Vol.46
ふるさとのチーズ
~ラ・レトリなかしべつ~

白い滴のマリアージュ

今回のテーマ

ふるさとのチーズ
~ラ・レトリなかしべつ~

中標津とは、アイヌ語の「シペッ=大きな川」に由来する「標津」と、標津川の中流域に位置することを表す「中」を組み合わせたものと伝えられている。北海道東部にあるこの町の主たる産業は、もちろん酪農である。
1992年に町内の生乳を使ったアイスクリーム、のむヨーグルトなどの加工を始めた「ラ・レトリなかしべつ」。ラ・レトリ(la laiterie)とは、フランス語で「乳製品を作る工場・お店」という意味。中標津空港のすぐそばなので、飛行機に乗る前に立ち寄るにはもってこい。観光シーズンは多くの人が訪れる。

代表の近野了さんは、それまで札幌でホテルマンをしていた。出身地の中標津に戻ったきっかけは、地域の名産品「のむヨーグルト」との出合い。生乳の素晴らしさが伝わるおいしさに感動し、思い切って退職し転職。ヨーグルトやアイスクリームを作るかたわら、「より深く牛乳と関われる加工品を」と、独自に資料を集めて研究を重ね、2000年からチーズ作りに着手した。
生乳が素晴らしいから、余計なものは足したくない。その思いから、チーズはもちろんのこと、ヨーグルト、ジェラートにも添加物は一切使用していない。生乳は繊細なので、牛が食べるもの、気候などによっても状態は変わる。近野さんは、原材料をよく観察し、吟味することで、添加物を使わなくても良い製品がつくれるという信念を持っている。

そんな近野さんが、幾度かの失敗を経て完成させたのが、コクのあるゴーダを作る過程でウォッシュし、もっちりした食感を引き出した「ブリック・ド・ナカシベツ」。
「もっと匂いがしっかりするウォッシュを作ったのですが、それがまったく売れなくて」と笑う近野さん。
故郷中標津の生乳の素晴らしさを伝えるべく、改良を重ねたこのチーズは、多くの人が手に取りやすいチーズとして親しまれるようになり、いまや知る人ぞ知る中標津の名産品のひとつになっている。

チーズの紹介:
ブリック・ド・ナカシベツ
煉瓦のような赤みを帯びたウォッシュチーズ。ウォッシュしながら2カ月以上熟成。香りは比較的おだやかで、ゴーダに近いコクのある味わいを楽しめる。
「ブロック状で独特の風味が特徴。他にないものを作りたくて」と近野さん。プレーンとキャラウェイの2種を製造している。
 
< ラ・レトリなかしべつ >
〒086-1145 北海道標津郡中標津町北中9番17
https://www.laiterie.co.jp/