山田康生さん
(JA新はこだて)
農家の時計

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今回の農家さん

山田 康生さん(七飯町)
七飯(ななえ)町出身。稲作・花き栽培農家の3代目。道内の短大を卒業後、アメリカで2年間、花き栽培の農業研修を受ける。2006年に帰国し、22歳で就農。カーネーションのほか、アルストロメリア、トルコギキョウを栽培。2023年から七飯町花卉生産出荷組合カーネーション部会長。

JA新はこだての特産物
『カーネーション』とは?

JA新はこだては、北海道南西部の渡島半島に位置する2市12町をエリアとする広域JAです。北海道の中でも比較的温暖な気候に恵まれた地域で、米や野菜、果物、花きなどの栽培に加え、酪農や畜産も盛んです。特に七飯町を中心とする花き栽培は道内トップクラスの出荷量を誇り、代表品目のカーネーションは道内生産量の約8割を占めます。昨年は約750万本を全国に向けて出荷しました。
29戸からなる「七飯町花卉生産出荷組合」では、毎年、栽培に関する勉強会を開催し、品質向上に努めています。出荷時期は5月から12月まで。全国に向けて出荷されています。
 

■山田さんの1日(5月中旬の一例)

採花は気温の低い朝のうちに

山田さんは12棟のハウスで約20種類のカーネーションを育てています。切り花を収穫する採花作業は、山田さんのハウスでは例年6月から始まり11月下旬まで続きます。
「毎年、6月のブライダルシーズンから出荷が本格化します。そこに向けて、前年の12月にはハウスに定植し、1株から5本だけ仕立てるように調整を続けます。同じカーネーションでも、種類が違えば、育て方も変わります。そこが難しくもあり面白いところでもあります」と山田さん。
収穫を間近に控えた5月中旬は、水やりや防除など苗の管理が主な作業ですが、6月の出荷シーズンに入ると、毎朝5時半からハウスで採花し、どんなに忙しくても気温の低い午前中に終わらせるそうです。
「花が弱ってしまわないよう、切ったらすぐにバケツの水へ。その後、延命剤に漬けて、翌朝、JAの共選場に持って行きます」1本に複数の花が咲くスプレーカーネーションは開きかけのつぼみが1.5輪ほどになった時、1輪咲きのスタンダードカーネーションは5分咲きが採花の目安。咲きすぎた状態で採花すると日持ちが良くなく、出荷できないため、タイミングを逃さないよう毎日採花し、共選場の冷蔵庫に保管します。
 

苗から採花まで、
気を抜かずに手をかける

母の日に欠かせないカーネーション。色数も花の形もさまざまで、その種類は日本国内に流通しているだけでも約1,000種類はあると言われています。1輪でも存在感があり、花束にも必ずといっていいほど添えられているカーネーションは、1年を通して花屋さんの店頭に並びます。
日本国内でのカーネーションの栽培期間は「暖地型」と「高冷地型」の2つに分けられ、暖地型は関東以西の暖かい地域で6月に定植し、10月から5月まで出荷されます。一方、高冷地型で栽培しているのは長野県と北海道。真冬の12月に定植を開始し、暖地型と入れ替わるように5月から12月まで出荷されます。
 
山田さんのハウスでも、外気温が氷点下になる12月に定植し、暖房を使って室温を12℃程度に保ちながらゆっくり6月の出荷に向けてカーネーションを育てます。
「8月のお盆、9月のお彼岸と、カーネーションの需要が高まる時期に向けて、3月、4月、5月にもそれぞれ定植しています」と山田さん。そのため6月は採花と苗の管理、さらに出荷準備で大忙し。ピーク時の採花量は1日7,000本を超えるとあって、山田さんと奥様、山田さんのご両親にパートさん2人を加えた6人でも目が回るほどだとか。
「どんなに忙しくても、水やりや防除のタイミングを逃すと取り返しがつきません。カーネーションはつぼみも付かないうちから、出来映えが決まるんです。最後まで一度も気を抜けません」
 

最も美しい状態で
お届けするために

JA新はこだての七飯町花卉生産出荷組合では、花の日持ちや品質管理に関する認証制度「リレーフレッシュネス」を取得しています。これは、生産、流通、小売の各部門で、花の日持ち性向上のために、必要な対策を取っている場合にのみ与えられる認証で、20のチェック項目にパスしなければなりません。「採花は気温の低い時間に」「バケツの清潔度」「選花場の衛生管理」「ハサミの消毒」「採花から出荷までの時間」など、部門毎にさまざまな項目があり、生産者とJAが手を取り合うことが不可欠です。
 
「消費者のみなさんに一番美しい状態でお届けし、少しでもその姿を長く楽しんでもらいたいので、そのためにできることは何でもやろうという気持ちで、産地一丸となって取り組んでいます」と山田さん。
花屋さんの店頭に並ぶまでは、採花から約1週間。その後も1週間はきれいな花が見られるよう、産地での管理を徹底しています。
 

ハレの日だけでなく
日常にも花を

「もっと花を身近に」。そんな思いから、七飯町花卉生産出荷組合では、地域の子どもたちを対象としたフラワーアレンジメント体験会を開催しています。山田さん個人でも、毎年、近隣の保育園児を招待し、自分で摘んだ花にリボンをかけて家族にプレゼントしてもらうという企画を実施しています。
「子どもの頃から花に触れて、興味を持ってもらいたくて」と、はにかんだ笑顔を見せる山田さん。カーネーションは、子どもからお年寄りまで誰にとっても馴染みのある花。北海道で一番の産地を支えている誇りもあります。
山田さんは「花は空気を明るくしたり、見る人を癒やしたりする力があります。花を目にする機会は多くても、ご自分のために花を手にすることはそれほど多くないでしょう。ハレの日以外にも、ぜひ花を手に取っていただけるよう、これからもきれいな花を作っていきます」
夏から秋にかけて、日本の各地で出合うカーネーション。それはもしかすると、北海道から届いた1輪かもしれません。ぜひ手に取って、お部屋を彩ってください。