種をつくる。種を届ける。
種づくり〜原原種〜
── 稲の場合 ──
『ホクレン滝川種苗生産センター』は、北海道から原原種生産の委託を受けて、民間では全国で初めて1991年に原原種センターを開設。95年から本格生産を行っています。原原種センターでは、稲・麦類・大豆の主要農作物と小豆・いんげん・えんどうの原原種生産を手がけています。ここでは、稲の生産を中心に話を聞きました。
MENU
種をつくる。種を届ける。
『ホクレン滝川種苗生産センター』は、北海道から原原種生産の委託を受けて、民間では全国で初めて1991年に原原種センターを開設。95年から本格生産を行っています。原原種センターでは、稲・麦類・大豆の主要農作物と小豆・いんげん・えんどうの原原種生産を手がけています。ここでは、稲の生産を中心に話を聞きました。
「種子生産の上流に当たる原原種の生産は、品質と必要な量の確保が使命です。その責務をホクレンが担っています」
そう話すのは、生産課長(取材当時)の髙橋仁さん。同センターで扱う原原種は、稲だけでうるち米、もち米、酒造好適米(酒米)、飼料用米を合わせて20品種。その生産は、北海道が定めた原原種栽培管理基準を厳格に守り、品種特性が均質で、高品質であることを目標にしています。髙橋さんは「簡潔に言うと、品種特性以外の個性は、種には不要なんです」と言い切ります。
「北海道の審査に合格する種をつくるためには、決められた栽培方法を守ることが絶対で、その上で品質のばらつきがないことが求められます。皆さんがご存じの『ゆめぴりか』を例にすると、いつ、どこで食べても、同じ『ゆめぴりか』であることが種づくりでは大前提。地域性が出てくるのは、それから先の話になります」
ホクレン滝川種苗生産センター
生産課長 髙橋 仁さん
※取材当時
一般的な米作りは、収穫量を上げるために1つのポットに複数の種をまいて苗を育てます。一方、原原種の生産では、病気や異なる品種を発見しやすくするため、一粒の種をまき、一本苗で栽培します。
種子の純度を保つため、自然交雑の予防も徹底的に行い、異なる品種を栽培する際は、田んぼ自体の距離を十分に取り、田んぼの外周2列以上は原原種として使用しません。生育中はほぼ毎日、生育状況を確認して、頻繁に田んぼに入り、異型の可能性がある株は確実に抜き取りをするなど、ルールに則って作業を行います。
「落穂拾い」も、異品種混入のリスクを軽減するための大切な作業の一つです。収穫が終わった田んぼの中で、端から端まで目を凝らしながら腰をかがめて散らばっている穂を拾い集めます。
「前年と異なる品種を栽培する田んぼもあり、その際、前年の脱粒が発芽する野良生えが発生する可能性があります。もちろん、生えてきたものは、徹底的に抜き取ります。どうしてそこまでするのかというと、原原種は採種までに約1万倍以上増殖するからです。原原種に一粒でも異質なものが混ざっていると、純度が大幅に落ちてしまいます」
収穫した種子は、比重選別機などを使って、中身が充実した種子のみを選別。髙橋さんによると、例年、収穫した量の半分程度しか種子にならないと話します。
田植え後の補植作業の様子。補植とは、田植え機が植えそこなった部分などに、苗を植える作業です
「種づくりは、採種まで含めて責任を持つことが仕事です。おそらく育種家種子の生産現場でも同様の話をしていたと思いますが、本当に一粒たりとも悪い種は出さないという思いは共通です。種をつくる人はきっと誰でも、プライドをかけて生産していると思います」
最終的に種子の量は、米の生産量に直結するため、種が少ないと数年後に計画していた作付面積をまかなえなくなります。髙橋さんは委託での生産といえども、一年一作の中で緊張感を持って取り組んでいるといいます。
「原種、採種、そして一般に流通するお米を生産していただく生産者に対し、間違いのない安全な原原種を渡して、安心して生産してもらうこと。そして、食べていただく方に、いつも通りのおいしいお米を食べて笑顔になっていただくことが、種子生産の役割だと考えています」と締めくくってくれました。