北海道に生まれ、ここにしかない商品や他にはないサービスなどを提供し続けるセイコーマート。メディアでもたびたび取り上げられるプライベートブランド商品は種類・数ともに多く、なかでも北海道の恵みを使った食品の豊富さは群を抜いています。今回は、「自分たちで作る(原料生産・仕入れ、製造)・運ぶ(物流)・手渡す(セイコーマートでの販売)」という一連の流れを指揮する(株)セコマを訪ね、全国に幅広いファンを持つ「Secoma北海道メロンソフト」を例に、北海道の生産者の思いをのせた商品づくりの本質を聞きました。
ここにあるおいしさを、お手ごろに
セイコーマート1号店が札幌市内にオープンしたのは1971年。現在は、北海道と関東地方に約1,200店舗を展開しています。(株)セコマは、店舗を増やすと同時に物流ネットワークの整備を進め、一方では農業生産法人を設立するなど、約半世紀をかけて「作る・運ぶ・手渡す」をつなぐサプライチェーンを強固にしてきました。同社のタグラインは「ここにあるおいしさを、お手ごろに」。生活者に、北海道の素材との出会いから生まれる商品、グローバルな調達網を活かした選りすぐりの商品を買い求めやすい価格で提供すると約束できるのは、同社が独自に築いてきた仕組みがあるからなのです。
生産者や地域と共存、共創する
同社でよく使われる言葉に、「北海道を全国へ」があります。その意図を渉外部の佐々木威知部長(写真右)はこう説明します。「道産の原料を活用して、道内で製造したものを道外で販売する。それがめぐりめぐって、道内の地域の方たちの公共に使われる。そうした循環を生み出す共存、共創の形を作っていきたいと、当社は考えています。北海道に対する愛情はどの企業にも負けない、その自信はあります」。商品企画部の葉佐恭行部長(写真左)は、おいしさづくりの現場を指揮する視点から、「生産者のみなさんが納得、満足できる、みなさんの思いがのった商品を作ることが私たちの出発点です。そこを見誤ることはありません」と言葉を添えました。
生産者、道産農産物に深い思い
昨年、同社は道内の地域名を冠した約280品を販売。この5月、新商品として池田町産絹手亡豆(インゲン豆の一種)を使った白あんを包んだどら焼きを発売したところ、上品な甘さが好評で早くに完売したそうです。「提供元のJA十勝池田町さんがとても喜んでくださった」と、葉佐部長は笑顔を見せます。素材の吟味も入念で、今年30周年を迎える店内キッチン「ホットシェフ」の「HOT CHEF 道産ポテトのフライ」には道産の3、4品種のじゃがいも、日本の食文化を伝える冬至かぼちゃには「りょうおもい」を使用。製造だけでなく、ホクレンとタッグを組んで、大福の販売の後押しも行っています。「この協働は、消費を下支えしてもち米生産者さんを応援しようと始まったものです」と佐々木部長。生産者、道産農産物に寄せる、同社の深い思いが伝わってきます。
メロン産地からの相談がきっかけ
こうしたものづくりの源流にある商品が、2006年に発売を開始した「Secoma北海道メロンソフト」です。きっかけは、「規格外のメロンを活用できないか」という産地からの相談でした。全国有数のメロン産地・北海道の中でも、この産地の赤肉メロンは関西を中心に高級ブランドメロンとして出回っていました。同社ではさっそく、「まるでメロンを食べているよう」をコンセプトに、メロンを果汁にして、グループ会社(株)豊富牛乳公社の新鮮で良質な牛乳とつくるアイスクリームの開発に着手。「メロンの香りと風味を生かしつつ、食べ終えたときに満足感を得られるおいしさをみつけだすために、果汁の量の配合などを数十パターン試作したと聞いています」と葉佐部長。ようやくたどりついた理想の味は、その後も細かな改善を加え、いまもなお磨きをかけているそうです。
「Secoma北海道メロンソフト」の広がり
「Secoma北海道メロンソフト」は、果汁6%入り、メロンとバニラのミックスでデビュー。約20年を経た現在は果汁8%入り、メロン1色となり、北海道メロン果汁を使った「Secoma北海道メロンモナカ」、カップの「Secoma北海道メロンアイスクリーム」も加わりました。3つの商品の基本レシピは共通ですが、モナカは皮とのバランスを考えて調整し、カップはややリッチに仕上げるなど、微妙に手を加えています。
※アイスクリーム等の一部は、「Seicomart Online」で購入可能。
北海道産農産物を使ったアイスが次々
「Secoma北海道メロンソフト」をトップバッターに、道産農産物を使った“セコマのアイス”が次々と誕生しました。生産者も太鼓判を押す「Secoma 北海道当麻町産でんすけすいかバー」は、初競りがニュースになるブランドすいかの果汁が18%も含まれています。「Secomaチョコミントアイスバー」は、国産の約95%を生産し、生産者が栽培から精油までを手掛ける滝上町産の和ハッカを使用。「この和ハッカは、いつか使いたいと私たちが切望していたものです。産地の近隣地域への出店をご縁に、分けていただくことができました」と佐々木部長。この他、とうもろこし(北海道弁ではとうきび)、バター、ハスカップ、りんご、いちご、洋なしなど、同社では北海道のおいしさを笑顔が広がるおいしさに変えて道外へも届けています。
生産者のために何ができるか
「北海道でいちごが作られていることは、全国の消費者の皆さまにあまり知られていないかもしれません。いちごを使った当社の商品を手にとることをきっかけに、道産農産物に一層の関心を持ってもらえることを願っています」と葉佐部長。佐々木部長は、「北海道の生産者なくして、日本が将来にわたって食料を安定的に確保していくことはできないでしょう」と前置きして、次のように締めくくりました。「生産者さんは、我々の口に入るものを作るという、とても重要な仕事をされています。生産者さんに農業を続けていただくために、私を含む都会に暮らす人たちは自分たちに何ができるかを考えて行動していかないといけないと思います」。食べることの前に作ることがあり、作ることは作る人とともにある。そうした発想をものづくりの柱に据えている同社の商品だからこそ、新たなおいしさにも安心感と信頼感を覚えるのでしょう。
(株)セコマは道内179市町村中、175市町村にグループ店舗を持ち、人口カバー率は99.8%。道産子は、山道を運転していても、「この先を行けばセイコーマートがある」と信じ、オレンジの看板を見て胸をなでおろします。ここにいる私たちのそばでいつまでも、「ここにあるおいしさを、お手ごろに」届けてほしいと改めて感じた取材でした。
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