農業×ワーケーション体験レポート

ワーケーションで仕事の効率アップ?!
ワーケーションで仕事の効率アップ?!

 

 
ここ数年、よく耳にするようになった言葉「ワーケーション」。仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を掛け合わせた言葉で、旅先など普段とは違う場所でいつもの仕事をする新しいスタイルの働き方です。リモートワークが当たり前になったいま、ワーケーションを実践する人が増えています。
そんな中、ワーケーションと農業の組み合わせに注目が集まっているのをご存じですか?
午前中は農家で農作業のお手伝い、午後からは宿泊施設やコワーキングスペースで普段の業務。体を使う農作業といつものデスクワークを組み合わせることで、気分転換にもなって仕事の効率アップにも期待が持てそうです。
ということで、今回、ホクレンGREEN WEBのライターが仁木町で農業×ワーケーションを体験してきました。その模様をご紹介します。
 

(左)チェリーハントインオオクボの大久保俊哉さん (右)筆者(GREENライター菅谷環)
 

午前中はミニトマトの収穫に集中

今回、農業現場での労働力不足への対応としてPerma Futureが展開するマッチングサービス「ののの」を利用し、JA新おたるに所属する大久保俊哉さんの農園「チェリーハントインオオクボ」にお邪魔しました。「ののの」は、「農村に滞在したいと考えているテレワーカーや旅行者」と「農作業の人手を求める農家」をマッチングするプラットフォームです。
 
大久保さんは、仁木町でさくらんぼやプルーン、ミニトマトなどを栽培しています。お邪魔した9月上旬は、プルーンとミニトマトの収穫が重なる時期で大忙し。大久保さんがプルーンを収穫する間、パートスタッフの皆さんと一緒にミニトマトの収穫をお手伝いします。
 
朝8時30分。畑に集合し、まずは大久保さんにミニトマトの収穫方法を教えていただき、さっそく作業に入ります。ミニトマトはヘタが取れると商品価値がぐんと下がってしまいます。ヘタを落とさぬよう注意しながら、食べ頃になったミニトマトだけを選んで1粒ずつ丁寧に収穫し、濡れ布巾で汚れを落としながらコンテナに入れていきます。収穫の目安は、真っ赤な色。「まだ早いかな?もういいかな?」と最初はかなり迷いますが、パートさんにアドバイスを仰ぎながら進めるうちに目が慣れてきて、どんどん作業が進みます。いつの間にか迷いなく集中。もしかすると、普段の仕事より集中力を発揮しているかも?と思いながら、無心で収穫します。

 

 
あっという間に10時の休憩時間。全員が手を止めて、大久保さんの奥様が用意してくれたお茶とお菓子をいただきます。「こうやって、みんなでおしゃべりするのも楽しみの一つです」と大久保さん。普段は奥様と二人だけで収穫しているので、ゆっくり休憩する時間もありませんが、パートさんやワーケーションの体験者がいる時は、こうして束の間の休息が取れるそうです。
 

 
30分間、コーヒーと甘いお菓子でしっかり休憩したら、再び収穫作業へ。前半でコツを掴んだせいか、はたまた摂取した糖分のせいか、休憩前よりもさらに集中し、出荷できるものとできないものを瞬時に見分け、作業もスピーディーに。気づけば10kgほど入るコンテナが一杯になっていました。
 

 
仁木町に正午を告げるサイレンが響いたところで、収穫作業は終了。あっという間の午前中でした。収穫したミニトマトは、午後から大久保さんがJA新おたる「ミニトマト集出荷貯蔵施設」に持って行くと聞いて、思わず「おいしく食べてもらうんだよ」とミニトマトたちに言葉をかけてしまいました。
 

 

気分も新たに午後はデスクワークや観光も

午前中の作業を終えて、大久保さんの農園から近い宿泊施設「カジュアルイン仁木」にチェックイン。シャワーを浴びてランチを取ったら、いつものデスクワークを始めます。パソコンに向かってもくもくと仕事をしますが、収穫作業で体を動かした後だからか肩こりを感じないのが不思議。
 

 
仕事に飽きたら、近所を散歩したり観光地を巡ったりして、さらにリフレッシュしてから部屋に戻ります。滞在する室内にはキッチンはもちろん、電子レンジや炊飯器を含む調理器具、洗濯機など生活に必要な物がすべて揃っているので、長期滞在も可能です。食事は地元の直売所やスーパーで購入した食材を使って、好きな物を。仁木町やお隣の余市町はワイン産地としても有名なのでワイナリーを巡り、夜は晩酌も楽しめます。
 

 
翌日はまた朝から農作業のお手伝い。時間の許す限り、滞在し農業×ワーケーションで新しい働き方を実践できます。
 

農家の人手不足にもひと役

農業×ワーケーションを体験後、大久保さんにお話を聞きました。大久保さんの農園では観光客の収穫体験も受け入れているため、収穫作業が重なると奥様と二人では手が回らなくなることも。近頃はパートさんの確保も難しくなってきているといいます。「ワーケーションの方を受け入れることで、人手不足の解消にもつながり助かっています。ただ、ここで農業を手伝ってもらうだけでなく、せっかく滞在していただくのですから、農業を通して仁木町や北海道をもっと好きになってもらえたらと思っています」と話す大久保さん。全国各地から農業×ワーケーションとして大久保さんの農園を手伝いに来るそうですが、休日を利用して大久保さん自ら近隣の観光地を案内したそうです。「楽しくなければ仕事じゃないですから。私たち生産者もホスピタリティに力を入れ、こうしたワーケーションを受け入れてこそ、地域の農作物のファンを増やし、農業を持続可能な産業にできるのではないでしょうか」。大久保さんは、生産者の仲間にもこうしたワーケーションの受け入れを広めていきたいと語ってくれました。
 
今回、レジャーではなくお仕事としての収穫を体験し、暑いハウスの中で何時間も汗を流しながらの作業がどれだけ大変なのか身に染みました。それと同時に、作物を消費者の皆さんに送り出す気持ちを初めて実感。おいしくきれいに育ってくれたことへの感謝や作物への愛おしさが芽生えたのは、新しい発見でした。
大久保さん、ありがとうございました!
 

 
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