夏こそ食べたい! 北海道産トマト。
「食味の良さは、トップクラスだと自負しています」
生産量北海道一のミニトマト産地
北海道南西部、積丹半島の付け根に位置し、フルーツのまちとして名高い仁木町。同町で、50年以上もの間トマト作りに取り組んできたのが、「JA新おたる仁木町トマト生産組合」です。道内のミニトマト栽培の先駆け的存在で、生産量は全道一。さらに、夏秋期では全国でもトップクラスの産地です。
同組合が生産するミニトマトは、糖度が8度以上と、甘みが強いのが特徴。赤いミニトマトは、〈もてもてネ〉、黄色には〈もてもてキッキ〉というユニークな名前をつけてブランド化し、例年6月下旬から11月上旬の間、全量を道外へ出荷しています。
「私たちの組合は、北海道産の作物といえば、じゃがいもと玉ねぎしか知られていないような時代から、道産トマトの販路を全国へ拡大してきました。全国屈指の産地になれたのは、先達が確立した栽培技術の賜物です。日本でも有数の食味の良さを誇る生産組織だと自負しています」
このように話すのは、町内の68戸のミニトマト生産者を束ねる兼重さん。就農時から25年以上トマトを生産し、今年から作物をミニトマトに一本化しました。『キャロルスター』『キャロル7』など3品種を33棟のハウスで栽培しています。
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(上)「余市側から吹く海風がまさに自然のクーラーで、真夏でも涼しいのでトマトの栽培には最適です」と兼重さん
(下)施設の集出荷ラインは、ほぼ自動化。1日に約47tの処理が可能です
糖度8度以上の完熟の状態で収穫
同組合では、量よりも質を重視したミニトマト作りに取り組んでいます。栽培品種だけでなく使用する肥料なども統一。温度や湿度、ハウス内の空気対流までデータを蓄積し、それらをもとに独自の栽培基準を定めています。
『キャロル7』は、ブランドを代表する高糖度品種で、果皮がやわらかく、食味の良さで圧倒的な人気を誇ります。しかしながら、病気に弱く、高度な栽培技術が求められる難しい品種でもあるため、生産する産地は多くないと兼重さんはいいます。
「『キャロル7』は手間がかかる上、一般的なミニトマトの半分程度しか収穫できません。それでもこの町で作り続ける人が多いのは、生産者としてのプライドと、消費者の皆さんに喜ばれるのがうれしいからだと思っています。栽培開始から30年が経ちますが、いまだにファンが離れません」
兼重さんのハウスでは、兼重さん夫婦のほか、パートスタッフなど最大9人で作業を行っています。「ほかの作物に比べ、ミニトマト作りでは、多くの女性が活躍しています」と兼重さん。「見極めが難しい異形株の選別などは、奥さんの担当です。自分一人ではできない作業も多く、男が威張っていると、うまくいきません」と笑顔を見せます。
一般的に生食用のトマトは、完熟する前に収穫し、産地から店頭に並ぶまでの間に追熟させますが、同組合では完熟後の収穫を徹底しています。
「収穫の目安は、糖度です。糖度計で8度以上あるものを一つひとつ手でもぎとります。最高においしい状態で収穫することが、私たちのポリシーです」と兼重さんは説明します。
2018年から稼働するミニトマト集出荷貯蔵施設では、色やサイズを測定する外部センサーと、糖度やリコペンの含有量まで測定できる内部センサーを備えた選果機を導入しています。これにより、規格や品質が均一化し、選果作業に割かれていた人手や時間を、栽培管理や収穫作業に振り分けることができるようになりました。
「導入前は、最盛期の8月ともなると選果作業が深夜に及ぶことも珍しくありませんでした。今は、高リコペントマトなど、付加価値の高い商品を売り出したいと企画しているところです」
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最終的に、生産者名や品種、等級などの情報が印字され、トレーサビリティ(生産履歴の管理と追跡)にも対応
- 『ミニトマト』生産者 兼重 隆幸さん[ JA新おたる ]
仁木町出身。専門学校を卒業後、札幌市内の一般企業に就職。23歳で地元に戻り、四代目として就農。2018年より「JA新おたる仁木町トマト生産組合」の組合長理事として活躍。