關さんは、本州出身だそうですね。なぜ、酪農学園大学附属 とわの森三愛高等学校(以下、とわの森三愛高校)へ進学したのですか。
私は神奈川県川崎市の出身で、家族も親戚も農業とは無縁です。幼い頃から、牧場へ連れて行ってもらうことが結構あって、それをきっかけに農業や酪農に興味を持ち始めました。高校は、当初は県内の農業高校を考えていたのですが、せっかくなら酪農が有名な北海道で学びたいという気持ちが強くなり、検討を重ねた末に、とわの森三愛高校を選びました。
周りの人は反対しませんでしたか?
はい。両親は、もともと普通高校より専門的な知識を高校から学んでほしいと思っていたので、賛成してくれました。私自身は親元を離れて生活できるか不安もありましたが、家族や友人が、「やりたいことを頑張って」と応援してくれたので心強かったです。
3年間の授業の中で、特に興味・関心を持った科目とそのポイントを教えてください。
特に面白いと思ったのは、「農業経営」という科目です。一般的には、利益を上げるためにはコストを下げることが鉄則と考えますが、酪農の場合は、家畜の能力を上げるという方法もあるなど、農業独特の経営の仕方があることを学びました。
好きな授業はなんですか。
校内の牛舎で搾乳やエサやりなどをする「総合実習」です。この実習で、搾乳は手搾りではなくミルカーを使うことを初めて知り、驚きました。下の写真は、削蹄のための足上げ練習をしているところです。農業はつらいだけの仕事だろうと想像していたのですが、実はとてもやりがいがあり、楽しいです。
発見がいっぱいの毎日ですね。
はい。搾乳ひとつとっても、乳を搾る以外に、消毒や前搾りなどたくさんの行程があり、手間がかかります。でも、自分がそうして搾った生乳を加工し、付加価値を付けたものが、消費者の方に喜ばれたりすると、農業ってやっぱりいい仕事だなぁと思いました。
実際に、何か作って販売したことがあるんですか?
栗山町の谷田製菓さんと共同で、牛乳とはちみつを使ったきびだんごを開発しました。2年後期からの課題研究班で取り組んだプロジェクトで、アイデア出しからコンセプトづくり、江別市観光協会主催のコンペでのプレゼンまで行い、私は発表者として参加しました。ここでグランプリを獲得できたことから商品化へのチャンスをいただき、味はもちろん、パッケージデザインも含めて、いろいろな試行錯誤を重ねました。苦労した力作なので、たくさんの人に手に取ってほしいと思っています。
北海道で農業を学んだからこその経験は、ありますか。
3年の校外実習で道南の八雲町に行き、大規模な牧場を見ることができました。学校の敷地もとても広いと思っていましたが、その何倍もありました。そこでは、餌の量や質にとてもこだわっていて、また、学校で勉強した以外のコストを減らすためのいろいろな工夫を聞き、驚きました。この校外実習は、学校の牛舎しか知らない私の視野を広げてくれた、貴重な経験です。写真の「えべつマルシェ」でふれあい体験を提供したことも、いい思い出ですね。
川崎市で暮らしていた3年前と比べて、關さん自身は変わったと思いますか?
自分で言うのも恥ずかしいですが、とても成長したように思います。まず、農業に対する考え方が変わり、視野が広がりました。そして、寮生活を通して親のありがたみを知ることができ、自分のことは自分自身でやるという考えが身に付きました。
思い残すことはありませんか?
友達もたくさんできましたし、部活も有終の美を飾れて、とても充実したいい高校生活でした。牛舎実習などで仲間と協力し合えたのも楽しい思い出です。唯一、悔しかったのは、今年の農業クラブの意見発表会で、さきほどお話したきびだんごに関する発表を行ったのですが、結果は優秀賞で、全道大会に行けなかったことです。
この3年間、ご自身の可能性を広げてきた關さんは、将来どのような道に進みたいと考えていますか。また、北海道の農業にはどんな可能性があると思いますか。
私自身は農業系の大学に進学して、大好きな乳製品を届ける仕事に就きたいです。私を成長させてくれた北海道は土地の広さを活かすことで、飼料の自給率をもっと上げることができると思います。それを強みとすれば、安定した農業が続けられるのではないでしょうか。
では最後に、關さんの北海道おすすめスポットを紹介してください。
小樽市の住吉神社です。鳥居からまっすぐ道が延びて、海に繋がっていて、きれいなところがお気に入りです。季節ごとに代わる花手水(はなちょうず)も、とてもきれいですよ。
きょうはたくさんのお話をありがとうございました。これからも乳製品を消費者に届ける夢に向かって頑張ってください。