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2021.07.01
暮らしのすみずみにある、北海道の乳。

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暮らしのすみずみにある、北海道の乳。

「ロボット化は酪農と地域の未来の形です」

わずか5人で約860頭を管理

2018年に、根室市に6台の搾乳ロボットを備えたメガファーム(大規模農場)が誕生しました。オーナーは田中牧場の代表取締役、田中照義さん。全長180メートルもある広々とした牛舎では、牛たちが寝そべったり餌を食べたりして、自由に歩き回っています。乳房が張った牛は24時間いつでも、搾乳ロボットのところまでやって来ます。餌を目当てに自ら入るため、人が一頭一頭誘導する必要はありません。
田中さんは「一番労力がかかる搾乳作業をロボット化したおかげで、約860頭の牛を5人で管理できるようになりました。しかも乳量は、導入前に比べて一頭あたり年間4,000キロもアップしたんです」と説明します。「ロボットの利点は、たくさんあります。まず遅刻や欠勤をしないところ(笑)。365日休むことなく、牛のペースに合わせて搾乳ができます。もし搾乳に失敗しても諦めず、冷静に対処してくれます」
ロボット牛舎では、牛の首に付けたタグで個体ごとにデータを管理しています。搾乳や給餌のタイミングで得られた搾乳量や生乳の成分、食べた餌の量などはすべてパソコンに蓄積されます。牛の健康状態が分かるこれらのデータは日々更新され、毎日の飼育に役立てられています。
「データを活用した酪農は、現代の若者に合う仕事だと感じています。ロボット型の経営に特化していけば、これまで酪農に縁のなかった若者にとっても、自分の能力が発揮できてやりがいのある仕事になる可能性もあります」
田中牧場では、地方出身者や未経験者も積極的に受け入れており、ロボット牛舎を体験できる場も提供しています。
「酪農の今を理解して、興味を持ってもらうことが後継者を育てるための出発点になります。その上でなるべく自らで考え、問題を解決させることが若手の成長につながると考えています」

  • 牛が餌を食べている間に、ロボットが乳頭の位置をセンサーで確認。給餌の量は、乳量に応じて調整されるため、「自分たちが給餌していた時よりも、きめ細かく対応できるようになりました」と田中さん

生乳の安定供給は酪農家の使命

二代目として就農した当時は、100頭ほどの規模だったという田中さん。この40年で、過疎化による労働力の減少が進み、それも大規模化にかじを切った理由の一つだと話します。
「将来的に農家の数が減っていくとしても、生乳を量、質ともに安定的に供給していくことが、酪農家の使命だと思っています。ロボット化は、そのための一つの手段。経営規模や搾乳方法が変わっても、消費者の皆さんに喜ばれる生産を、変わらずに続けていく努力が必要です」
ロボット化だけでなく、田中牧場ではTMRセンター(混合飼料の生産から配送までを行う施設)を近隣農家と共同で運営。「地域が一体になることでコストも抑えられ、持続可能な経営が実現できます」と説明します。
効率化が格段に進む中、田中さんの働き方はどこまで変化したのでしょうか─。始業はこれまでと変わらず朝3時から。牛舎の見回りに始まり、牛舎の見回りで一日が終わります。「ロボット化しても、生き物を扱うからには手は抜けません」と田中さん。ロボット牛舎の管理は2人の息子に任せ、田中さんは奥さんと古い牛舎で、治療中や出産前の牛など、手がかかる牛たちを世話しています。
「いい乳を搾るためには、牛が健康であることが第一です。そのために朝晩の見回りは欠かせません。全体を見渡すと、牛の異変に気づきます。自分の目で牛を見て、体で感じることが大切で、そこを省いて機械に頼るのは危険。機械化されても基本は変わらないと実感しています」

  • 一頭一頭の情報は、パソコンに一元化されています。健康の異常も一目で分かるため、データの確認作業は毎日の日課に

生産者 田中 照義さん[ 根室市・JA道東あさひ ]

1982年、酪農家の二代目として就農。
妻と息子2人、従業員の5人で、道内有数のメガファームを運営。

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