Vol.36
北海道更別
農業高等学校
前田 陸久さん
遊佐 来夢さん

わたし × 農業

私が農業に恋した理由
北海道の高校、専門学校、短大、
大学では、たくさんの学生さんが
農業を学んでいます。
農業のどんなところが魅力?
学んでみて知った醍醐味は?
好きだけど大変と感じることは?
青春ど真ん中の日々での実感、
将来の夢などを聞いていきます。

北海道更別農業高等学校

北海道更別農業高等学校 前田 陸久さん、遊佐 来夢さん

1952年、南十勝唯一の農業高校として開校。農業科と生活科学科の両学科には、生徒が興味や希望進路に合わせて選択できる2コースがあり、校内には農業実習施設や圃場などを完備。全生徒90人に対して30人の教職員が、日常的な学びから、地元企業と連携しながら栽培管理・製品開発などを行うSP(スクールプロジェクト)活動まで手厚くサポートしています。

北海道更別農業高等学校
089-1501 更別村字更別基線95
http://www.sarabetsunougyou.hokkaido-c.ed.jp/
TEL:0155-52-2362

  • 前田さん

    前田さん

  • 遊佐さん

    遊佐さん

  • GREEN編集室

    GREEN編集室

GREEN編集部 こんにちは。お二人は、更別農業高等学校の3年生で、昨年からSP(スクールプロジェクト)学習のプロジェクトの1つ「加工分会A」で「ナタ菌」の研究をしていると聞きました。「ナタ菌」って、どういう菌なのですか。

前田さん 寒天やゼリーのようなナタデココってありますよね。原料はココナッツの果汁なのですが、「ナタ菌」によって発酵させると、あのように固まるんです。種類としては、酢酸菌の一種です。加工分会Aのみんなでまじめに、楽しく、研究しています。

GREEN編集部 更別農業高校で、「ナタ菌」の研究を始めたのはいつですか。

遊佐さん 2016年に酢の研究を始めたところ、クラゲのような厚い膜ができるなどして、酢酸の発酵に失敗したそうです。その現象を聞いた学外の専門家が、厚い膜はナタデココで、失敗の原因は「ナタ菌」ではないかと指摘したことから、「ナタ菌」の研究が始まったと聞いています。

GREEN編集部 「ナタ菌」が、更別農業高校近辺に存在していたということですか? 

前田さん はい。温暖な東南アジアで採取されることが多い「ナタ菌」がここでみつかった理由については、加工分会Aをとりまとめる菊池直樹先生も断定できていないようです。地球温暖化の影響で生態系が崩れていることも関係あるのでは、とお話されています。

GREEN編集部 偶然であれ、お宝級の発見があったわけですね。

遊佐さん それを機に、校内の畑などで「ナタ菌」の採取や培養を試みたようです。2021年にそれらしき菌がみつかり、調べたところ「ナタ菌」であることが確認され、先輩たちはその菌を「SARANATA菌」と名付けました。私たちも8カ所の土壌から採取した「ナタ菌」の繁殖力を調べるなど、研究を深めています。

前田さん 私たちは、この菌を死滅させないために、1カ月に1回培養をしています。私達の先輩が発見し、先輩から受け継いだ菌ですから、責任も重大です。

GREEN編集部 加工分会Aでは、「SARANATA菌」でナタデココも作っているそうですね。

遊佐さん はい。私は、そこに魅力を感じてこの班に参加し、昨年はみんなで「サラコッタ」というスイーツを開発しました。十勝産の牛乳と、「SARANATA菌」で製造したナタデココ入りのパンナコッタで、更別村の特産であるすももを使ったソースをかけています。私はソースづくりを担当したのですが、パンナコッタの味とソースの甘さのバランスが本当に難しかったです。

前田さん 私は、外部の企業様や研究機関との試食会などでいただいたアドバイスやご意見を記録したり、遊佐くんたちが苦労して完成させたレシピの配合割合をまとめたり、データの整理に取り組みました。

GREEN編集部 販売会の会場に立って、「サラコッタ」の販売もされたようですね。

前田さん 私は、2023年2月、札幌市での販売会に参加しました。北海道の品々を選りすぐったセレクトショップが会場で、一日目は7時間で約300個を販売することができました。お客様から、「違うソースのものもあると良い」などのご意見をいただき、シリーズ化が必要だと感じました。また、ショップの担当の方から、十勝から来た高校生が販売することでお店が明るくなったなどのお言葉をいただき、とてもうれしかったです。

遊佐さん 私は加工分会Bの2人と一緒に、2023年4月に大阪市の百貨店での販売会に参加しました。北海道の牛乳を使った商品というだけで評価がとても高く、改めて北海道の農畜産物のすごさを実感しました。また、どのお客様も優しく、私の商品説明を真剣に聞いてくださいました。自分たちの商品が大阪でも通用することがわかり、自信につながりました。要冷蔵のものよりも常温で保存できるものが売れることがわかりましたので、今後の商品開発に生かしたいと思います。

GREEN編集部 商品を開発してみて、どんな発見や気持ちの変化がありましたか。

前田さん 「SARANATA菌」は固いナタデココができるのですが、2016年に発見した菌で作ったナタデココはやわらかかったそうです。菌によってこんなに違いがあるのかと驚きの連続でした。また、更別村は豆の生産も盛んです。私たちの手で、村の財産を新たに加工、製品化して、付加価値を付けていきたいと思うようになりました。

遊佐さん 現在、牛乳の消費量が減少しています。私は、牛乳の付加価値を少しでも高めたいと、牛乳を用いたパンナコッタを開発しました。今年は、ナタデココ入りのお汁粉、あんみつの試作をしているのですが、やはり、味全体のバランスが難しく、悩みながら挑戦しています。
たくさんの経験を通じて、北海道のおいしい農畜産物にもっと付加価値を付ける研究を進めていくことが大事だと感じています。

GREEN編集部 たくさんの収穫があった更別農業高校での3年間を、一言で表すとしたらどんな言葉になりますか。

前田さん 奇想天外です。高校進学時から食品加工に興味があったのですが、まさか、自然界からナタデココ菌を発見し、新しいスイーツを販売できるまでになるとは、想像すらしていませんでした。

遊佐さん 飛躍です。農業や加工の授業を通して、大阪での販売会に参加できるまで成長できたと思います。

GREEN編集部 貴重な経験がいっぱいの高校生活ですね。これからも、のびのびと自分らしく頑張ってください。ありがとうございました。