1970年に追分町(現:安平町)で誕生した、北海道を代表するブランドメロンの一つ。品種は、『ルピアレッド』『レッド113』『ティアラ』の3種。ネット系の赤肉で、最適な土壌づくりと有機質肥料を基本に、寒暖の差と適切な温度管理により生み出された糖度の高さが特徴です。
さらに、糖度14度未満は出荷不可など、厳正な共同選別を行い、高品質のメロンを安定的に提供。市場関係者からも高い評価を得ています。
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林出勇一さん(JAとまこまい広域)
- 農家の2代目として1967年就農。現在69歳。追分地区の加温栽培の第一人者として、地元の特産物『アサヒメロン』の創成期を支え、ブランドを確立させたメロン栽培のレジェンド的存在。北海道指導農業士や、とまこまい広域農業協同組合の追分地区担当理事の肩書も持ち、新規就農者の育成にも力を注いでいます。
JAとまこまい広域の特産物
『アサヒメロン』とは?
■林出さんの1日(3月の一例です)
地温の確認で始まり、
地温の確認で終わる毎日
メロンづくりは、林出さん夫婦のほか、息子で3代目の一樹さん夫婦の4人で行っています。播種から収穫まで細かな温度管理が必要で、「生育ごとに適温は違いますが、地温が15度を下回ると根が死んでしまう。この時期は朝起きた時と、夜寝る前のハウスの見回りは欠かせないんですよ」と林出さんは説明します。
収穫期は、例年5月から10月20日ごろまでの約5カ月間。米や麦などの農産物に比べると生育期間は短く、ハウス内に定植してからおよそ80〜90日で収穫されます。そのため2週間おきに種をまき、ポットに移植し、その後定植するという作業を6月ごろまで繰り返し、収穫期を調整しています。
雪深い12月にスタンバイ!
生産地の安平町は、新千歳空港から車で約20分。札幌中心部から車で約70分の距離にある自然豊かなまちです。1月下旬、しんしんと雪が降り積もるこの時期にメロンづくりの大事な作業があると聞き、私たちは林出さんの農場を訪ねました。 アサヒメロンの出荷は例年5月のゴールデンウイーク明けから始まり、ルピアレッドが先陣を切ります。12月にはハウスにビニールをかけ、種まきの準備を始めるという林出さん。「ルピアレッドの発芽したばかりの苗をお見せしますよ」と、ハウスへ案内してくれました。
油断ができない、厳冬期の苗づくり
このかわいい双葉たちは、育苗用のハウスで発芽したルピアレッドの苗。種をまいてちょうど10日目くらいなのだそう。驚くことにメロンの種まきは、厳冬期の1月からスタートします。小さな芽が出るとポットに一つひとつ移し、生育に適した環境を整えます。
「メロンを作って50年ほどになりますが、初物で出荷するメロンの苗づくりは毎年力が入ります。寒さに弱い苗のためにハウスの中で火をたいて、気持ちをしっかり込めながら育てています」と林出さん。苗床の適温は、25度前後。冬といえども油断をすれば30度以上になることもあり、絶えず温度管理には気を配っているそうです。
メロンづくりへの思いも熱く
林出さんのメロン畑は約3ha。実際には、長さ100mのビニールハウス17棟でメロンを栽培します。先ほどの苗をハウス内の苗床に定植するため、一樹さん夫婦はハウスの準備に追われていました。
「北海道で高温作物のメロンを栽培するには、加温が不可欠。そのためにハウス内にビニールシートを敷き、温水用のホースを土中に埋め込みます」と林出さん。さらに苗を植え込む前にビニールシートでトンネルを作り、苗床を適温に温めるのだそうです。
ハウスの準備一つとってみても、その労力とコストは想像以上。収穫までまだまだ手がかかることを考えると、頭が下がるばかりです。
私たち消費者にとってメロンは、高級フルーツの代名詞の一つでもあります。せっかくなので林出さんに美味しいメロンの見分け方について尋ねると、間髪入れず「産地です(笑)」と答えが返ってきました。
「メロンはどちらかというと、いただいて食べる機会が多い果物です。だからこそ、一個足りともおかしいものは作れない。新規就農者にはそんな気持ちで作ってくださいと指導しています」と林出さん。「そのようにして作ったものをさらに厳しい目で検査して出荷することで、評価をいただいてきましたから」と付け加えます。
ブランドとともに歩み続けて半世紀、林出さんのメロンに対する情熱がなくなることはないようです。「産地の力を維持するためにも、作り手を増やさないと。私は一生かけてアサヒメロンを育ててきました。これからはメロンと同じように、新しい仲間を育てていきたいですね」