上富良野町、中富良野町、富良野市、南富良野町、占冠村の生産者で組織されるJAふらの。グリーンアスパラガスのハウス栽培が盛んで、その作付面積は道内でもトップクラスの規模を誇ります。134戸のアスパラガス生産者が所属する「ふらのグリーンアスパラ部会」では、重量別に3Lから2Sの規格を設定。主流は2Lで、太くても根元までやわらかく甘みがあり、贈答品としても人気を集めています。ハウス栽培は例年3月中旬から5月中旬にかけて、露路栽培は5月中旬から6月上旬にかけて、主に札幌や旭川の市場に出荷されています。

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田井 雄介さん(JAふらの)
- 中富良野町出身。農業系の会社勤務を経て2002年に農家の4代目として就農。グリーンアスパラガスのほかに米、スイートコーンを栽培。2022年に「ふらのグリーンアスパラ部会」の部会長に就任。

JAふらのの特産物
『グリーンアスパラガス』とは?
■田井さんの1日(4月下旬の一例です)


収穫は手作業で、
日の出前と夕方の1日2回
11棟でアスパラガスを栽培している田井さんのハウスでは、4月上旬に収穫が始まり、4月下旬から5月上旬にかけてピークを迎えます。「冗談でよく言うのですが、一通り収穫して後ろを振り返るともう伸びている!というぐらい成長が早いです」と田井さん。そのため収穫作業は、朝と夕の1日2回行っています。
朝の収穫は日の出直前の4時半から。早朝に収穫する理由について田井さんは、「気温が低い時間帯に収穫したほうが、甘さがのっていることが一つ。それから1本1本鎌を使って手作業で刈り取るので、涼しいうちに作業したいという思いも強いです」と説明します。AI技術の進化により、自動収穫ロボットの開発が進む一方で、「手収穫と比べると、ロボットの収穫スピードはまだまだ遅いというのが現実です」と田井さんは話します。

一日一日の記録が、
一歩一歩目標に近づく
小さい頃はトラクターが揺りかご代わりだったという田井さん。農業が身近にありましたが、親からは継いでほしいと言われことがなかったそうです。「それならと農業高校には進学せず、一度は公務員を目指しました。けれども手が届かなかったので、地元の農業系の会社で働くことにしたんです」。仕事を通してさまざまな生産者と触れ合ううちに農業に魅力を感じ、農業高校の専攻科に進学。2年間で技術を学び、満を持して就農しました。
経験を積むにつれて田井さんは、「同じ作物を作り続ける中で、作業効率や品質向上のために何ができるだろう」という思いを抱くようになりました。「そこで始めたのが日報です。毎日の天候や生育などの栽培記録のほか反省点や課題なども書き込んでいます」。一日一日、できたことできなかったことなどを書き記すことで、自分の目標に近づくだけでなく、次の年を見据えながら先手先手で作業ができるようになった、と田井さんは感じています。

アスパラガスは、
手がかる“箱入り息子”
アスパラガスは宿根性(一度植えたら毎年芽が出て、多年にわたって生育を繰り返す性質)の植物で、うまく育てると10年以上収穫できる作物でもあります。田井さんによると、品質の良いものを育てるには収穫後の栽培管理が最も重要だと話します。
「収穫後は葉を茂らせ、光合成で作られた養分を根株にしっかりと蓄えられるかどうかで、翌年の品質と収量の良し悪しが決まります。アスパラは、肥料も水もたっぷり与えてあげないとすぐにいじけて若茎が出なくなるんですよ。僕にとってアスパラは、とにかく手がかる“箱入り息子”のような存在です」
田井さんは、安全でおいしいアスパラガスの栽培にこだわり、有機肥料を使用しています。「子どもが手を伸ばしたくなるものを作りたいと考えた時に、自然に近いものに行きつきました。有機肥料に切り替えてから、“おいしい!”という声が増えたと感じています」

アスパラガスのイメージが
一気に変わるおいしさ
「富良野」といえば、国内外で広く知られる知名度の高さが強みの一つ。田井さんは、「富良野はアスパラ作りに適した冷涼な気候風土で、恵まれた土地」と前置きした上で、「向上心のある若い生産者が多いことも強みに感じています。富良野ブランドへの信頼に応えるためにも、次の世代にアスパラ作りの楽しさを伝えていくことが大切。僕はたくさん失敗してきたから、自信を持って教えられることも多いです」と力を込めます。
ちなみに田井さんの好きな食べ方は、天ぷらとのこと。「アスパラ本来の味が楽しめる素焼きもおすすめです。太いほうはみずみずしく、細いものは味が濃いです。料理によって使い分けていただきたいですね」。
最後に消費者の皆さんに向けて、田井さんは「北海道の限られた時期でしか食べられないアスパラは、太さ、やわらかさ、みずみずしさ、甘さがあり、これまでのアスパラのイメージが一気に変わってしまうぐらいおいしいです。購入の際は、頭が開いておらず、袴の形がきれいなものを選び、できるだけ早く食べ切ってください」と話しました。