川村さんは、遠別町から車で約1時間40分ほどの留萌市の出身だそうですね。なぜ、遠別農業高校に進学したのですか。
私は食べることが好きで、自分が食べている食品がどのように作られているかを知りたいと思っていたところ、遠別農業高校では食品について化学的に学べるとわかり、進学を決めました。授業では体験学習が多く、食品製造工程や加工法などを自分の目で見て、知ることができます。体験学習は、教科書や人からの話だけではピンとこないことも、実際に自分がやってみると理解できて面白いですし、とても魅力的です。
遠別農業高校では、1年生の授業で羊の飼育も行っていますね。その様子を簡単に教えてもらえますか。
学校の敷地内に羊舎と、羊を放せるパドックがあり、そこで顔と四肢が黒い希少品種、サフォーク種を飼育しています。羊が食べる牧草を一生懸命に運んだときの汗は忘れられません。その時の苦労があるから、羊肉を扱うときは丁寧にしなければという思いが強まりました。
2年生になると、羊の世話はなくなるんですか?
2、3年生では、「プロジェクト学習」といって、一人ひとりが興味のある分野を選ぶ分会に所属し、羊の飼育は畜産分会が担当します。私は「プロジェクト学習」では乳肉加工分会に所属し、2年の時は羊の肉を使用した肉味噌を開発しました。
羊の肉で作る肉味噌とは、珍しいですね。
羊肉の独特な風味を苦手とする消費者が多いと考え、風味をうまく打ち消してくれる味噌を利用し、貯蔵性を持たせた加工品にしようと考えました。味噌と合わせると、臭みはほとんど感じなくなります。また、肉味噌にすると、さまざまな食品と組み合わせて加工できるところが面白いです。
最初からうまく作ることができたのですか。
羊肉は他の肉に比べてヘルシーと言われているものの、脂もしっかりあるため、味噌と脂をうまくなじませるのがひと苦労でした。いまは、フードプロセッサーで合わせてみようかと、調理方法の検討をしています。
羊肉の肉味噌の評判はどうでしたか?
羊肉になじみのない方から「おいしい!」と言っていただけ、手応えを感じました。乳肉加工分会では、他にも羊肉のおにぎりを作り、「生産物感謝祭」という学校行事で約80人に提供したところ、好評でした。さまざまな加工、調理で、羊肉を普及させていきたいとも考えています。
3年生になり、「探求活動」も行っているそうですが、そこでも羊肉を使った取り組みにチャレンジしているんですか。
はい。顧問の石田先生と二人で羊肉のベーコンを製造しています。
なぜ、ベーコンなんですか?
本校では、羊肉のバラ肉はあまり活用されていなかったんです。それはもったいないと思ったのがきっかけです。また、ベーコンなら食べやすいだろうと思ったので、羊肉の普及にもつながるのではないかと期待を込めました。
3年間、羊肉とがっちり向き合ってきたようですね。
そうですね。思えば、1年の時に飼育を経験できたことは本当に良かったです。羊がよく動かしている部位は肉質が硬いなどの傾向が把握できましたし、そうした知識を身に付けられたからこそ、硬い部位はひき肉に加工してソーセージに、やわらかい部位はジンギスカンになど、部位ごとに適した加工法があることの理解も深まりました。
これまでさまざまな研究を行っていますが、成果は発表したりしましたか。
2年のとき、日本学校農業クラブ 北北海道実績発表大会に出場し、肉味噌を地域の特産品として売り出すための研究について発表しました。多くの方々に、自分が頑張ってきたことを伝えられて、とても嬉しかったです。また、今年は校内技術競技大会[食品]で最優秀賞をいただくことができました。
高校卒業後の進路は決まっていますか。
まだ検討中ですが、遠別農業高校で得た学びを活かせる場所に就職したいと考えています。
この3年間の経験と努力を今後もぜひ活かしてください。いいお話をありがとうございました。