北海道における
「みどり法」
グループ認定
第1号

はるばる来たぜ、食卓へはるばる来たぜ、食卓へ

北海道における「みどり法」グループ認定第1号

2024年1月10日、JA新すながわの特別栽培米生産組合が、「みどり法」の認定(※)を受け、北海道における農業者グループ認定の第1号となりました。これまで同組合では、「北海道から日本一おいしい米を届けたい」と、さまざまな挑戦を続けてきました。その取り組みが、未来の環境にも実りをもたらすと評価されたのです。今回は、長い歴史を持つ米の産地にあるJA新すながわを訪ね、誇り高い生産者たちが自ら作った米の価値をどのように高めてきたかもまじえて聞きました。
 
※「みどり法」とは、「みどりの食料システム法」のこと。食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を目指す「みどりの食料システム戦略」の実現に向けて、2022年に制定・施行。農林漁業者は、環境負荷の低減に取り組む5年間の事業計画を作成し、都道府県知事の認定を受けることができる。

「ゆめぴりかの里 JA新すながわ」

JA新すながわは、1998年、札幌市と旭川市のほぼ中央に位置する砂川市と奈井江町の農業協同組合が合併し、誕生しました。この地域は古くから質の高い米の産地として知られ、多くの生産者がその自負を持って生産しているのが、北海道米の最高峰ゆめぴりかです。同JAではその思いを「ゆめぴりかの里 JA新すながわ」というキャッチフレーズに託し、全国に発信しています。稲作とハウスなどの複合農家が多いこともあり、玉ねぎやトマト、ミニトマト、きゅうり、ブロッコリー、メロン、ひまわりなど、特産品も多彩です。

減農薬栽培米研究会がルーツ

「生産者の米づくりにかける思いは、どこよりも強いと思います」。販売部の室井文博部長(写真右上)はそう言い切ると、吉田英輔調査役(写真右下)とともに、「みどり法」認定第1号となった特別栽培米生産組合のあゆみをこう説明してくれました。「ルーツは、2001年に一部の生産者がこだわりを持って米を作りたいと設立した減農薬栽培米研究会にあります。この会のメンバーが全国の米店を訪ね歩く中で、特別栽培米に対する理解と期待が高いことを知り、特別栽培米の研究を本格化。2013年に特別栽培米生産組合が誕生しました」。

特別栽培米生産組合は、ゆめぴりか

特別栽培米生産組合は、消費者に選ばれる米づくりを基本とし、化学合成農薬や化学肥料を低減していくことで、自然環境を保全し、将来の子ども達へ良い環境を残すことを目指し、生産者33戸からスタート。組合が設立される2年前の2011年、ゆめぴりかが北海道米として初めて「特A」(※)を獲得したことから、ゆめぴりかに軸足を置こうという機運が高まる中での船出でした。現在、同組合は68戸で、ほぼ全戸がゆめぴりかを生産しています。
 
※お米の食味ランキングの最高位が「特A」。ゆめぴりかは14年連続受賞。一般財団法人日本穀物検定協会調べ(令和5年産米)

おいしさと安全性で差別化を図る

特別栽培は、除草剤の使用に制限があることなどから手間がかかります。「おいしさと安全性をとにかく重視し、その点で差別化を図ろうと、特別栽培に特化することを選びました。以降、普及センターの協力をもらいながら、生産者とともに研究を重ねてきました」と室井部長。組合員全体のモチベーションや作業精度の足並みを揃えるために、田植え終了後すぐに「特別栽培米」、「ゆめぴりか」の旗を揚げることを定め、毎月行うべき作業の詳細を記した栽培暦を配布するなど、ゆめぴりかを磨き上げる努力を続けています。

JA新すながわ「ゆめぴりか憲章」

ゆめぴりかは、北海道米の新たなブランド形成協議会が設けた基準を満たしたものだけに認定マークが付与されます。同JAでは、協議会の基準に独自の基準も上積みしようと、2018年、JA新すながわ「ゆめぴりか憲章」を策定。「みどり法」の認定の申請にあたっては、この憲章に記された栽培基準項目などを土台に計画を立案。2009年から同JAライスターミナルの敷地内で稼働する、雪エネルギーを利用した奈井江町営の低温倉庫「雪米の蔵~ゆめのくら~」の存在も後押しになりました。
 
※写真は、「雪米の蔵」で保管されている特別栽培米ゆめぴりかの玄米です。

「おいしい米のため」が、
「環境のため」にも

特別栽培米生産組合は、化学肥料・化学農薬の5割低減及び秋耕(稲を刈った後の茎などを田んぼに混ぜ、地力増強を図ること)での温室効果ガス削減に取り組む面積の拡大を掲げ、「みどり法」の認定を取得しました。「5割低減、秋耕は、そもそもはおいしい米を作るための作業として憲章に盛り込まれたものです。これらの作業には環境にやさしいという利点もあることから、そこに焦点を当てて計画を立てました」と室井部長。憲章にはこの他、肥料の吸収を良くすると同時に、メタンガスの発生抑制にも貢献する中干し(夏に田んぼの水を抜き、ひびが入るまで乾かす作業)の励行などが記されています。

新規就農希望者からの
評価にもつながれば

「みどり法」のグループ認定は、地域全体で特定の計画にしっかり取り組んでいないと、取得が難しいといわれています。室井部長は、「冒頭でお話したように、生産者が自ら全国の米店を訪ね歩き、聞いてきた要望や声などを地元の仲間と共有し、目に見える形にしてきました。その積み重ねが、今回の評価につながったのだと思います」と語ります。吉田調査役は、「今回の認定が地域の付加価値となり、消費者はもちろん、新規就農を考えている方や環境に対する関心が高い若い方からも“選ばれる産地”になることを願っています」と頬をゆるませました。

生産者と一緒に、
いい米をつくり続けたい

同JAでは、集荷したお米をしっかり検査し、一等米だけを出荷しています。「生産者も我々も、ゆめぴりかならどこにも負けない気持ちで、さらに上、さらに上の米を作ってきましたし、その気持ちは揺るぎません」と室井部長。同JAでは、こだわった米が必要だとの信念を共にする生産者とともに、昨年から無農薬・無化学肥料米づくりにもチャレンジしているそうです。この記事が公開される頃は、田植えの季節。田んぼのあちこちに立てられた旗が、大空の下で気持ちよさそうになびいていることでしょう。

ここ数年は北海道の夏も暑く、従来の米づくりが通用しないことも多々あるそうです。生産者の皆さんが「毎年1年生」と心を新たに多くの手間をかけ、同JAが出荷する「ゆめぴりかの里」のゆめぴりか。室井部長は山わさびの醤油漬けとともに、吉田調査役は炊きたてをそのまま楽しんでほしいと、しめくくりました。

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