種をつくる。種を届ける。
北海道の種づくりの流れと取り組み
私たちが普段口にしている農作物の生産に必要な種子の多くは、種苗メーカーなどの民間企業で生産しているものと、国または都道府県で生産しているものに大きく分けられます。
では、北海道が生産している農作物の種子は、どれぐらいあって、どのような流れで生産者のもとに届けられているのでしょうか。まずは、北海道の種子生産の先頭に立ち、その計画立案に携わる北海道農政部に、種子生産の基本的な流れと取り組みについて話を聞きました。
01 主要農作物の種づくりは、
最低でも4年かかります
優良な農作物は優良な種子から
北海道では、さまざまな農作物が生産されていますが、その中で基幹となる稲・大麦・小麦・大豆を「主要農作物」と位置付けています。主要農作物を安定的に生産するためには、毎年大量の種子が必要となり、種子の安定供給が不可欠です。そこで北海道では、道内で普及すべき、「優良品種」として認定した主要農作物の種子の生産を行っています。
優良品種に認定された主要農作物は、品種ごとの作付面積などを定める種子計画のもと、種づくりが始まります。育種家種子の生産に1年、その後、原原種、原種、採種のステップでそれぞれ1年かけて種子を増やしていきます。原原種、原種、採種の3段階を踏むことで、遺伝的な純度(ほかの品種が混入していないなど)を守りながら、計画的に必要量を確保します。つまり、種子が生産者のもとに届くまでに、最低でも4年もの年月がかかっていることになります。
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北海道が所有している原原種の種子。天候不順や災害などにより収量が不足する事態に備えて、備蓄しています
02 種いもの栽培方法や出荷条件は、
法律で厳格に定められています
北海道は種いもの生産も全国屈指
じゃがいもは、〝種いも〟を増やして栽培する作物です。種いもは優良品種や地域在来品種等に認定された後、基本種を原原種、原種、採種と3年かけて増殖し、生産者のもとヘ届けられます。
じゃがいもは病気や害虫に弱く、種いもがウイルス病などに感染していると、収量が激減するなど大きな被害をもたらします。そのため、種いもの生産には、毎年、「植物防疫法」に基づく検査が義務付けられています。
じゃがいもの主産地である北海道は、種いもの原種ほ場と採種ほ場の全国シェアが9割以上を誇ります。北海道では、「北海道種馬鈴しょ生産販売取締条例」を制定し、種いも生産者と販売者を登録制にして、種いもの安定的な供給に努めています。中でも生産者は、種いもの栽培については、基本3年以上の経験者とするなどの条件を細かく定めており、良質な種いもの生産を進めています。
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■東北 ■中国 ■九州
※農林水産省「2021年 植物検疫統計」のデータをもとに作成
※原種ほ場面積の円グラフでは、シェアが1%未満の中部地方の表示を割愛しています
03 毎年審査を実施して、
種子の品質を維持しています
合格した種子だけを生産者に供給
北海道では、種子の品質を確保するために、主要農作物などの原原種栽培管理基準、原種・採種ほ場の設置と栽培管理基準を定めています。
「輪作」体系を守ったほ場での栽培も管理基準の一つです。輪作は、一つの作物を同じ畑で連続して栽培せず、じゃがいも、小麦、てん菜、豆類などを1年ごとに畑をかえて植えていく方法です。そうすることで、土の栄養バランスが偏らず、作物の病害虫の予防にもつながります。種づくりも同じで、輪作を行うことで安定的に生産することができます。さらに、ほ場間の距離や配置などを細かく定めることで、混種を防いでいます。
生産者は、細かな基準に沿って種子を生産し、北海道は各種子の原原種、原種、採種の栽培時に生育状況や成熟状況などを審査する「ほ場審査」や発芽の良否や不良な種子、異物の混入状況などを審査する「生産物審査」を実施。これらに合格した種子が次の段階の種子ほ場や生産者に供給されます。
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生産物審査の一つが、種の発芽率。作物ごとに基準が異なり、稲は9割以上発芽しなければ、合格できません
04 北海道が管理することで、
種子供給の安定化につなげています
農業生産の安心の種に
種子は、供給の過不足がその年の生産量に直結し、品質の良し悪しは農作物の生産性や品質に大きく影響します。特に道内で生産される主要農作物は、作付面積が大きく、一年で一作しか生産できないことから、毎年、必要量の優良な種子を確保することがとても重要です。
北海道では、「北海道主要農作物等の種子の生産に関する条例」や「北海道種馬鈴しょ生産販売取締条例」に基づき、種子の安定的な生産・供給と食の安全の確保に努めています。
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北海道農政部生産振興局 農産振興課
(右)てん菜馬鈴しょ係 主任 阿部 凌さん
(左)調整係 主事 北平 菜々子さん