北海幹線用水路

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北海幹線用水路

【 60 秒 】

北海道の農業の「今」を動画で伝える「北海道NOW」。今回は、北海道の米どころ・空知(そらち)地域を流れる、国内最大の農業用水路「北海幹線用水路」に迫ります。豊かな実りと潤いを支える水の大動脈は、総延長約80km。その始まりから終わりまでをドローン映像と共にダイジェストでお届けします。

  • 先人たちの悲願と“国づくり”発想
    「北海幹線用水路」が完成したのは、1929年。「明治期に夢を抱いてこの地にやってきた先人たちが集まり、力を合わせて日本の一大米穀地帯にしようという“国づくり”発想から計画されました」。こう説明するのは、「北海幹線用水路」の維持、管理を担う北海土地改良区(水土里ネットほっかい)の長井眞一理事長。一帯を流れる北海道一の大河・石狩川はむかしから氾濫を繰り返し、手を焼いていたそうです。原野に鍬を入れ、厳しい自然環境と闘いながら農業に取り組んだ先人たちにとって、「この広大な平野を美田に」という思いは悲願だったと、振り返ります。
  • 東京ドーム3杯以上取水する日も
    用水路のスタート地点は、頭首工(とうしゅこう)と呼ばれます。「北海幹線用水路」の頭首工は、赤平市にあり、ここで空知川を堰き止めて取水し、流木などを除去した水を用水路へ誘導します。稼働期間は、5月から8月までで、農作業に合わせて5期に分け、指定された水量を取水。その量は多い時には毎秒45t、一日にすると東京ドーム3杯分以上の約386万tにもなるそうです。降雨による川の増水など、天候の影響を如実に受けながらも、過不足なく水を取り、流せるように、管理棟では職員が24時間体制で上流水位や各設備の状況を監視しています。
  • 用水路が川をまたぐための水路橋
    「北海幹線用水路」は、終点にたどりつくまでの間にいくつもの川を渡らなければなりません。そのために完備されているのが水路橋で、約80kmのルート上には計15本が架かっています。写真は、ペンケウタシナイ川をまたぐペンケ水路橋です。橋は長さ130m、幅5.6m・深さ3.2mの2本の水路があり、そこには水が勢いよく流れていました。川幅が広い川の場合は、橋を架けるのではなく、用水路を川の下にもぐらせ、逆サイフォンの原理(※)によって水をくみ上げます。
    ※水圧を利用して低い位置の水を高い位置まで引き上げること
  • 湖のようなスケール、光珠内調整池
    「北海幹線用水路」が稼働する期間で最も水を必要とするのは稲作で代掻(しろか)き(※1)を行う5月、次いで深水管理(※2)が重要な7月。これらの時期に水不足が起こらないように水を貯め、備えているのが、光珠内(こうしゅない)調整池です。水量が多い時に「北海幹線用水路」から水を引き込み、貯めておく1池と、余分な水は川へ、不足時には水を用水路へ流す2池があり、合計貯水面積は東京ドーム約1個分の約36万㎡、貯水量は約158万t。まるで湖のような巨大な水がめが、水のデリケートな管理を支えています。
    ※1 田んぼに水を張って、土を細かく砕いてかき混ぜ、土の表面を平らにする作業
    ※2 田植え後、寒さから稲を守るために田んぼに深く水を入れる作業
  • 歴史の流れを子どもたちにつなげたい
    ここが、南幌町にある「北海幹線用水路」の終点です。頭首工の取水口の幅は14m、それがここではわずか1.8m。実は、「北海幹線用水路」は、土地の自然な傾斜に沿って、水が約80kmにわたって流れるように設計されています。これは3~4kmあたり1m程度の勾配で流した計算になり、その設計を昭和初期に成し遂げたというのですから驚きです。そうした土木技術が蓄積された歴史的にも重要な施設であることも評価され、「北海幹線用水路」は「北海道遺産」に選ばれました。「ここに現存し、今も機能していることにも深い意義があります。歴史の流れを子どもたちにつなげていきたいです」。長井理事長は、そう語るとにっこりと微笑みました。