北海道農協
青年部協議会
(JA道青協)
農家の時計

農家の時計 農家の時計

今回の農家さん

北海道農協青年部協議会(JA道青協)
北海道農協青年部協議会(以下、JA道青協)には、道内の12地区、99単組、約5,000人が在籍。2025年度は「今、思いを1つに」をテーマに、主に組織力強化、食と農の価値を高める活動を行ないながら、魅力ある農業経営に向かって邁進しています。

「北大マルシェアワード2025」の
コラボブースとは

2025年10月25日(土)、26日(日)、北海道大学農学部前と大講堂で開催された「北大マルシェアワード2025(以下、北大マルシェ)」。この取り組みは、物販のマルシェと、プレゼンテーション・表彰のアワードの二本柱で、マルシェではこれまでのアワードのファイナリストたちが物販ブースに立ち、自ら育てた農産物や商品を販売します。
ここに今年初めて、JA道青協が北大マルシェ実行委員会の大学院生とタッグを組み、コラボブースを出店しました。農畜産物の価格や農業の価値をみんなで考えられる場にしようと、ブースはオープン形式とし、約20名が着席できる教室スタイルに設営。大学院生を橋渡し役に、生産者、消費者が気軽に語り合える青空教室のように整えました。
 

■コラボブースのタイムスケジュール(10/25(土)の場合)

テーマは、「適正価格の向こう側~共に考える食と農」

ブースでは、各日3回、クイズイベントを実施しました。3問で、じっくり考えてもらいたいという意図から、あえて選びづらい4択に設定。答え合わせでは、どよめきが起きる場面もありました。クイズが終わるたびに、JA道青協のメンバーが生産現場の実情などを補足説明すると、来場者から関連質問が寄せられるなど、顔が見える場ならではのやりとりが続きました。
野外に展示した農業関連のクイズパネルに足を止める方も多く、JA道青協のメンバーはここでも積極的に解説役を担当。農業を取り巻く環境など、広く農業を考え、語り合う機会となりました。
 

コラボのきっかけは、
JA道青協の役員からのライン

北大マルシェは授業の一環として行われている取り組みで、北大の大学院共通授業科目「食の安全・安心基盤学」を履修する大学院生が企画・運営しています。今年、コラボブースが誕生することになったのは、この授業を受け持つ北大大学院農学研究院の小林国之准教授に、JA道青協の役員がラインを送ったのがきっかけでした。
「その方が北大の大学祭を見に行ったら、学生たちの熱量がものすごかったと。JA道青協と学生が組めば、化学反応を起こせるのではないか?JA道青協が行っている食農教育に風穴を開けられるのではないか?という内容でした」と、小林准教授。米の価格を皮切りに、消費者の間で農業への関心が高まっている中、JA道青協とのコラボは意義あるトライだと、小林准教授も感じたそうです。その後、JA道青協と大学院生によるミーティングを重ね、コラボブースを作ること、そのテーマは「適正価格」とすることが決定していきました。
 

適正価格を一緒に考え、
食の価値観を認識してほしい

JA道青協と大学院生との会議は、対面およびリモート会議で幾度も繰り返されました。JA道青協の髙見章太会長(写真右)は、「適正価格について、大学院生からは『いくらが正解という答えはないのでは』、『適正価格を考えるきっかけがないことが問題では』と率直な意見が出ました。そこで、コラボブースの役割は、ここで一緒に適正価格について考えることとし、クイズ形式を採用。設問は、子どもにもわかる言葉づかいにしようなど、みんなで練りました」と振り返ります。
「会議で大学院生から、『自分が食に対して、どのような価値観を持っているかを認識してもらう場にしたい』という意見が出たときに、それだと思いました」とは、JA道青協の遠藤洋志副会長(写真左)。「北大マルシェ期間中、来場者の方から、僕ら生産者を応援したくなった、道産は安心できるなどの声をいただけ、うれしかったですね」と、手応えも感じたようです。
 

