Vol.14
北海道帯広農業高等学校
寺町 和成さん

わたし × 農業

私が農業に恋した理由
北海道の高校、専門学校、短大、
大学では、たくさんの学生さんが
農業を学んでいます。
農業のどんなところが魅力?
学んでみて知った醍醐味は?
好きだけど大変と感じることは?
青春ど真ん中の日々での実感、
将来の夢などを聞いていきます。

北海道帯広農業高等学校

北海道帯広農業高等学校 寺町 和成さん

1920年、十勝農業学校として創立。地域自立型の農業・農村社会を築くために、郷土や地域を愛し、誇りを持って生きることのできる人材を育成し続けています。2020年7月からは、世界基準の「ASIA GAP」の認証取得に取り組むなど、常に先を見つめた学びを実践しています。

北海道帯広農業高等学校
080-0834 帯広市稲田町西1線9番地
http://www.obino.hokkaido-c.ed.jp/
TEL:0155-48-3051

  • 寺町さん

    寺町さん

  • GREEN編集室

    GREEN編集室

GREEN編集部 寺町さんは、農業科学科のみなさんと一緒に、高級菜豆・白花豆を使った「白いカレー」の開発に携わったそうですね。そのお話を中心にお聞きしたいのですが、まず自己紹介をお願いできますか。

寺町さん 私は、帯広市の隣町・芽室(めむろ)町にある寺町農場の三代目で、父は、東京ドーム4個分以上ある23haの畑で小麦、ビート、馬鈴しょ、小豆、枝豆、インゲンを栽培しています。実家の農業を継ぎたいと考えていますが、さらに、家では栽培していない野菜づくりを学べて、アンテナショップ「あぐりす」で農産物の販売経験ができる帯広農業高校に進学しました。

GREEN編集部 目標が明確ですね!ではさっそく本題に入りますが、農業科学科のみなさんは、どの段階から「白いカレー」の開発に参加したんですか。

寺町さん JAうらほろの永沼篤主査に指導を受けながら、白花豆を栽培するところから挑戦しました。栽培の大切な工程のひとつに、豆のつるを竹製の支柱に手で巻き付ける作業があり、慣れるまでは大変でした。その作業を終えた支柱が強風にあおられ、何本も根元から折れてしまった時は、立て直すのが大変でした。

GREEN編集部 そうでしたか。自分たちが苦労して育てた白花豆には、思い入れもありますね。豆をカレーに使うことは、初めから決まっていたのですか。

寺町さん いいえ、どう使うかを考える前に、市場調査を行いました。デパートやスーパーなどで、白花豆を使った商品にはどのようなものがあるか、価格はどの程度かをチェックし、店頭で手に取りやすい商品の特徴なども調べました。レシピ開発段階では煮豆、筑前煮、ジャム、ドレッシングなども候補にあがりましたが、最も試作しやすいことからカレーに絞られました。

GREEN編集部 白花豆は、純白で粒が大きいことから、「豆の女王」とも呼ばれていますね。その魅力を生かすことも、課題だったのではないでしょうか?

寺町さん そうなんです。白花豆をルーに入れるタイミングを変えたり、皮をむいたりむかなかったり、いろいろテストしたのですが、どうしても豆にカレーの色がついてしまいました。そこで私たちは、白花豆を「あとのせ」しようと考えたのですが、JAやこのプロジェクトをサポートしてくれた企業の方と話し合い、白いルーを作ることにしたんです。

GREEN編集部 白いルーとは?もう少し教えてください。

寺町さん 白花豆をペーストにして練り込んだ、白っぽいカレールーを作ったんです。こうすることで、コクも深まりました。豆そのものの味も楽しんでほしいので、具としても豆をまるごと入れました。

GREEN編集部 もしかして、商品名の『白花豆ごろっと白カレー』の「ごろっと」は、豆がまるごと入っているところから出てきた言葉ですか?

寺町さん カレーの特徴を名前で表現したい、そう考えました。パッケージは、白花豆の白をより強調するために背景を黒色にしています!このカレーは、見た目はシチューのようですが、封を切るとカレーの香りが広がり、豆の上品な風味とホクホクした食感を楽しめます。豆の甘さがカレーでより引き立っているとも思います。

GREEN編集部 豆の栽培からかかわってきただけに、この商品に注ぐ思いの強さを感じます。このプロジェクトに参加して良かったと思うことを教えてください。

寺町さん 私は将来実家を継ぎながら、複数の農家と連携して、6次産業化や野菜の販路拡大を進めたいと考えています。商品開発の難しさを実体験できたこと、JAや企業の方には6次産業化の講習を何度も開いていただき、将来経営面で生かせる考え方などを詳しくお聞きできたことは大きな収穫でした。この講習のテキストは、僕にとっては宝物です。

GREEN編集部 今後に役立つ、貴重な経験をされたようですね。

寺町さん 農家同士、そして町、企業との連携などで、北海道農業はまだまだ発展していけると感じました。北海道のこれからの農業は、携わる人の思いひとつ、一人ひとりの意欲次第で新しい形が見えてくる。そう思います。最後に、農業をともに学び、畑でともに汗を流してきた友達を紹介させてください(ちなみに、最後列右が私です)。

GREEN編集部 気心が知れた仲間同士といった雰囲気ですね!十勝の農業がよりおもしろくなりそうです。今日はありがとうございました。