品地(しなじ)
一彰さん
(JA北はるか)
農家の時計

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今回の農家さん

品地 一彰さん(しなじ      )(JA北はるか)
下川(しもかわ)町出身。2009年に農家の三代目として就農。現在はホワイトアスパラガスをはじめ、グリーンアスパラガス、水稲(もち米)、小麦、かぼちゃ、スナップえんどう、春菊などを栽培しています。

JA北はるかの特産物
『ホワイトアスパラガス』とは?

JA北はるかは、道北に位置する下川町、美深町、中川町、音威子府村の4町村で構成され、酪農・畜産を中心に、稲作や小麦、そば、かぼちゃ、アスパラガス、フルーツトマトなど、多彩な農畜産物を生産し、全国各地へ届けています。この地域は、冬は-30℃、夏は40℃になることもあるほど寒暖差が大きく、JA北はるかでは、長くて厳しい冬のハンデを乗り越えるため、ハウスを活用した農業の研究を早くから進めてきました。多品種を組み合わせ、露地栽培とハウス栽培を並行して進めることで、収穫時期をずらしながら長期的な出荷を実現しています。中でも、十数年前から遮光ハウスでのホワイトアスパラガス栽培に力を入れており、作付面積は年々増加。年間約52tを栽培し、その約8割を関東・関西方面に出荷しています。
 

■品地さんの1日(4月下旬の一例です)

収穫作業は、
涼しい早朝または夕方に

品地さんは、4棟の遮光ハウスでホワイトアスパラガスを栽培し、例年4月中旬から6月中旬に収穫、出荷しています。1日の収穫量は40kg~50kg。作業はお父さんと2人で行っています。「この時期は、田植えの準備やグリーンアスパラガスの収穫とも重なり忙しいのですが、ホワイトアスパラガスは涼しい時間にしか収穫できないので、時間をうまくやりくりしています。早朝または夕方の2時間ほどで手早く行うのがコツです」と品地さん。
遮光ハウスは、大型ハウスの中に建てられます。光はもちろん風も通しません。ハウス内の温度は、日の出とともにどんどん上昇し、晴れている日には60℃以上になることも。農作業をするには過酷な環境です。そのため、遮光ハウス内での作業は、日の出直後か日が傾く涼しい時間に限定されるのです。

暑い日が続くと、
1日2回収穫することも

「作業中の体感温度は、40℃前後。20分でホワイトアスパラガスを10kgほど刈り取ったら、一度ハウスを出て倉庫に持参し、光が当たらないようにふた付きの箱に保管します。その時に、少しだけ涼めるかな」と品地さんは笑います。ホワイトアスパラガスは、1日に5cm~10cmも成長することがあり、外気温の高い日は朝と夕方に収穫。そんな日は、仕事を終えるのが夜9時を回ってしまうそうです。「もちろん、収穫期は1日も休めません。それでも、ホワイトアスパラガスは手のかからない作物。ありがたいですよ」と話す品地さん。息抜きは、2歳になる息子さんを寝かしつけること。「日中は妻に子育てをまかせっきりなので、これくらいは担当しないと」と、素敵なパパとしての一面ものぞかせます。

真っ暗闇の中、
ヘッドライトで収穫

ホワイトアスパラガスの収穫は、真っ暗な遮光ハウスの中で、ヘッドライトの灯りを頼りに行われます。鎌に付けた印で27cm以上に育っていることを確かめながら、1本1本手作業で刈り取り、腰に巻き付けたカゴに収めていきます。暑くて暗いハウスの中での作業は、誰の目にもかなりの重労働に見えますが、品地さんは「ぜんぜん、ぜんぜん」と明るく笑い飛ばし、「ホワイトアスパラガスは、手をかけた分だけ期待に応えてくれるんです」と続けます。虫が入るのを防ぐために、暑くてもハウス内に風を通すことができません。天候を見ながら水やりをしますが、やり過ぎると土壌に細菌が繁殖する原因になり、少な過ぎてもみずみずしさが出せません。「でも、温度と水の管理にさえ気をつければ、太くてきれいでおいしいホワイトアスパラガスに育ってくれます。手がかからない分、ほかの作物と組み合わせて栽培できるから、小規模な農家にも向いている作物です」。

グリーンの栽培経験が、
ホワイトへの挑戦を後押し

品地さんがホワイトアスパラガスの栽培を始めたのは、10年前。それまでは、同じハウスでさやえんどうを栽培していました。「同じ場所で同じ作物を作り続けるのは、土に良くないんです。さやえんどうの次は何を作ろうかと考えていたとき、町内でホワイトアスパラガスの栽培に取り組み始めた農家さんがいたので、自分も挑戦したいと思ったんです」。それ以前から栽培していたグリーンアスパラガスの出来栄えに、手ごたえを感じていたこともホワイトアスパラガスへの挑戦の後押しになったそうです。

ホワイトとグリーン、
実は同じ品種

真っ白なホワイトアスパラガスと青々としたグリーンアスパラガスは、実は品種は同じです。ホワイトアスパラガスは、太陽の光を完全に遮断して栽培しますが、太陽の光をたっぷり浴びると、グリーンアスパラガスになります。「ホワイトアスパラガスは、少しでも日が当たったり、ハウス内が高温になり過ぎたりすると変色してしまうので、そこには気を遣います」。
 
最後に、品地さんがおすすめするホワイトアスパラガスの食べ方を尋ねました。「遮光ハウスで栽培するホワイトアスパラガスは、やわらかいのでバターで炒めたり、焼いたりするとおいしいですよ。甘みがたっぷりだから、味付けは塩だけで十分です」と品地さん。さらに、「ホワイトアスパラガスはグリーンに比べて、高級な食材というイメージが強いかもしれませんが、家庭で普段の食卓に上がる野菜にしたいですね。そのためには、僕たちが頑張ってたくさん作らないと」と意欲を見せます。この時期にしか出会えない新鮮なホワイトアスパラガス。甘さとジューシーさが格別なJA北はるかのホワイトアスパラガスを、ぜひ味わってください。