Vol.30
北海道旭川
農業高等学校
紅露 恋菜さん

わたし × 農業

私が農業に恋した理由
北海道の高校、専門学校、短大、
大学では、たくさんの学生さんが
農業を学んでいます。
農業のどんなところが魅力?
学んでみて知った醍醐味は?
好きだけど大変と感じることは?
青春ど真ん中の日々での実感、
将来の夢などを聞いていきます。

北海道旭川農業高等学校

北海道旭川農業高等学校 紅露 恋菜さん

令和5年に100周年を迎える北海道旭川農業高等学校は、農業科学科・食品科学科・森林科学科・生活科学科からなり、校訓の「誠実 勤労 剛健」を大切にした実学を重視しています。1年生では農業の基礎知識を学び、基礎管理実習を体験し、2・3年生からは少人数の班ごとに自ら決めたテーマを追求。未来の自分づくりと地域を拓く能力を身に付けています。

北海道旭川農業高等学校
079-8431 旭川市永山町14丁目153番地
http://www.kyokuno.hokkaido-c.ed.jp/
TEL:0166-48-2887

  • 紅露 恋菜さん

    紅露 恋菜さん

  • GREEN編集室

    GREEN編集室

GREEN編集部 紅露さんは、旭川農業高校農業科学科水稲専攻班の班長であり、「旭農高日本酒プロジェクト」のプロジェクトリーダーです。まず、プロジェクトについて説明してもらえますか。

紅露 恋菜さん 私たち水稲専攻班と、地元・旭川で百年以上の歴史を持つ高砂酒造さん、地域農業団体や関連企業のみなさんとでタッグを組んだプロジェクトです。校内の水田で育てた北海道の酒米「きたしずく」を原料に、日本酒文化の継承や地域農業のさらなる魅力向上を目的に日本酒を醸造しました。

GREEN編集部 日本酒を造るという話を初めて聞いたとき、どう思いましたか。

紅露 恋菜さん このようなことはなかなか経験できるものではないので、すごく興味を持ち、リーダーに立候補しました。当然、日本酒を飲んだことはなく、味を知らないので不安もありましたが、私たちが造った日本酒をたくさんの人が飲んでくれることを想像すると、とても楽しみで、頑張りたいと思いました。

GREEN編集部 「きたしずく」について、紹介をお願いします。

紅露 恋菜さん 「きたしずく」は、寒さに強い品種で、雑味が少なく、やわらかい味が特徴です。高校では、「ゆめぴりか」や「ななつぼし」も栽培していて、毎年一等米を獲得しています。「きたしずく」も目指すは一等米!とみんなで一致団結しました。

GREEN編集部 一等米とは、国が認める農産物検査官が目視で検査して、色が付いたお米が千粒に一粒以下でないと認められないほど、品質の高いお米ですね。

紅露 恋菜さん 一等米を作るには正確なデータが必要なので、班を分割していろいろな区間の生育調査を行いました。昨年は例年にない猛暑だったので、生育管理や炎天下での作業は大変でした。

GREEN編集部 旭川は盆地ですから、夏の暑さは厳しそうですね。

紅露 恋菜さん そうなんです。専攻班を指導してくださっている相馬宏顕先生は、「おいしく育てる一番のコツは、愛情を注ぐこと」と、よくおっしゃいます。確かに、愛情を注ぐことでいろいろなことに気が付き、気が付いたことは実行したくなることを実感しました。昨年、丹精込めて私たちが育てた「きたしずく」も、一等米を獲得できたんですよ!

GREEN編集部 おめでとうございます!頑張った甲斐がありましたね。いい原料ができたところで、さあ、いよいよ醸造です。

紅露 恋菜さん 高砂酒造さんが醸造をしてくださり、私たちは酒蔵におじゃまして醸造工程の見学や、もろみ造り作業、商品のラベル貼りなどを体験させていただきました。そうした場面で、目上の方との接し方やコミュニケーションの取り方も改めて学ぶことができました。

GREEN編集部 ネーミングやラベルデザインは、専攻班のみなさんが担当したそうですね。

紅露 恋菜さん はい。ネーミングは、すごく悩みました。漢字一文字にしようということで、専攻班のみんながいろいろな思いを込めて案を持ち寄り、最終的には旭川の特産品に育ってほしいとの願いから、「兆(きざし)」に決めました。ラベルには、牛と豚がお酒を持っているイラストが背景に描かれているのですが、これは私が考えたもので、採用されてうれしかったです。

GREEN編集部 「兆」は、どのようなお酒に仕上がりましたか。

紅露 恋菜さん 純米酒で度数は15%。私たちはまだ飲めないので、高砂酒造さんに尋ねたところ、「まろやかで旨みのある味わいに酸が立ち、スッキリとキレの良い飲み口」だそうです。私が20歳になった時、このプロジェクトを一番に応援してくれたおじいちゃんと、この活動のことを思い出しながら、一緒に味わいたいです。

GREEN編集部 このプロジェクトを振り返って、いま、どのようなことを感じていますか。

紅露 恋菜さん 初めてのことでも、頑張った分だけ結果が出ることを経験でき、自信になりました。積極的に行動することや、理解して物事に取り組むことの大切さ、そこから生まれる責任感も実感できましたし、数多くのメディアの前で私たちの思いを話させてもらえたことも印象に残っています。

GREEN編集部 農業と向き合い続けた高校生活もあと半年ですね。紅露さんには、どんな収穫がありましたか。

紅露 恋菜さん 農作物を一から育て、その成長を日々感じ取ってきたことは、私自身を成長させることにもつながったと思います。農業は、そうしたところも魅力です。私たちが大事に育てた農作物を喜んで食べていただけたこともうれしかったですし、やりがいも感じました。

GREEN編集部 充実した3年間が醸した「兆」を開封する日が楽しみですね。今日はありがとうございました。