山形さん、はじめまして。生産科学科馬コースの3年生だそうですが、子どものころから馬が好きだったんですか。
幼い頃から馬が好きで、馬のことを勉強したくて、自宅のある神奈川県から静内農業高校へ進学しました。
ものすごい決断力と行動力ですね!全国の高校で唯一、競走馬を生産している静内農業高校には、どんな施設がありますか。
厩舎が2棟あり、放牧地は合計4haあります。飼育している馬はサラブレッドが繁殖用2頭、子馬1頭、乗馬用4頭の計7頭、中半血種が乗馬用3頭います。中半血種とは、サラブレッドと農耕用の馬の中間に位置する馬のことです。
専門用語もスラスラと解説できるんですね。ところで、今年8月、地元で行われたサラブレッド1歳馬のセリ市で、静内農業高校の生徒さんが飼育した馬が、学校史上最高の2,500万円で落札されました。山形さんは、この馬をお世話していたのですか。
はい。物覚えが良く、頭の良い馬で、放牧中に「ケント!」と名前を呼ぶと、駆け寄ってくるような人懐こさもある馬です。これまで大きなケガもなく、健康に育ちました。ケントの一番のポイントは、顔がイケメンなところ(笑)。いろんな人から、イケメンだねとほめられました。
このセリは全国ニュースにもなりましたから、反響が大きかったのでは?
地元神奈川県の友達が知っていて、私のほうが驚きました。静内のまちの方などからは、「最近暗いニュースが多い中、明るいニュースに触れられてうれしい」とおっしゃっていただき、私もうれしくなりました。
馬の世話ができるようになるために、特別な授業があるんですよね。
生産科学科は2年になると、馬コースと園芸コースに分かれ、馬コースでは「馬学」と「馬利用学」の授業が始まります。「馬学」は、サラブレッドの出産、育成、売却までを体験し、それに係わることを学習します。「馬利用学」では、馬の利用方法の学習、乗馬実習があります。基礎的な乗馬技術の習得と、特別支援学校や小中学校を対象にした体験乗馬も行っています。
セリの方法は「馬学」で学ぶんですね。高校の先生が教えてくれるのですか。
8月に行われたセリに向けては、日本中央競馬会の職員さんによる講習がありました。「馬の機嫌を伺うのではなく、馬が人のペースに合わせるように育てなさい」とアドバイスを受け、その通り実践してみると、ケントがみるみるうちに人の指示に従うようになり、成長していくのが手に取るようにわかりました。そのおかげで、私も自信を持ってセリに臨むことができました。あの言葉は、とても心に残っています。
人が動物に合わせるものかと、勘違いしていました。
「馬利用学」の授業で、馬の心理を利用した調教方法「ナチュラルホースマンシップ」を学んだ時も、それまでは私たちの指示を聞かなかった馬が、調教方法ひとつで従順になっていく姿を見て、感動しました。良い馬とは、人に対して従順で健康な馬なのではないかと私は思います。多くの馬と触れ合って、さまざまな性格を知り、馬の個性に合った調教や育て方をみつけていきたいです。
この3年間で、山形さんもずいぶん成長したんじゃないですか。
私は高校から馬に触れたので、慣れるまでが大変でした。馬にかまれてケガをしたこともありますが、1頭の馬を2年間かけて育てることで、私も成長でき、達成感を得られました。また、出産に初めて立ち会った時は、言葉にできないくらいの感動を覚え、馬の成長の速さに驚きました。長い時間、馬と過ごしたことで、馬に対する愛情もより深まりました。
将来は、どのような仕事につきたいですか?
できれば、海外で馬のことをもっと学びたいんです。そこで得た技術や方法などを機会があれば日本へ持ち帰り、馬産地を発展させるお手伝いができたらと考えています。
静内農業高校ならではの学び、山形さんの貴重な経験や夢を、たくさん聞くことができました。今日はどうもありがとうございました。