種をつくる。種を届ける。
種づくり〜原種・採種〜
── 種いもの場合 ──
北海道は日本一のじゃがいも産地として広く知られていますが、種いもの産地であることは、あまり知られていません。
種いもは、一般的に更新用と呼ばれ、道内で流通するものと、移出用と呼ばれ、道外に出荷されるものに分けられています。
そこで、種いも生産者に話を聞くために、1947年から種いもを生産・販売し、移出用の種いもの生産量で日本一を誇るJAそらち南を訪ねました。
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種をつくる。種を届ける。
北海道は日本一のじゃがいも産地として広く知られていますが、種いもの産地であることは、あまり知られていません。
種いもは、一般的に更新用と呼ばれ、道内で流通するものと、移出用と呼ばれ、道外に出荷されるものに分けられています。
そこで、種いも生産者に話を聞くために、1947年から種いもを生産・販売し、移出用の種いもの生産量で日本一を誇るJAそらち南を訪ねました。
札幌市近郊に位置する由仁町と、栗山町の生産者で組織されるJAそらち南。種いもの生産量の約4分の1を占めるという九州地方向けの『ニシユタカ』をはじめ、令和4年度は11品種を生産し、約8割を道外へ出荷しています。
「出荷先は、東北から九州まで、日本全国に及びます。産地間の交流の歴史は古く、私の父の時代から続いています」
そう説明するのは、種いも(原種・採種)生産歴45年以上という日置正敏さん。「交流のある県の生産者から、うちの種いもは品質も収量性も高いと評価をいただいています」と生産歴38年の鷹修さんは笑顔で話します。
JAそらち南 種馬鈴しょ協議会
(右)会長 日置 正敏さん
(左)副会長 鷹 修さん
種いもの生産は、病気のない健全な種いもを出荷することが最重要課題です。病気にかかったじゃがいもを種いもとして使うと、収量や品質が大きく低下してしまうため、種いもの生育期間中は、畑でのウイルスや細菌などが付いている株の抜き取りが欠かせません。
植え付けは例年4月末、収穫はお盆明けから9月にかけて行われ、その間、ウイルスが発生する可能性は常にあるそうです。「何度も何度も畑に入り、自分の目ですべての株を確認して、わずかでも異常のあるものは抜いていきます。太陽が高い時間帯は、病株の葉を見分ける作業には向かず、夕方の限られた時間の中で、毎日少しずつやっていかなければなりません。食用の生産ではここまでやらないので、ほかの作物になかなか手が回らなくなるんです」と鷹さん。「抜き取りは労力がかかるだけでなく、45年以上やっていても、病株を見分けるのは難しいと感じるほど難易度の高い作業なんです」と日置さんは補足します。
「合格証票」は、国が認定した安全の証し。品種、栽培地、生産者名などが明記されています
近年は、そうした種いもならではの栽培管理の難しさから、ほかの作物は続けられても、種いもの生産は続けられないという人も増えてきているそうです。その結果、同JAでは種いも生産者一人当たりの作付面積と、作付する品種の数が増加する傾向にあるといいます。日置さんの畑でも拡大を続け、現在は約18haもの畑を、3軒の種いも生産者と共同で管理しています。
「私の畑ももちろんですが、畑の大きさにかかわらず、それぞれの種いも生産者の畑に定期的に集まって、みんなで協力して抜き取りを行っています。複数の目で株を確認することで、見落とし防止を徹底しています」
国が行う種いもの検査は、毎年、栽培前と栽培期間中、収穫後の3段階で最大5回にわたって行われます。検査に合格しなければ、種いもとして出荷することはできません。
「地域全体で見たときに、病気の株の割合が多いと、その地域では種いもの生産ができなくなってしまうため、プレッシャーは大きいです。その割に、地味で日の当たらない仕事なので、就農当時は種いもをつくりたくないと思ったこともありました。今では技術もついて、種いもが一番の主力です。よその人よりもいい成績を残したいという思いでここまで続けてきました」と鷹さん。
「生産者向けの種だからこそ、病気のいもを渡すことは許されないという思いが一番強いです。全国で待っている生産者の皆さんのためにも、産地を守っていきたいです」と日置さんは話しました。