こんにちは。さっそくですが、遠別町の紹介からお願いできますか。
はい、わかりました。遠別町は、日本最北端の稚内市から車で1時間30分ほど南下した、日本海に面した町です。日本最北の米どころで、良質なもち米の産地として知られているんですよ。メロンも特産品です。
遠別農業高校の生徒さんは、町外出身者が少なくないそうですね。みなさんは、なぜ、この高校を志望したんですか。
農業の基礎を学べること、自分たちで作物を作り、販売できることなど、実践的な勉強ができそうだと思いました。

授業の一環として、分野別に5つの分会があり、作物分会は「花だんご班」と「さつまいも班」に分かれると聞きました。みなさんは、どうして「花だんご班」を選んだんですか。
和菓子作りに興味があって、しかも、町の伝統を受け継ぐことにもつながる点がいいなと思いました。「花だんご」は、すごくきれいな和菓子なんです。私たちが作った「花だんご」の写真がありますから、見てください。

おもちに花が咲いているようで、かわいらしくて、色もきれいですね。

遠別町ではむかしから米づくりが盛んですが、高齢化に伴って米農家さんが減っているんです。それを黙って見ていられないと、1997年にJAオロロン女性部遠別支部花だんごサークル「花の里」(現在のJAるもい)が結成され、遠別産のもち米の良さを知ってもらうために、「花だんご」を考案したと聞いています。「花だんご」が誕生したのは翌年の1998年で、私たちが産まれる前のことです。
そういう歴史があるんですね。
ただ、2019年、「花の里」のみなさんの平均年齢が84歳になり、担い手もいないことから、「花だんご」は生産を終了するしかなくなりました。その情報を聞いて、引き継がれてきた伝統の灯火を消してはいけない!と、2021年から遠別農業高校で「花だんご」継承の活動を行うことになったんです。初年度は、「伝統技術の習得と記録」をテーマに、「花の里」関係者の方に指導を受けました。
「花だんご」の作り方を教えてください。
うるち米ともち米を粉末にして砂糖、湯を合わせ、一晩寝かせます。翌日、さらにお湯を加えながら生地をひとかたまりにし、好きな大きさに切って蒸したら完成です。ちなみに、私たちは、校内の水田で愛情をもって栽培したもち米を使いました。

花の絵はどのようにして作るんですか。
色の異なる生地を数種類用意して、断面が花の絵になるように配置して、太巻きづくりの要領でぐるっと巻きます。金太郎あめを作るのと同じ要領です。柄の入れ方は、「花の里」の方に教えていただき、修得することができました。

最初からうまくできましたか。
食感と舌触りには、苦戦しました。自分たちで言うのもなんですが、第一号はびっくりするほど固く、おいしくなくて(苦笑)。担当の須田先生の感想が辛辣だったことが、今年の活動で一番印象に残っているねと話しているほどです。

原因はなんだったんでしょう。
固さは、蒸す前の生地に加える水の量と、生地をこねる時間が足りないことが原因でした。舌触りは、粉のキメのせいではないかという仮説を立て、3種類の細かさで検証したところ、粉が細かければ細かいほど、舌触りが良くなることがわかりました。

何度も試作を繰り返したんですね。
改良を何度も重ねた「花だんご」を試食していただいた町のもち米農家さんたちから、「懐かしい味がする。また食べることができてうれしい」という激励の言葉をもらえて、ほんとうにうれしかったです。作り方が詳しく定められていないからこそ、再現することは簡単ではありませんでした。この経験から、「花だんご」を作ってきた方々の努力、見えない技を感じました。

「花の里」のみなさんも喜ばれたでしょうね。
みなさんの姿や言葉から、「自分の好きなことは、いくつになっても続けられる」ということも教わりました。また、この活動の発表で、全道実績発表大会に出場することもできました。2年目は新しい味付けや製法を研究します。ゆくゆくは、後輩たちに商品化まで進めてほしいです。

米づくりから「花だんご」づくりまでを実践したいま、農業に対する想いを聞かせてください。
将来、農業を担っていくのは若い人たちです。私たちの活動を通して、「農業は大変」という印象が少しでも変わったらうれしいです。また、AIを上手に活用していくことも、農業の発展には大切だと感じています。
みなさんが作った「花だんご」を食べられる機会があることを願っています。ありがとうございました。