後藤 信太郎さん
(JAめまんべつ)
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今回の農家さん

「純農Boy北海道オーディション」 2021年グランプリ
後藤 信太郎さん(JAめまんべつ)

1995年、大空町生まれ。農業系の大学を卒業後、23 歳で農家の四代目として就農。現在は、養豚と豆(小豆、福良金時)、てん菜、種子用小麦の栽培を行っています。

みなさんは、北海道のJA青年部の“顔”を決めるオーディションがあることをご存じですか? 農業やJA青年部の活動に人一倍情熱を注ぐ、若き生産者を選出する「純農Boy北海道オーディション」。今回、2021年のグランプリに輝いた“純農Boy”の後藤信太郎さんと、主催する北海道農協青年部協議会(JA道青協)会長の稲村政崇さんに、GREENライターがインタビューしました。

「純農Boy北海道オーディション」を主催する、
JA道青協とはどのような組織なのでしょうか。
目的や活動内容について教えてください。

稲村: 私たちは主に
・農業経営のための勉強と生産者同士の交流を大きな柱にしながら
・北海道の農畜産物や北海道農業の PR
・未来を担う子どもたちへの、食の教育活動

など、広く一般の方々に北海道農業の魅力、大切さを伝えるための広報活動にも力を入れています。現在所属する盟友は約6000人。全国のJA青年部組織の中で最も多く、就農したばかりの人からベテランの方まで、幅広い層の生産者が活動しています。
 
北海道はとにかく広いので、同じ作物でも地域が違えば作り方も違うため、各地の生産者と交流することで気づきが生まれます。また、北海道の農業の未来のあり方を考える場でもあります。ですから生産者の連携と意見交換は、とても大切なことだと思っています。ここ2年ほどは、コロナ禍で直接会う機会が減っていますが、歩みを止めることなく活動を続けています。
 
 

「純農Boy北海道オーディション」の
目的と概要について教えてください。

稲村: 消費者の皆さまに、北海道農業の魅力を発信することが狙いの一つです。また、北海道農業を担う若者の中から代表を決めることで、農業への熱意を高める動機付けにもなっています。2013年から始まった「純農Boy北海道オーディション」は、毎年秋から冬にかけて開催され、グランプリと準グランプリは、北海道内12地区の代表者の中から選ばれます。任期は1年間で、8代目純農Boyの後藤さんは、今年の12月までの間、ラジオやテレビの出演などさまざまな場でPR活動を行っていく予定です。
 

後藤さんが農業を始めた
きっかけについて教えてください。

後藤: これは農家“あるある”なのですが、僕は長男なので、小さい頃から周りの人たちに後継ぎと言われて育ちました。その後、進路を決めるにあたり、父の口から「自分が育てている麦や豆、てん菜(砂糖の原料)、豚は、日本の食を支えている。農業を通して社会に貢献している」という言葉を聞き、誰かの食を支えている農業って面白い仕事なのかもなぁと思うようになり、農業の道に進もうと決断しました。高校卒業後は、実家で農作業をしながら通える、農業系の大学に進学しました。
 

後藤さんが、オーディションに応募した
理由について教えてください。

後藤: 所属するJA青年部の先輩に勧められたのがきっかけです。あまり人前に立つのが得意なタイプではないことと、自分よりも魅力的な方がいらっしゃるはずと思っていたので、選ばれないだろうと思いながら応募しました。
 

グランプリに、後藤さんが
選ばれた決め手は何でしたか?

稲村: 参加した12人それぞれが素晴らしかったですが、やはりJA青年部を代表する顔となると、農業への情熱や思いをしっかりと持っていることと、それを自分の言葉で誠実に伝えられることを最も重視しました。その点で、後藤さんが印象的だったというのがまず一つ。さらに、後藤さんは先輩や家族など周りの人に対して、感謝の気持ちを持って農業に向き合っていると感じました。こうした姿勢や人柄は、きっと消費者の皆さんにも伝わるものだと思います。青年部の活動歴が浅いので、ひょっとするとまだ活動の全容が見えていない部分もあるかもしれませんが、“何かやってくれる”という期待感がすごくありました。
 

グランプリに選ばれた時の気持ちは、
いかがでしたか?

後藤: すごく驚きました。それと同時に、JA青年部で役職にさえついたことがない自分が、突然大役を任されて、果たしてやっていけるのだろうかという思いもよぎりました。全道青年部の代表ということは、地元の代表でもあるので、中途半端なことはできません。今は、やるからにはきちんと責任を持って、役目を果たしたいと思っています。
 

今後、純農Boyの活動や農業に、
どのように取り組んでいきたいですか?

後藤: 就農後すぐにコロナ禍になり、JA青年部活動を満足にできていないんです。まずは活動にしっかり取り組んで、地元に貢献したいです。それがちょっとずつつながっていけばいいのかなと思っています。
また、北海道の農業の大半は、1年1作です。「30年農業を続けても、30回しか収穫できない。だからこそ、毎年安定した収量と品質のものを作りたい」と話していた父の思いを受け継ぎ、1年1年真剣に取り組んで、父を超える農業をしていきたいです。
 

最後に、全国の北海道農業ファンの皆さんへ、
メッセージをお願いします。

稲村: まず、日頃から北海道の農業を応援してくださっている皆さまに、心から感謝を申し上げます。現在の世情を考えると、大変な思いをされている方も多くいらっしゃるだろうと思います。ただそれでも、食べることは楽しみなことであり、元気を作ることでもあります。私たちができるのは、おいしくて安全で安心な北海道の農畜産物をしっかりと作り続けて、全国の人々のお手元に届けることです。そのために私たちは頑張っていきますので、一緒に乗り越えていきましょう。
 
後藤: 昨年、僕らの地域では雨が極端に少なったため、じゃがいもや玉ねぎなどを中心に、苦労の多い一年を経験しました。地元はもちろんですが、全道の多くの農家さんは、毎年試行錯誤しながらプライドを持って生産されていると思います。コロナ禍でおうちにいる時間が増えている中で、皆さんにはおいしい北海道の農畜産物を使った料理を食べて、少しでも元気になっていただけたらうれしいです。