コラボブースでの経験が、
価値観の芽生えになれば

北大マルシェ実行委員の大学院生は、消費者にどんな働きかけをするコラボブースを目指したのでしょう。名和桃子さん(写真左)は「クイズやJA道青協の皆さんのお話が、行動を見直すきっかけになったら」、小南明日香さん(写真中央)は「食べ物は人がつくっていることに改めて思いをはせ、消費者も当事者という意識をもってくれたら」と内面の変化を挙げました。
 
実行委員長の森本真依さん(写真右)は、「私も二人と同じ意見で、新たな価値観の芽生えがあるといいなと思っていました。コラボブースに集う来場者は消費者、JA道青協の皆さんは生産者、それぞれの立場と都合で適正価格を考えるでしょう。そんな両者が出会う場で、私たちは生産者さんをえこひいきしない、かといって消費者の立場にも立たない、どちらの側でもない橋渡し役に徹しようと決めました。そうした立場に立てるのは、私たちが学生だからできることだと思うんです」。

 

「数字で説明され、
生産者さんのお話を聞くと理解が違う」

では、ここで、クイズの正解の発表です。
【第1問】農業に欠かせない肥料と農薬。これらの値段は、5年前に比べて、どう変化した? →正解は④1.3倍
【第2問】今、お米は5kg4000円くらいです。では、その5㎏のお米を収穫するまでにかかる費用は? →正解は①1300円
【第3問】砂糖の原料はてん菜とサトウキビ。国産原料でつくられる砂糖は年間国内消費量の何%? →正解は②40%
 
このクイズに、お子さんと参加したお母さんは、「子どものために良いものを選びたいけれど、高くなる場合もあるので、いつもというわけにはいかず、自分なりに折り合いをつけています。こうして数字で説明され、生産者さんのお話を聞くと理解が違ってきますね」と納得した様子でした。
 
反響が大きかったのは、第2問です。JA道青協のメンバーは、「生産者が収穫・出荷した籾がお米として店頭に届くまでには、保管・調製、精米・包装、輸送などの工程があり、多くの人や企業が携わっているんです」と説明。参加者からは、「売り場に届くまでのいろんなコストが上がっているんでしょうね」や「いまの価格が妥当であることの裏付けがとれ、良かったです」との声も上がっていました。
 

生産者、消費者、
両者にとって、適正価格とは?

来場者アンケートでは、この画面にあるように「地産地消」、「食の安全性」、「国産」への関心が強いことがわかりました。実際のところ、コラボブースに関わった皆さんは適正価格をどうとらえているのでしょうか。小林准教授は「生産者がある程度努力した上で、次の世代に後継できることが農業の理想だとすれば、適正価格は理想をかなえる手段のひとつ。適正価格を支える仕組み、それに対する関心が必要だと思います」。JA道青協の遠藤副会長は、「儲けようという気持ちで設定する価格ではなく、農業者が安心して、将来にわたって農業を続けていくことが可能な価格だと、僕は考えています」。
実行委員の3人にも聞きました。名和さんは「生産者と消費者が互いの価値基準を持ち、互いに納得できる値段」、小南さんは「消費者としての自分は、迷いながら、葛藤しながら、適正価格を探っているところです」、森本さんは「適正価格は人それぞれ。高い、安いだけでなく、自分の価値基準で選ぶことがスタートだと思います」。皆さんは、どう思いますか?
 

次は畑で?来年以降も
続けていきたい

今回のコラボについて、実行委員長の森本さんに感想を聞きました。「クイズを通して何かを感じ取ってくれた来場者もいて、響く内容にできたかなとホッとしています。私たちの間では、次は畑でやってもいいかもという意見も出ています。農業と同じように、この取り組みを続けていくことが大事だと思います」。
JA道青協の髙見会長は「やって良かったです。我々のモチベーションアップになるだけでなく、北海道農業のファンの増加に繋がり、めぐりめぐって後継者不足に歯止めをかけることにもなるのではないかと。来年以降も、ぜひ続けていきたいです」と抱負を語りました。
 
知ることで気づくことができます。聞くことで気持ちが変わることがあります。理解することが行動の裏付けになることがあります。そんな変化を、参加者一人ひとりがそれぞれに感じ取ることができたイベントでした。