冨田ファーム:
チーズ工房編(興部町)

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冨田ファーム:チーズ工房編(興部町)

【 60 秒 】

北海道の農業の「今」を動画で伝える「北海道NOW」。前回に続き、オホーツク海に面した興部(おこっぺ)町の冨田ファームからお届けします。今回は、牧場内のチーズ工房から、おいしいミルクを使ったチーズ作りについて紹介します。

  • バラエティに富んだ12種類を製造
    冨田ファームでは、20年ほど前から牧場内の工房でチーズ作りを行っています。「25年前に化学肥料を使わない牧草づくりを始め、牛に与える際は栄養素が一定になるよう配合を工夫して数年が経ったころ、生乳の成分が安定するようになりました。これなら高品質のチーズが作れると、新たな挑戦でした」と話すのは、冨田ファームの長女・佳子さん。乳業メーカーでチーズ職人として経験を積んだご主人の小林仁さんと、二人三脚でチーズを作っています。現在、ゴーダやラクレット、ブルーなど12種類のチーズを製造。チーズフォンデュにも使われるエメンタールなど、日本では珍しいスイスタイプや各コンテストで受賞したチーズもあり、高い評価を得ています。
  • 1回300Lのミルクで30kgのミモレットに
    工房でのチーズ作りは週4日、1日1種類ずつで、取材当日はミモレットの日でした。ミモレットはフランス原産のハードタイプチーズで、濃いオレンジ色が特徴です。色付けには、ベニノキの種子から抽出したアナトー色素を使います。まずミルクに乳酸菌や酵素と一緒にアナトー色素を混ぜて固め、カード(固形物)とホエイ(乳清)を分離。次にカードを切り分け、一つひとつガーゼで包んで型に入れ、重石をかけます。その後、天地を返して水分をしっかり抜き、冷却。25%の塩水に漬けて塩味を浸透させたら、熟成庫へ。どの工程も手作業で丁寧に行い、1回で300Lのミルクから30kgほどのミモレットを仕込みます。
  • 日々の研究を怠らず変わらぬおいしさを
    一つの工程が終わるたびに、仁さんはチーズのpH(ペーハー)値や温度、ホエイを抜く時間などを製造記録に書き込みます。「ミルクの成分は同じでも、気温や湿度によって味や質感に影響が出ます。チーズの品質を安定させるためには、データを取ることも必要です。勘やコツ頼みではうまくいきません」と仁さん。新製品の開発には、試作に最低でも1年を費やします。「1年間作り続けて、気候などがどう影響するかを見定めないといけません。お客様には、いつ買ってもおいしいと思っていただけるチーズをお届けしたいですから」。長年の経験を積んでもなお、おいしいチーズ作りへの研究に情熱を注いでいます。
  • 質の高いミルクの味をチーズで伝えたい
    ミモレットは熟成させることで、味わいが濃厚になっていくチーズです。冨田ファームでは、室温約5℃の予備熟成庫に1カ月ほど置いて冷やし、異常発酵を抑制します。その後、室温7~8℃、湿度70~80%の本熟成庫で3~4カ月寝かせてから切り分けて、道内や全国に向けて出荷します。チーズの本場ヨーロッパにも足を運び、長年チーズ作りに取り組んできた佳子さんは、「消費者の方々の『おいしい』という声をダイレクトに聞けるのが励みになっています」と笑顔を見せます。「チーズの味はミルクで決まります。高品質のミルクを最大限に生かせるよう、これからも試行錯誤は続きます」と仁さんは、さらなる探求心をのぞかせました。