Vol.37
北海道遠別
農業高等学校
川村 佳海太さん

わたし × 農業

私が農業に恋した理由
北海道の高校、専門学校、短大、
大学では、たくさんの学生さんが
農業を学んでいます。
農業のどんなところが魅力?
学んでみて知った醍醐味は?
好きだけど大変と感じることは?
青春ど真ん中の日々での実感、
将来の夢などを聞いていきます。

北海道遠別農業高等学校

北海道遠別農業高等学校 川村 佳海太さん

開拓から100年以上の歴史を刻む遠別町にある、日本最北の農業高校。全校生徒が約60名の小規模校だからこそ可能な「充実した個別指導」、1人1課題による「探求活動」が特徴で、次代の農業を見据え、ICT・先進技術を活用した実習も行われています。道立高校ながら、町からは生徒の約8割が暮らす寮費、医療費、制服購入の補助があるなど、地域全体で生徒一人ひとりを応援しています。

北海道遠別農業高等学校
098-3541 遠別町字北浜74番地
http://www.enbetsunougyou.hokkaido-c.ed.jp/
TEL:01632-7-2551

  • 川村さん

    川村さん

  • GREEN編集室

    GREEN編集室

GREEN編集部 川村さんは、遠別町から車で約1時間40分ほどの留萌市の出身だそうですね。なぜ、遠別農業高校に進学したのですか。

川村さん 私は食べることが好きで、自分が食べている食品がどのように作られているかを知りたいと思っていたところ、遠別農業高校では食品について化学的に学べるとわかり、進学を決めました。授業では体験学習が多く、食品製造工程や加工法などを自分の目で見て、知ることができます。体験学習は、教科書や人からの話だけではピンとこないことも、実際に自分がやってみると理解できて面白いですし、とても魅力的です。

GREEN編集部 遠別農業高校では、1年生の授業で羊の飼育も行っていますね。その様子を簡単に教えてもらえますか。

川村さん 学校の敷地内に羊舎と、羊を放せるパドックがあり、そこで顔と四肢が黒い希少品種、サフォーク種を飼育しています。羊が食べる牧草を一生懸命に運んだときの汗は忘れられません。その時の苦労があるから、羊肉を扱うときは丁寧にしなければという思いが強まりました。

GREEN編集部 2年生になると、羊の世話はなくなるんですか?

川村さん 2、3年生では、「プロジェクト学習」といって、一人ひとりが興味のある分野を選ぶ分会に所属し、羊の飼育は畜産分会が担当します。私は「プロジェクト学習」では乳肉加工分会に所属し、2年の時は羊の肉を使用した肉味噌を開発しました。

GREEN編集部 羊の肉で作る肉味噌とは、珍しいですね。

川村さん 羊肉の独特な風味を苦手とする消費者が多いと考え、風味をうまく打ち消してくれる味噌を利用し、貯蔵性を持たせた加工品にしようと考えました。味噌と合わせると、臭みはほとんど感じなくなります。また、肉味噌にすると、さまざまな食品と組み合わせて加工できるところが面白いです。

GREEN編集部 最初からうまく作ることができたのですか。

川村さん 羊肉は他の肉に比べてヘルシーと言われているものの、脂もしっかりあるため、味噌と脂をうまくなじませるのがひと苦労でした。いまは、フードプロセッサーで合わせてみようかと、調理方法の検討をしています。

GREEN編集部 羊肉の肉味噌の評判はどうでしたか?

川村さん 羊肉になじみのない方から「おいしい!」と言っていただけ、手応えを感じました。乳肉加工分会では、他にも羊肉のおにぎりを作り、「生産物感謝祭」という学校行事で約80人に提供したところ、好評でした。さまざまな加工、調理で、羊肉を普及させていきたいとも考えています。

GREEN編集部 3年生になり、「探求活動」も行っているそうですが、そこでも羊肉を使った取り組みにチャレンジしているんですか。

川村さん はい。顧問の石田先生と二人で羊肉のベーコンを製造しています。

GREEN編集部 なぜ、ベーコンなんですか?

川村さん 本校では、羊肉のバラ肉はあまり活用されていなかったんです。それはもったいないと思ったのがきっかけです。また、ベーコンなら食べやすいだろうと思ったので、羊肉の普及にもつながるのではないかと期待を込めました。

GREEN編集部 3年間、羊肉とがっちり向き合ってきたようですね。

川村さん そうですね。思えば、1年の時に飼育を経験できたことは本当に良かったです。羊がよく動かしている部位は肉質が硬いなどの傾向が把握できましたし、そうした知識を身に付けられたからこそ、硬い部位はひき肉に加工してソーセージに、やわらかい部位はジンギスカンになど、部位ごとに適した加工法があることの理解も深まりました。

GREEN編集部 これまでさまざまな研究を行っていますが、成果は発表したりしましたか。

川村さん 2年のとき、日本学校農業クラブ 北北海道実績発表大会に出場し、肉味噌を地域の特産品として売り出すための研究について発表しました。多くの方々に、自分が頑張ってきたことを伝えられて、とても嬉しかったです。また、今年は校内技術競技大会[食品]で最優秀賞をいただくことができました。

GREEN編集部 高校卒業後の進路は決まっていますか。

川村さん まだ検討中ですが、遠別農業高校で得た学びを活かせる場所に就職したいと考えています。

GREEN編集部 この3年間の経験と努力を今後もぜひ活かしてください。いいお話をありがとうございました。