ゆめぴりか
Vol.02

おいしいの研究

ゆめぴりか

vol.2

研究者:粕谷 雅志さん

研究者:粕谷 雅志さん

北海道立総合研究機構 上川農業試験場 研究部 水稲グループ研究主任。本機構の研究職員として、上川農試で水稲を8年間、北見農試で麦を7年間担当し、今春再び上川農試に戻り、「ゆめぴりか」の次を担う品種などを開発中。趣味は読書。

開発者の粘りが生んだ、
粘りのあるおいしさ!

質より量を重視してきた北海道米は、お米が余るようになった1970年代には「やっかいどう米(まい)」と揶揄されることに。しかし、その後の努力が実り、近年では「北海道米はおいしい!」という評価が道内外で定着しました。なかでも現在、北海道米の最高峰といわれるブランド米が「ゆめぴりか」です。そのおいしさはどのようにして生まれたのか、前編に引き続き粕谷さんに聞きました。

おいしいだけではデビューできない

おいしいだけでは
デビューできない

前編では主に「ゆめぴりか」誕生までの北海道米の歴史を紐解いてきました。いよいよ、「ゆめぴりか」開発の具体的な話に入っていきましょう。お米の品種開発は、異なる品種を交配させることから始まります。では粕谷さん、「ゆめぴりか」の両親は? 「一方は上川農試が開発した『ほしたろう』で、もう一方が札幌にある北海道農業研究センターで生まれた『北海287号』です。この『北海287号』は突然変異による系統で、アミロースの含有量がとても低いという特徴をもっています」

お米に含まれるアミロースが少ないほど粘りが出て、おいしさにつながるんでしたね。でも、それなら『北海287号』をデビューさせてあげればよかったのに、という疑問も…。「おいしいのですが、収量性が低いという欠点がありまして。そこで、収量性が高く、病気にも強い『ほしたろう』と交配し、欠点を補おうとしたんです」

優秀な品種×丁寧な栽培=ブランド米

優秀な品種×丁寧な栽培=
ブランド米

なるほど! 交配が行われたのは1997年とのことですが、その後は品種登録まで特に問題なく進んだのでしょうか。「いえ、前半は順調でしたが、2000年に実施した生産力本試験で落ちてしまいました。当時のエースだった『きらら397』よりも1割ほど収量が低いという結果が出てしまったんです。やはりいくらおいしくても、収量が同等か、それ以上でなければ、農家さんに切り替えてもらえませんので」

それでも、開発に携わった方々が諦めきれず? 「はい。やっぱりおいしかったので。2004年の再試験で合格点を取り、その後3年間の最終試験でも成績がよかったため、2008年に晴れて『ゆめぴりか』となることができました。私も2004年から携わっていましたので、やはり成果をあげられたのはとてもうれしかったです。実家が米農家ということもあり、お米の品種改良には大きなやりがいを感じています」

粘りがあっておいしい「ゆめぴりか」は、開発者のみなさんの粘り勝ちで生まれた品種なんですね! そのうえで、ブランドの「認定マーク」が付与されるためには、実際に育ったお米に含まれるアミロースやタンパク質の量など、きびしい基準をクリアしなければならないと。「はい。そのため、生産者の方々はかなり気を使って、丁寧に栽培されています」。優秀な品種であるのみならず、生産者一人ひとりの努力が「ゆめぴりか」の高い評価につながっているんですね。

おいしくてたくさん採れるお米をめざして

おいしくてたくさん採れる
お米をめざして

「ゆめぴりか」の成功もあり、全国的に認められた北海道米ですが、今後の品種開発はどのような方向に進んでいくのでしょう。「高齢化などによって生産者が減少し、栽培面積が減っていくなかで、いかに北海道として生産量を維持していくかがポイントです。そのため、食味をキープしながら、より多収のものが求められているのが現状ですね。上川農試の具体的な目標のひとつは、『ゆめぴりか』のように食味がよく、かつ『ゆめぴりか』より多収な品種の開発です」

多収とは、1つの穂に付く籾(もみ)の数がより多いということですか? 「それに加え、1つの種子から出る穂の数が多いことや、1つの粒が大きいこと。この3つの要素をバランスよく上げていけるように開発を進めているところです」。ちなみに上川農試における最新ナンバーは、「上育481号」。北海道米の新たなスターとなることができるのか、数年後を楽しみに待ちましょう!