落花生/拓殖大学北海道短期大学
「北海道に適した、
おいしい品種を
作る夢があります」
落花生の生産を研究しているゼミが、道内の大学にあります。
野菜の栽培が専門で新規作物にも取り組む上西孝明助教は、
栽培技術の確立と、新品種育種の夢を描いています。


拓殖大学北海道短期大学 農学ビジネス学科 上西ゼミ
写真左より、亀田 南音さん、上西 孝明助教、吉田 央祐さん
生産者と連携し全国一の産地へ
柿ピーやバターピーナッツなど、おやつに欠かせない落花生。現在国内の流通量の約9割が外国産です。国産の約85%を千葉県が担っていますが、国産落花生の生産は減少傾向にあります(※)。
「そうした背景もあり、17年ほど前に前任の大道雅之教授が落花生の産地化を目指し、栽培の研究を始められたと聞いています」
このように説明するのは、上西助教。3年前に大道教授からバトンを受け継ぎ、北海道の気候に適した栽培方法や収穫した落花生の乾燥技術の省力化など、学生たちとさまざまな研究課題に取り組んでいます。
「私が初めて落花生の栽培試験を行ったのは、20数年前。当時はほとんど実がつかず、中断せざるをえませんでした。ところが近年では、北海道が後押しするほど栽培面積が拡大しており、20年間の環境の変化と技術の進化を感じます」
上西助教によると、道内では15年ほど前から落花生の栽培が始まり、現在は道内各地に広がっているそうです。しかしながら、落花生は乾燥に強く暖かい気候を好むため、寒冷地の北海道で栽培するにはあらゆる工夫が必要だといいます。
※農林水産省「令和5年特定作物統計調査」より
ゼミ生の吉田さんは「想像以上に手作業が多く、現状の栽培方法では大規模化のハードルが高いと感じています」と実感を込めて話します。亀田さんは「たとえば、北海道では地温の低さを補うために畑にマルチを張ったり、被覆材を使って育てる必要があります。けれども、そのままでは土中に実がつかないので、途中でマルチのみを撤去するなど、手間がかかる作業もあります」と付け加えます。
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落花生は開花後、花の基部から子房柄(しぼうへい)が伸びて土中に潜り、土の中で実(豆)をつけます
一般的に、収穫した落花生は洗浄や乾燥、焙煎を経て市場に出荷されます。しかしその技術も十分に確立されておらず、生産者それぞれが試行錯誤を重ねています。そこで同大学では、生産者やJA、メーカーなどの連携と情報交換などを目的に「北海道ラッカセイサミット」を主催。2016年からスタートし、年2回の開催を通して栽培技術の向上を目指しています。
「大学の研究は、学内の小さな畑で良くできても、実際に大面積になったときにどの程度有効なのか検証できません。国産落花生を守る産地として、北海道が注目を集めつつありますが、学内の研究と生産者がつながらないと産地化はできないと考えています。さらに“北海道産”というブランドを背負う以上、おいしさは必須です。サミットを通して、技術が磨かれるスピードを少しでも早めたいという思いがあります」と上西助教は話します。
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学内の畑では約10品種を栽培しています
同ゼミでは、これまでに多収性や大粒など、さまざまな品種特性を持つ落花生を栽培し、サミットで発表してきました。しかし、どの品種も本州での栽培を前提として育成されているため、上西助教は北海道の生育環境に適した品種の誕生を目指したいと考えています。
「将来的に、おいしい品種を学内で作れるといいなぁという夢はあります」と上西助教。全国一の産地に向けて、さまざまな挑戦を続けています。
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収穫したばかりの落花生の様子。この後、傷がつかないように手で茎から莢(さや)を外し、洗浄機で泥を落とします