じです。飲食店が休業し、観光客も来ない。日本酒の需要が減れば、酒米の需要も落ち込みます。今年の田植えは終わっていますが、このまま日本酒の消費が盛り返さなければ、来年以降の酒米生産に影響が出るのは必至です。
森崎:稲作は春前の苗作りから始まっています。今年の田植えをどんな思いでされたのか、考えただけで胸が締め付けられます。牛の世話もそうです。みなさんは不安を抱えながらも、必死に前を向いている。食べることは、ストーリーを知ること。どこでどうやって育った物なのか、消費者の私たちはそれを考えながら食べたいものですね。

作る人、食べる人、
それぞれが今、できることを。
そしてこの困難を一緒に乗り越えましょう!

森崎:最近、実感するのは、私たち消費者はおいしい食べ物からエールをもらっているんだということ。そのお礼といいますか、北海道の農業を守るために、私たち消費者にもできることがありますよね。
大野:やはり食べていただくことです。私は、すき焼きやしゃぶしゃぶなら和牛、焼肉は交雑牛、ステーキなら乳用種肥育牛と、料理に合わせて牛肉を選んでそれぞれの味わいを楽しんでいます。こんな風に、みなさんにもそれぞれの牛肉にあった自分好みの食べ方をみつけていただけたらうれしいですね。私たちは、これからもみなさんの期待に応えられる牛肉を作り続けたいと思っています。
森崎:私たち消費者は、北海道の農畜産物を守っていくサポーターだという意識を持たなくちゃいけませんね。日本酒についてはいかがですか?
今野:最近、日本酒には女性ファンが増えていて、飲むスタイルの変化を実感しています。もっと多くの人たちに北海道の日本酒を楽しんでもらうため、酒米1粒1粒を大切に育て、酒蔵への安定的な供給を続けていくことが使命だと思っています。
森崎:みなさんの頑張りを無にしてはいけないですね。
今、社会全体が苦しみの中にいます。だからこそ私たちは食べることで活力と勇気をもらっています。「おいしいもの」、これこそまさに、生産者の方々から私たち消費者へ送られるエールなんですよね。新型コロナウイルスの影響を受ける今こそ、食を見直すチャンス。大切なものを守るため、食べて応援するきっかけにしませんか。食べること、飲むことが、作る人たちへのエールになります。みんなで心を一つに、この苦境を乗り越えましょう。新型コロナウイルスに勝利した暁には、仲間たちと道産肉のステーキや北海道の地酒を思い切り楽しみたいですね。

※本対談は、緊急事態宣言解除後、ソーシャルディスタンスに配慮し実施いたしました。

■アンバサダー TEAM NACS
森崎博之(もりさき・ひろゆき)
1971年生まれ。東川町出身。
クリエイティブオフィスキュー所属。
1996年演劇ユニット「TEAM NACS」を旗揚げ、リーダーを務める。2016年4月より、北海道のこれからの農業について考え、次世代へも発信していく番組「あぐり王国北海道NEXT」(HBC)がスタート。「熱血あぐり魂」(第1回~72回)と、スペシャル対談企画などを収録した「生きることは食べること〜森崎博之の熱血あぐり魂」発売中。
https://www.cue-products.com/

■大野 泰裕(おおの・やすひろ)さん
『株式会社 大野ファーム』代表
帯広市に隣接する芽室(めむろ)町で、乳用種肥育牛、交雑牛、和牛の3品種を育てる。
北海道肉用牛生産者協議会会長、北海道産牛肉消費拡大強化対策実行委員会会長。

■今野 雅義(こんの・まさよし)さん
旭川で水稲、酒米のほか、黒豆の生産まで幅広く手がける米農家の3代目。酒米生産者のみならず、上川地区の4つの酒蔵の杜氏、酒販組合などが参加する上川地区酒米生産協議会の会長を務める。