小麦やでん粉原料用馬鈴しょ、てん菜、豆類を中心に高品質な農作物の生産に取り組むJAこしみず。ここ数年は、加工品の開発にも力を入れています。「まちが誇る農産物を加工品として形にし、小清水(こしみず)町と農業を盛り上げたい」。そんな情熱を胸にPR活動を行うJAこしみずを訪ね、加工品開発への思いを聞きました。
“高品質”に胸を張るJAこしみず
JAこしみずがあるのは、北海道の東、知床半島の付け根にほど近い小清水町。オホーツク海に面した原生花園や、年間300種類以上の野鳥が羽を休める濤沸湖など、美しく豊かな自然に恵まれるエリアとしても知られます。小清水町は、畑作を中心とする農業が盛んなまちで、主要作物は小麦、でん粉原料用馬鈴しょ、てん菜、豆類。この4品目で町内の耕作面積の8割以上を占め、厳格な輪作体系を守りながら、高品質な農作物づくりに取り組んでいます。
生産者との信頼関係で小麦の品質を向上
「持続可能な農業には、土地を痩せさせない輪作体系の保持が大事です。農家さん1軒1軒と話し合いながら輪作を徹底し作付け割合も設定しています」と話すのは、同JA販売部農産課の𠮷野駿佑課長。小麦の収穫は、適期を逃さないよう同JA職員も総動員で行われます。また事前に少量を刈り取って生育具合や水分量を判断し、基準を満たした区画だけを収穫。徹底した品質管理は、生産者との信頼関係なしに実現できません。こうして生産される小麦は収量・品質ともに道内トップクラスです。
「小清水の誇りを形にしたい」
「高品質な作物を商品という形にして消費者だけなく、農家さんにもおいしさを実感してもらいたくて」とは、同JA管理部広報室の山下敬太係長。同JAでは、2024年春に有志の職員34名によるPRチームを結成し、小清水ブランドの加工品開発を本格化させました。その年の8月、第一弾として発売されたのが、小清水産小麦を使った「こしみずうどん」と「こしみずそうめん」です。「原料の品質がいいから、加工品も間違いなくおいしい。農家さんに感謝です」。山下係長の言葉には揺るぎない自信が満ちています。
中学生と作った「こしみずラーメン」
同JAでは小清水中学校の1年生を対象とした食育授業を行っており、2024年度は加工品の企画に取り組みました。多彩なアイデアの中から採用されたのは、町内産小麦「春よ恋」を使った「こしみずラーメン」。商品設計はPRチームが担当し、パッケージは中学生の案に沿ってデザインしました。「どの案が採用されたかは、完成まで子どもたちに内緒でした。発表当日、大騒ぎになるかと思いきや、感慨深げに手の中の商品をじっと眺めている姿が印象的でした」と、同JA管理部広報室の東沙也花さんは振り返ります。
青年部はクラフトビールを開発
加工品開発は、同JA青年部でも数年前から取り組んでいます。2021年にコロナ禍の子どもたちのためにポテトクリームパイを作った経験から、「加工品で地域の人たちを喜ばせたい」とクラフトビールの開発に着手。翌年、近郊のビール醸造所に依頼し、町内産小麦「きたほなみ」と、姉妹提携を結ぶ愛媛県JAにしうわの柑橘ピールを使用した「cosimizBEER(こしみずビール)」が誕生しました。小麦のやさしい甘さと、柑橘の爽やかな香りが魅力的なこのビールをフックに、青年部の活動の幅も広がっています。
JA帯広大正とのコラボ焼きそばを発売
2026年には、JA帯広大正とのコラボ商品「小清水・大正やきそば」の発売を予定しています。町内産小麦「春よ恋」と大正メークインパウダーで作る角太麺が特徴で、小麦とメークインの香りをしっかり感じられる焼きそばです。「物販イベントで交流するうちに、対面販売ができる飲食メニューを共同開発しようという話になりました」と山下係長。すでにお祭りなどで提供され、数時間で完売するほどの人気ぶりです。「今後もいろいろな地区とのコラボが広がれば、もっと盛り上がるのでは」と山下係長は意欲を見せます。
商品力で育てる小清水ブランド
同JAの加工品開発は、さらに広がりを見せています。近年、町内で作付面積が増えている大豆「とよまどか」を使った納豆もその一つ。全国の大豆製品を取り扱っているメーカー約40社に商品化を掛け合ったところ、東京の国産大豆にこだわるメーカーが「納豆の製造なら可能」と応じてくれました。「原料を送ると、大豆の品質の高さに驚かれました」と東さん。数種類の試作品から選んだのは、昔ながらの経木納豆。24年9月に発売しました。「とよまどかの持ち味を生かした食べやすい大粒の納豆です」と東さんは太鼓判を押します。
「加工品をきっかけに小清水町へ」
良質な農産物、アイデアと行動力を武器に、挑戦はまだまだ続きます。「この活動の意義は、加工品を通してJAこしみずを知ってもらい、人を呼び、住む人を増やすこと。加工品をきっかけに小清水町に来てください」と山下係長は言葉に熱を込めます。東さんも「農畜産物の魅力を発信し、農家さんに還元することが私たちの使命です」と力強く語ってくれました。JAこしみずの加工品は、町内のエーコープ、道の駅などで販売するほか、一部はくるるの杜やオンラインショップHOKUREN GREEN +PLUSでも取り扱っています。
今回、JAこしみずを訪問し、皆さんに共通する「小清水のまちと農業を盛り上げよう」という高い志に胸が熱くなりました。実直に農業と向き合う生産者の皆さん、それを全力でサポートし時には引っ張るJA職員の皆さん、両者をつなぐ確かな信頼は、なによりも尊い小清水町の宝だと感じました。


