Vol.15
北海道静内農業高等学校
山形 采さん

わたし × 農業

私が農業に恋した理由
北海道の高校、専門学校、短大、
大学では、たくさんの学生さんが
農業を学んでいます。
農業のどんなところが魅力?
学んでみて知った醍醐味は?
好きだけど大変と感じることは?
青春ど真ん中の日々での実感、
将来の夢などを聞いていきます。

北海道静内農業高等学校

北海道静内農業高等学校 山形 采さん

1978年、「日本の道百選」の一つ、二十間道路桜並木に隣接した地に開校。日高管内唯一の農業高校で、50haもの敷地を持ち、食品科学科と生産科学科を設置。生産科学科馬コースは、日本軽種馬協会、日本中央競馬会等と連携し、全国の高校では唯一の競走馬生産を展開しています。

北海道静内農業高等学校
056-0144 新ひだか町静内田原797番地
http://www.shizunainougyou.hokkaido-c.ed.jp/
TEL:0146-46-2537

  • 山形さん

    山形さん

  • GREEN編集室

    GREEN編集室

GREEN編集部 山形さん、はじめまして。生産科学科馬コースの3年生だそうですが、子どものころから馬が好きだったんですか。

山形さん 幼い頃から馬が好きで、馬のことを勉強したくて、自宅のある神奈川県から静内農業高校へ進学しました。

GREEN編集部 ものすごい決断力と行動力ですね!全国の高校で唯一、競走馬を生産している静内農業高校には、どんな施設がありますか。

山形さん 厩舎が2棟あり、放牧地は合計4haあります。飼育している馬はサラブレッドが繁殖用2頭、子馬1頭、乗馬用4頭の計7頭、中半血種が乗馬用3頭います。中半血種とは、サラブレッドと農耕用の馬の中間に位置する馬のことです。

GREEN編集部 専門用語もスラスラと解説できるんですね。ところで、今年8月、地元で行われたサラブレッド1歳馬のセリ市で、静内農業高校の生徒さんが飼育した馬が、学校史上最高の2,500万円で落札されました。山形さんは、この馬をお世話していたのですか。

山形さん はい。物覚えが良く、頭の良い馬で、放牧中に「ケント!」と名前を呼ぶと、駆け寄ってくるような人懐こさもある馬です。これまで大きなケガもなく、健康に育ちました。ケントの一番のポイントは、顔がイケメンなところ(笑)。いろんな人から、イケメンだねとほめられました。

GREEN編集部 このセリは全国ニュースにもなりましたから、反響が大きかったのでは?

山形さん 地元神奈川県の友達が知っていて、私のほうが驚きました。静内のまちの方などからは、「最近暗いニュースが多い中、明るいニュースに触れられてうれしい」とおっしゃっていただき、私もうれしくなりました。

GREEN編集部 馬の世話ができるようになるために、特別な授業があるんですよね。

山形さん 生産科学科は2年になると、馬コースと園芸コースに分かれ、馬コースでは「馬学」と「馬利用学」の授業が始まります。「馬学」は、サラブレッドの出産、育成、売却までを体験し、それに係わることを学習します。「馬利用学」では、馬の利用方法の学習、乗馬実習があります。基礎的な乗馬技術の習得と、特別支援学校や小中学校を対象にした体験乗馬も行っています。

GREEN編集部 セリの方法は「馬学」で学ぶんですね。高校の先生が教えてくれるのですか。

山形さん 8月に行われたセリに向けては、日本中央競馬会の職員さんによる講習がありました。「馬の機嫌を伺うのではなく、馬が人のペースに合わせるように育てなさい」とアドバイスを受け、その通り実践してみると、ケントがみるみるうちに人の指示に従うようになり、成長していくのが手に取るようにわかりました。そのおかげで、私も自信を持ってセリに臨むことができました。あの言葉は、とても心に残っています。

GREEN編集部 人が動物に合わせるものかと、勘違いしていました。

山形さん 「馬利用学」の授業で、馬の心理を利用した調教方法「ナチュラルホースマンシップ」を学んだ時も、それまでは私たちの指示を聞かなかった馬が、調教方法ひとつで従順になっていく姿を見て、感動しました。良い馬とは、人に対して従順で健康な馬なのではないかと私は思います。多くの馬と触れ合って、さまざまな性格を知り、馬の個性に合った調教や育て方をみつけていきたいです。

GREEN編集部 この3年間で、山形さんもずいぶん成長したんじゃないですか。

山形さん 私は高校から馬に触れたので、慣れるまでが大変でした。馬にかまれてケガをしたこともありますが、1頭の馬を2年間かけて育てることで、私も成長でき、達成感を得られました。また、出産に初めて立ち会った時は、言葉にできないくらいの感動を覚え、馬の成長の速さに驚きました。長い時間、馬と過ごしたことで、馬に対する愛情もより深まりました。

GREEN編集部 将来は、どのような仕事につきたいですか?

山形さん できれば、海外で馬のことをもっと学びたいんです。そこで得た技術や方法などを機会があれば日本へ持ち帰り、馬産地を発展させるお手伝いができたらと考えています。

GREEN編集部 静内農業高校ならではの学び、山形さんの貴重な経験や夢を、たくさん聞くことができました。今日はどうもありがとうございました。