阿部 清さん
(JA道北なよろ)
農家の時計

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今回の農家さん

阿部 清さん(JA道北なよろ)
名寄(なよろ)市出身。農業系専門学校を卒業後、2005年に農家の三代目として就農。かぼちゃのほか、もち米や小麦を栽培。2020年より「JA道北なよろ南瓜部会」の副部会長を務めています。

JA道北なよろの特産物
『なよろかぼちゃ』とは?

JA道北なよろのある名寄市は、旭川市から北へ車で約1時間30分。名寄盆地の中央に位置しています。夏と冬の寒暖差は、約60度にもなるそう。季節を問わず昼夜の寒暖差が大きい気候も特徴です。
JA道北なよろでのかぼちゃ作りは、1967年に生産者6人が『えびす』を導入したことに始まります。その後、厳格な出荷基準と食味の良さで市場の信頼を築き、現在は約100戸の生産者が『えびす』のほか、早生品種の『味早太(あじそうた)』や『味平(あじへい)』、『ほっこりうらら』の4種類を栽培しています。これらはすべて『なよろかぼちゃ』というブランドで、例年8月中旬から10月下旬にかけて、主に道外に出荷されています。
 

■阿部さんの1日(8月上旬の一例です)

収穫作業は早朝を避け、
朝露が乾く9時頃から

かぼちゃの収穫開始は、朝9時から。その理由について、「朝露があるとかぼちゃが汚れやすいので、早朝はできるだけかぼちゃに触りません」と阿部さんは説明します。母親から口を酸っぱくして言われたのは、「かぼちゃをとにかく汚さない」。収穫時もかぼちゃを汚さないように、手ぬぐいでかぼちゃの土を拭いてからコンテナに詰めていきます。「かぼちゃの扱いは丁寧に、汚れた手でかぼちゃを触らないというのも、我が家のルールです」
収穫作業は、阿部さんの両親とアルバイトの力を借りて5人で行います。かぼちゃのヘタの部分が茶色いコルク状になったら、収穫のサイン。一つ一つ、専用の収穫バサミでヘタの付け根を切っていきます。「シーズンの初めは、かぼちゃを割ってみて中身の状態も確かめます。種の色が透明なうちは未熟なので、一層吟味します。部会でも、完熟したものを収穫しましょうとルールを決めています」

周りの生産者の話を聞き、研究しながら栽培

阿部さんのかぼちゃ畑は、林のそばにある見晴らしの良い場所にありました。阿部さんが毎年育てているのは、お盆前に収穫できる品種の『味早太』。さらに今年は、9月下旬に収穫できる『ほっこりうらら』と、試験品種の『プリメラクイーン』の栽培に初挑戦したそうです。
「毎年9月にはもち米の稲刈りが始まるので、栽培するかぼちゃはその前に収穫できる品種に限っていました。今年は、稲刈り後に収穫できる品種にも目を向けて、周りの生産者の話を聞き、収量を上げるために苗と苗の間隔を狭くするなど、やり方を変えて取り組んでいます。何が正解かわからないですが、研究することは楽しいです」
訪れた8月上旬は、最高気温が連日30度を超え、雨が降らない日々が続いていました。「ここまで雨が降らないことは、なかなか記憶にありません。こういう年こそ、安定して作物を供給することが一番大事なことだと身にしみて感じます。気候は今年に限らず、将来的に大きく変わっていく可能性もあります。今後はそうした時代に見合った栽培技術にも取り組まなければと考えています」

収穫後はすぐに出荷せず、
おいしさと保存性を高める

収穫後はすぐに出荷、ではなく、もう一仕事あるのがかぼちゃ作りの特徴です。収穫したばかりのかぼちゃは、ハウスに運んで陰干しし、表面を乾燥させます。
「この間に追熟するので、おいしさも増します。早生の品種は3日ぐらい、収穫時期が遅いかぼちゃになると日中の温度が低くなるので、1週間から10日程度。しっかり乾かすことで保存性も良くなります。道外に送り、その後家庭に届くまで品質を保つためにも大切な作業です」。その後、かぼちゃの土を落として1玉1玉磨きます。磨きすぎるとかぼちゃに傷がついていたみやすくなるため、最小限にしていますと阿部さんは話します。
阿部さんによると、『えびす』は関西、東海は『味平』など、地域によって人気の品種が異なるといい、かぼちゃは特に品種で選ぶ人が多い作物だと感じているそうです。
「市場から求められている以上は、産地としてかぼちゃの出荷量を維持していけるように、次の世代に働きかけていくことも自分の役目だと思っています。そのためにも、かぼちゃ作りをもっと研究して、収量を上げていく努力を続けていきたいです」と力強く語ってくれました。