合田 秀人さん
(JAめまんべつ)
農家の時計

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今回の農家さん

合田 秀人さん(JAめまんべつ)
大空町(旧女満別町)出身。大学を卒業後、農家の5代目として就農。じゃがいものほか、小麦、にんじん、豆類、てん菜を栽培。北見地区食用馬鈴しょ振興会役員。2022年よりJAめまんべつ食用馬鈴薯耕作組合の組合長を務める。

北見地区食用馬鈴しょ振興会が取り組む
新品種『ゆめいころ』とは?

北見地区食用馬鈴しょ振興会は、オホーツクエリアにあるJAきたみらい(北見市)、JAめまんべつ(大空町)、JAびほろ(美幌町)、JAつべつ(津別町)の生産者が参加する組織です。オホーツクエリアは十勝エリアに次ぐじゃがいもの一大産地。同振興会では、2024年から北海道立北見農業試験場で開発された新品種『ゆめいころ』の栽培に取り組んでいます。『ゆめいころ』は、『男爵』や『キタアカリ』と同じく早生品種で、病害虫に強く芽のくぼみが浅いのが特徴。果肉は白く、加熱するとホクホクとした口当たりと、しっとりとした食感を楽しめます。「いころ」はアイヌ語で「宝物」を意味する言葉。未来にわたって長く栽培される品種になることを願って名付けられました。今後、栽培面積の拡大が期待されています。
 

■合田さんの1日(9月上旬の一例です)

早朝5時半から収穫作業の準備。
夜は空手の指導者に

合田さんは58haもの畑で作物を栽培しています。じゃがいもの収穫が最盛期を迎える9月上旬は、収穫を控えた豆類の管理も重なる忙しい時期。朝5時半から準備を整え、7時には両親、奥様、農業実習生と一緒に収穫を始めます。合田さんがハーベスターを運転し、家族や実習生がハーベスター上の作業台で手早くじゃがいもを選別。「ゆめいころは形が良くて一つひとつが大きいから、選別しやすく助かっています」と合田さん。1.6haほどあるゆめいころの畑は、天気のいい日を見計らって3、4日で一気に収穫します。
 
仕事が終わると、夕食を済ませて空手教室へ。5段の腕を持ち、全国大会に何度も出場したことがある合田さんは、地域の子どもたちに空手を教えています。「忙しい時期でも、空手でリフレッシュできます」と笑顔を見せます。
 

大学卒業後、
Uターンして5代目に

合田さんが生まれ育った旧女満別(めまんべつ)町は、2006年に隣接する旧東藻琴(ひがしもこと)村と合併し、現在の大空町となりました。「名前の大空が表すように、いつも晴れていて気候のいい土地です」と誇らしく語る合田さん。この土地で、5代目として農家を継ぐことは自然な流れだったと話します。
 
子どもの頃から続けてきた空手を大学でも極めようと、北海道酪農学園大学に進学。農業経営を学んでUターンし、就農してから20数年が経ちました。同世代の生産者とも連携し、地域の農業を盛り上げようと積極的に活動しています。昨年、ゆめいころの栽培を始めてからは、栽培方法について仲間たちと情報交換をしたり、勉強会を開催したりと栽培の普及に尽力。消費者にそのおいしさを知ってもらおうと、PR活動にも情熱を注いでいます。
 

「人の口に入るものを作る」
という覚悟

新品種「ゆめいころ」の栽培を始めて2年。合田さんはすでに大きな手応えを感じています。「これまで心配だった病害虫に強いことが何より。安定した収量が見込めるのも農家にはありがたいですね」と合田さん。さらに「ゆめいころは、芽のくぼみが浅いので調理する際も皮むきが簡単で、ムダにする部分が少ないんです。そして、素晴らしくおいしい。仲間たちも、ゆめいころの味の良さにはみんな驚いていますよ」と胸を張ります。「作る人、食べる人、両方にとってメリットの多い品種です」とも。
 
作りやすい品種とはいえ、合田さんはより良いものを作ることに心を砕き続け、気持ちを引き締めています。「僕たちは人の口に入るものを作っているんだということを忘れてはいけない。畑を適切に管理する、機械を雑に扱わない、すべてが人の口に入るものにつながっています」
 
今年は平年よりも厳しい暑さと雨不足が懸念されましたが、1週間後に収穫を控えたゆめいころの畑を見て、「今年の出来も上々のようです」と期待を膨らませます。
 

ゆめいころが、
地域の宝になっていくように

新品種のゆめいころは、まだ栽培が始まったばかり。栽培面積は年々、増えていく予定です。「食用のじゃがいもは選別が大変で、どこも人手不足。北海道でも年々、農家戸数が減っています。そんな厳しい現状に、収量も多く大粒ぞろいで収穫作業もしやすいゆめいころは救世主のような存在になってくれるかもしれない」と合田さん。「ゆめいころを、北見を代表するじゃがいもにすることが僕の夢です」と、力強く語ってくれました。
 
ゆめいころのおいしい食べ方を合田さんに聞くと「柔らかいのに煮崩れしなくて、食べるとホクホク。カレーに最高なじゃがいもですよ」とニッコリ。
最後に合田さんは、「全国の皆さんにお届けするには、もう少し時間がかかるかもしれませんが、ゆめいころは胸を張っておすすめできるじゃがいもです。たくさんの人に食べていただきたいので、この先ぜひ注目してください!」と話してくれました。