Vol.47
開拓者のチーズ
~ハッピネスデーリィ~

白い滴のマリアージュ

今回のテーマ

開拓者のチーズ
~ハッピネスデーリィ~

1896年(明治29年)、旧鳥取藩主の池田侯爵によって、本格的な開墾が始まった池田町。ワイン、あか牛などでも知られている。
池田町の高台にある嶋木牧場は、町の開拓期から120年以上の歴史を持つ。4代目の嶋木正一さんは、1990年に酪農家として日本で初めてジェラートの加工を始め、乳製品の製造もスタート。1998年には、牧場経営を長男に譲り、チーズ作りを開始した。

乳製品の加工は、研修で滞在したアメリカでの経験から。いまや日本では当たり前になっている、酪農家が自家製アイスを製造・販売する姿に感銘を受け、「自分の牧場の近くで、新鮮な乳を使って、自分でアイスを作りたい」と、帰国後、加工に挑戦。当初はノウハウもなく、大変だったという。
その8年後、奥さんとともにスイスへ渡り、現地のチーズ学校で学んだ技法でチーズの製造を始めた。その道のりも、平坦なものではなく、幾多の失敗もあったそうだが、その苦難を支えたのは、「どうしたらおいしく作れるか」という好奇心と向学心。

2016年には、国内のチーズコンテストで、「森のカムイ」が最高賞を受賞するなど、嶋木さんらが作るチーズは高く評価されている。それでも、そこで満足せず、新しいことを切り拓く姿勢に変わりはない。先日お伺いしたとき、75歳になった嶋木さんは、「今ね、地元の野菜を使ったピクルスを商品化できないかと考えていてね」と、キラキラした目で熱くお話をしてくれた。
常に次の時代を見据えて、道なき道を切り拓こうとする開拓者のスピリットと血、牧場の経営を息子に譲った今も「毎朝牛舎に行って作業しないと気が済まなくて」と語る、変わらぬ酪農への愛が、「幸せな(ハッピネス)酪農(デーリィ)」の根底を支えている。

チーズの紹介:
森のカムイ
パルメザンチーズをモデルに、独自の製法で7カ月以上熟成させて仕上げる「森のカムイ」は、コンテストの受賞多数。じゃがいもを思わせるホクホクとした風味で、かむほどに濃い味わいを楽しめる。そのままおつまみに、とろけるチーズに、すりおろしてサラダやパスタにも。
 
< ハッピネスデーリィ >
〒083-0002 北海道中川郡池田町清見103-2
https://happiness-dairy.com/