北海道とつくるおいしさ[08]
boulangerie coron
(ブーランジェリー コロン)

はるばる来たぜ、食卓へはるばる来たぜ、食卓へ

北海道産小麦100%のパンがある 食卓の豊かさを伝えたい。

北海道産小麦を100%使ったパンづくりは、ここ数年で急速に広がり、技術も深まりました。その先鞭をつけたのが、boulangerie coron(ブーランジェリー コロン、以下、コロン)です。コロンは、北海道に根差して北海道の魅力を発掘し、全国へ発信する(株)クリエイティブオフィスキューが、エンタテイメントに並ぶ柱として、食を通して北海道の魅力を伝えようと2012年にオープン。今回は本店とキッチンを訪ね、北海道産小麦へのこだわり、パンづくりへの思いを聞きました。

パンと、パンに合う北海道産の食材と

コロンは、札幌市内に3店舗と姉妹店のレストランを展開し、本店はファッションや文化、グルメなどの感度が高い人々が注目するエリア・創成川イーストの一角にあります。お店の扉を開くと、香ばしい小麦の香りが広がり、木製ラックにはハード系、スイート系、食事向けのパン、旬の食材を使った季節限定のパンなどが。店内にはパンに合う北海道産のワイン、チーズ、ジャムなども並んでいます。北海道産小麦でつくったパンがある食卓の豊かさを楽しんでほしい-。そうしたコロンのコンセプトが、お店全体から伝わってきました。

志賀勝栄氏を師と仰ぐ、高崎真哉シェフ

コロンのパンづくりの指揮を執るのは、高崎真哉シェフ。師は、業界屈指のパン職人であり、コロンのグランシェフでもある志賀勝栄氏です。「関東で暮らしていた20代の頃、志賀さんがつくったフランスパンを食べたら、小麦の味が出てきたんです。どうしたらこんなパンをつくれるんだろうと。衝撃的な出会いでした」。高崎シェフはすぐに電話をかけ、志賀さんのもとで学びたいと直談判。これをきっかけに志賀さんが監督する全ブランドで働く機会を得て、小麦の旨味を引き出すパンの製法などを習得。その後、コロンを率いるシェフに抜擢され、北海道に移住したのだそうです。

生産者、製粉会社と連携

現在、コロンで使っている北海道産小麦は約10種類。「北海道産小麦は種類が増え、年を追うごとにレベルが高くなっています」と、高崎シェフ。小麦の毎年の状態を聞いたり、小麦を育てる苦労を垣間見たりすることで、大切に使いたいという気持ちが強くなったと共に、「生産者の皆さんから刺激を受ける分、自分も負けられないと一層力も入りますね」とも。道内にある製粉工場に足を運んで学びを深めるだけでなく、生産者、製粉会社と共に、北海道産小麦をいかにおいしく食べてもらえるかを意見交換しているそうです。

「低温長時間発酵」で旨みを引き出す

長い間、北海道産小麦は扱いが難しいとされてきました。高崎シェフはその理由を「モチモチしていて、甘くなりやすい傾向があるからだと思います」と補足します。コロンでは、そうした個性を持った北海道産小麦のパンづくりを、志賀氏がパイオニアである「低温長時間発酵」製法で行っています。生地は30度前後で数時間寝かせるのが一般的ですが、この製法では低温で一晩寝かせます。こうすることで、小麦が持っている旨みをしっかり引き出せるのだそうです。「小麦粉と水、酵母のみでつくるフランスパンを食べていただければ、違いをわかってもらえると思います」。こう語る高崎シェフの表情に自信がにじみます。

北海道のめぐみをパンにいかす

開店以来、人気No.1のパンは、「道産とうきびのリュスティック」(写真右)。北海道産とうもろこしを惜しみなく、たっぷり練り込んで焼き上げるこの商品は、食材のおいしさを大切にするコロンの象徴とも言える商品です。「とうもろこしは、品種、収穫時期、生産者によって味が違う。そこがおもしろいんですよ。とうもろこしによって塩の分量を変え、甘さを立たせるんですが、こうしたパンづくりができるのも、北海道に移り住んだからこそ」と高崎シェフ。新商品として、北海道産野菜のおいしさを楽しめるパンを考案中だそうです。

お客様の間で高まる、原材料への関心

コロンに対するお客様の期待やニーズについて、専門販売員の皆さんに聞きました。下屋敷美代さん(パンシェルジュ/写真中)は「健康志向が高まっている中、北海道産にこだわるコロンのパンには安心感があるようです」、向井千央さん(パンコーディネーター/写真右)は「お客様から小麦の品種のご質問を受けることも増えています」とコメント。志村理加さん(パンコーディネーター/写真左)は、「ご自宅での食べ方をお聞きしながら、トーストならこちら、サンドイッチならこちらと、原材料の説明もまじえてご提案しております」と微笑みます。お客様の舌が肥え、パンへの関心も深化しているようです。

WEBショップ「coronパン定期便」

コロンのパンをもっと手軽に届けたいと、昨年、WEBショップ限定で「coronパン定期便」がスタートしました。3ヶ月間、毎月異なる5種類程度のパンに、旬食材のポタージュやパンのおともをセットにして冷凍便で発送しています。「パンは、焼き上がって粗熱が取れた後、すぐに急速冷凍しています。急速冷凍することで焼き立てのおいしさを閉じ込め、お召し上がりの際に焼き立て同様のおいしさをお楽しみいただけます」と、高崎シェフ。WEBショップからは、定番のパンやスイーツなどもお取り寄せが可能です。
※右記写真はイメージです

「coronパン定期便」のポタージュは
塚田シェフ考案

「coronパン定期便」の一品、旬食材のポタージュは、brasserie coron(ブラッスリー コロン)の塚田宏幸シェフが毎回考案しています。ご購入いただいているお客様は、北海道産食材のファンが多いことから、「素材をいかすこと、素材の味を引き出すことを最優先にレシピを考えています。もちろん、パンと合わせた時に互いが引き立つことも重要ですから、毎回、高崎シェフと話し合って決めています」と語る塚田シェフ。今後も、北海道の食材の知られていない側面を見せながら、ここでしかつくれない味を追い求め、提供してくれるとのこと。楽しみが広がります。

生産者と共に、仕事仲間と共に

コロンでは、パンをメインにクグロフ、シュトレン、焼き菓子など、常時40~50種類を提供しています。コロンの商品開発・製造チームは、意見やアイデアを日々交換し、練り上げ、新商品を生み出しています。最近では、米糀を使った商品などにもチャレンジしているそうです。「それもこれも、良質な小麦があってこそのこと。北海道の生産者さんにもっとスポットを当て、お互いのモチベーションを高めながら、コロンならではのものづくりをしていきたい」。たくさんの人とつながって、北海道とつくるおいしさが磨かれ、育っていくことに期待がふくらみます。
 
北海道産小麦のクオリティの高まりに頼るだけでなく、職人としての技術を高め、お客様の声を聞きながら、北海道の魅力をもっと輝かせたい。
コロンのパンの奥行きのある味わいは、そうしたぬくもりのあるプライドが支えているように感じました。