北海道南西部の太平洋側に位置する伊達市、室蘭市、登別市をエリアとするJA伊達市。北海道の他地域に比べ、気候が温暖で冬の積雪が少ないため、ほぼ一年を通してさまざまな野菜を出荷する道内では貴重な地域です。ブロッコリー、トマト、キャベツを三大作物とし、ほうれん草や水菜、かぼちゃ、スイートコーンなどバラエティに富んだ作物を栽培。温暖な気候を生かし、北海道の各地に先駆けて露地栽培の野菜を出荷しています。
JA伊達市の「キャベツ」は、身が締まったボール系と、ふんわりと柔らかいサワー系があり、出荷は5月から11月まで。中でも7月から9月に収穫するサワー系の6割は道外に出荷されています。
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中野 定徳さん(伊達市)
- 伊達市出身。畑作農家の6代目。都内の大学を卒業後、伊達市にUターンして就農。キャベツのほか、レタス、トマト、水菜、ほうれん草などを栽培。JA伊達市キャベツ・白菜部会部会長を務める。
JA伊達市の特産物
『キャベツ』とは?
■中野さんの1日(6月中旬の一例)
夏の作業は
日の出から日没まで
野菜農家の6代目として就農し、50年以上のキャリアを誇る中野さん。現在、畑7haとハウス16棟で、キャベツをはじめレタス、ブロッコリー、長ねぎ、水菜、白菜、ほうれん草、大玉トマトなどさまざまな野菜を栽培しています。普段は奥様と息子さん、従業員1名の総勢4名で作業を行っています。
多品目を栽培する中野さんの作業は、2月中の2週間を除き、ほぼ一年中続きます。中でも5月から11月までと収穫期間が長いキャベツは、例年2月下旬から3月上旬にハウスで種を蒔いて苗作りを開始。時期をずらして収穫するため、以降、9月まで10日ごとに種を蒔きます。最初のキャベツは4月上旬に畑に定植し、5月下旬に収穫。6月中旬から8月に収穫のピークを迎えます。6月は大玉トマトやレタス、ブロッコリーの収穫作業と重なるため、日が昇る3時半には起床し、日が暮れる19時頃まで作業が続きます。「JAのサポートがなければ大変ですよ」と中野さんが話すように、収穫時期になるとJA伊達市が契約するスタッフが各生産者を回って収穫作業をサポート。人手が足りないときは、職員も出動します。信頼できるスタッフにキャベツの収穫を任せている間、中野さんはそのほかの作物の収穫や苗の管理などに集中します。
年間出荷量は約50t。
夏は雨不足との戦いも
中野さんが出荷するキャベツは、年間約50t。キャベツ栽培で最も気を遣うポイントについて聞くと、「気候だね」と即答します。「雨が少ないと、『あんこが入る』といって、芯の部分が黒くなってしまうんです。雨不足が引き起こすカルシウム欠乏が原因ですが、これが入るともう出荷はできません」と、中野さんは眉をひそめます。もちろん、降水量が少ない盛夏にはそれを見越して土づくりを行いますが、「それでも天候のことは分からない」と中野さん。昨年は2割ほど出荷できない状況に。「農業は自然が相手だから、仕方ありません。試行錯誤しながら次はいいキャベツを目指すだけです」と、中野さんは明るく前を向きます。
高い技術力と肌感で
多品目を栽培
「伊達の農家はみんな、技術力が高い。だからいろんな品目を作ることができるんです」と中野さん。JA伊達市の生産者は、中野さんのように1軒で多くの品目を栽培するのが特徴です。中野さんが部会長を務めるキャベツ・白菜部会では、現在、64軒がボールキャベツを栽培し、30軒がサワーキャベツを栽培しています。「部会で連携は取っていますが、土壌が違うので、それぞれが自分の畑ではどうすれば良質なキャベツが育つのか研究しています。土地の特徴を肌で感じる力と、それを生かす高い技術力は、本当に尊敬に値しますよ」と、仲間を讃える中野さん。伊達市内だけでも、火山灰が多い土壌から粘土質の土壌まで土質もさまざまにあり、風通しの良い場所、気温の高い場所など気候も異なります。そこで、生産者のみなさんはそれぞれ自分の畑に合った栽培方法を見つけ、さらに技術を磨く努力を続けています。「父親から技術を盗むのに7年くらいはかかったかな」と笑う中野さん。苦労して培った技術を、今後は新規就農者にも広めていけたらという展望も抱いています。
ギュッと詰まったおいしさを食卓へ
中野さんたち生産者のみなさんが苦労して育てたキャベツ。そのおいしさを損なわずに消費者の元へ届けようと、JA伊達市では集荷場に予冷庫を完備しています。集荷したキャベツを一度、室温0℃の予冷庫に入れて芯まで冷やすことで、鮮度保持に取り組んでいます。またサワーキャベツは北海道の安全基準で生産された農作物に与えられる認証「YES! clean」を取得。7月〜9月まで、道外にも出荷されています。
「ボールキャベツは、ギュッと芯まで詰まってシャッキシャキ。サワーキャベツは柔らかくてふんわり。どちらも伊達のキャベツは甘さがピカイチです。全国のみなさんに食べていただきたいですね」と太鼓判を押す中野さん。最も好きなキャベツの食べ方をたずねると「やっぱり千切りですね。醤油をかけて豪快に食べるのが一番です。あとは浅漬けもおいしいですよね」と、ひときわ大きな笑顔を見せてくれました。