武藤 駿輔さん
(JAめむろ)
農家の時計

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今回の農家さん

「純農Boy北海道オーディション」 2022年グランプリ
武藤 駿輔さん(JAめむろ)

芽室町出身。帯広畜産大学を卒業後、農家の5代目として就農。小麦、加工用じゃがいも、大豆、小豆、てん菜などを栽培。2022年12月に開催された「純農Boy北海道オーディション」でグランプリを受賞。2023年3月に「JAめむろ青年部 営農部会」の部会長に就任。

「純農Boy」とは?

「純農Boy」とは、農業やJA青年部の活動に人一倍情熱を注ぎ、北海道のJA青年部の“顔”として、北海道農業の魅力を広く伝える若き生産者のこと。そのグランプリを選出するのが、北海道農協青年部協議会(JA道青協)が2013年から開催している「純農Boy北海道オーディション」です。全道12地区で代表者を選出し、面接とパフォーマンスの2つの審査を経て、グランプリを決定しています。審査基準は、農業への“情熱”と“個性”。グランプリ受賞者は、1年間、ラジオやテレビなどさまざまな場で、北海道農業のPR活動を行います。
 

■武藤さんの1日(4月下旬の一例です)

朝6時半から一日中、
トラクターでてん菜の種まき。

畑の雪が解ける4月は、種まきのシーズンです。武藤さんの畑では、4月下旬頃に行うてん菜の種まきを皮切りに、今シーズンの生産をスタート。実際に、種をまく日は天候次第だそうで、武藤さんは「土壌が湿っているとうまくいかないので、晴れの日が最適です。毎年この時期になると天気予報とにらめっこしています」と説明します。
作業の当日は、朝6 時半からトラクターを運転して種をまいていきます。2年前に、苗の植え付けから直(じか)まきに切り替えたという武藤さん。「苗の植え付けは、人数が必要な上、苗を運ぶのも重労働。1 週間はかかる作業でしたが、直まきにして2日間に短縮できました」と満足そうに話します。
直まき作業で気を使うのは種を埋める深さで、武藤さんはこまめにトラクターから降りては、土壌の状態を確認するそうです。「深すぎると芽が出にくくなり、浅すぎると風で飛ばされやすくなります。直まきを始めてまだ2年目なので、いろいろと試しながら技術を磨いているところです」
どんなに忙しくても18時過ぎには仕事を終わらせるのが、武藤さんのマイルール。「以前は夜遅くまで畑づくりをしていましたが、子どもが生まれてからは、家族との時間を優先するようになりました。できなかった分は、早起きしてカバーするようにしています」
 

消費者に近づいて、
国産の食への関心を高める活動をしたい

就農9年目で初めて「純農Boy北海道オーディション」に応募したという武藤さん。「これまでは自分には縁のないイベントだと感じていましたが、昨年、十勝地区の大会委員長を務めていた先輩から『JAめむろから参加者を出したい』と頼まれ、先輩の顔を立てたいと思ったんです」と応募の理由を話します。
審査では、生産者自らが発信力を高める必要性について持論を展開。「4年前にJA青年部の海外研修で訪れたフランスとオランダでは、食育やマルシェ(市場)が浸透していて、自国の農業や食に対する国民の意識の高さにカルチャーショックを受けました。そこで自分たちも消費者の皆さんにもっと近づいて、国産の食料への関心を高めるための活動をしていきたいという話をしました」
就農当時、「自分が作った農産物は出荷して終わりではなく、消費者の方に食べてもらって初めて意味がある。そのことを忘れずに農業を続けていこう」という誓いを立てた武藤さん。「僕が作っている作物は加工用の原料が多く、消費者の皆さんに直接届かないものもあります。それでも初心を忘れないために、実際に店頭に立って、消費者の皆さんを身近に感じることが大切だと考えています」
 

北海道の農業は、“人”が魅力

武藤さんに、北海道の農業の魅力について質問したところ、「僕は“人”だと思っています」と答えが返ってきました。「日本の食料基地として、農畜産物をたくさん作っているということではなく、たくさんのいいものを作ろうとしている人がいることが魅力だと思うんです」と力を込めます。
「特に十勝は、若い生産者がいっぱいいて、みんなが熱い思いや、誇りを持って農業をしています。その事実を、もっと多くの人に知ってもらうためにも、消費者の皆さんに理解してもらえる伝え方を学ばなければいけないと思っています。また、JA青年部の代表者という立場なので、農業の魅力を発信していくのはもちろん大事なことですが、消費者の皆さんと対話して感じたことを、青年部に還元することも大切だと考えています。代表者に選ばれたからには、自分にできることを精一杯やっていきたいです」
武藤さんは、9代目の「純農Boy」にして十勝初のグランプリ受賞者でもあります。「十勝には、僕以上に代表者にふさわしい生産者がたくさんいます」と武藤さん。
「このオーディションは、ほかの地域の生産者の活動や思いを聞ける貴重な機会です。参加者は、全道各地の代表者だけあって志の高い人ばかりで、彼らの話を聞くだけでも参加する価値があると感じています。地域の仲間には、オーディションに参加するメリットもしっかり伝えて、実力者をどんどん送り出したいです」と締めくくってくれました。