Vol.42
北海道倶知安
農業高等学校
畜産班のみなさん

わたし × 農業

私が農業に恋した理由
北海道の高校、専門学校、短大、
大学では、たくさんの学生さんが
農業を学んでいます。
農業のどんなところが魅力?
学んでみて知った醍醐味は?
好きだけど大変と感じることは?
青春ど真ん中の日々での実感、
将来の夢などを聞いていきます。

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北海道倶知安農業高等学校 畜産班のみなさん

1941年開校、歴史と伝統をもつ後志(しりべし)地区唯一の道立農業高校です。1年生は農業の基礎・基本を学び、2年生になると、良質な農畜産物の生産・加工・販売に関する知識と技術を学ぶ「生産加工コース」、草花栽培やガーデニング、生産物活用、食に関する学習を通して創造性や感性を養う「生活園芸コース」のいずれかを選択。3年間を通して、体験的な活動の機会が多い教育が特徴です。

北海道倶知安農業高等学校
044-0083 倶知安町字旭15番地
http://www.kucchannougyou.hokkaido-c.ed.jp/
TEL:0136-22-1148・1149

  • 山内さん

    山内さん

  • 辺見さん

    辺見さん

  • GREEN編集室

    GREEN編集室

GREEN編集部 今回は、倶知安農業高等学校の畜産班の活動について、班を代表して3年生の山内さん、2年生の辺見さんにお聞きします。まず、畜産班の全体像を教えてください。

辺見さん 畜産班は2、3年生を対象とした専攻班のひとつで、山口靖司先生を顧問に6人のメンバーで活動しています。肉牛の飼養管理や餌の開発などに取り組んでいて、なかでも「ようてい和牛プロジェクト」が最大の特徴であり、柱です。

山内さん 倶知安町があるようてい地区はじゃがいもが特産です。「ようてい和牛プロジェクト」は、地元のじゃがいもで作るでんぷんの絞り粕(じゃがいもでんぷん粕)を使って飼料を開発・改良し、黒毛和牛に与え、排出されたふんを堆肥化して畑へ還元しています。こうした地域循環サイクルの確立と、もうひとつ、「ようてい和牛」というブランドづくりを並行して進めています。

辺見さん じゃがいもの飼料化は2014年に始めたそうです。ちょっとアピールさせていただくと、倶知安農業高校は、道内の農業高校で初めて肉用牛の一貫飼育の学習に取り組んだ高校でもあるんですよ。

GREEN編集部 おふたりは「ようてい和牛プロジェクト」で、特にどのようなことに力を入れてきましたか。

山内さん 私は飼料づくりです。じゃがいもでんぷん粕は、含水率が高く、酸化によって腐敗しやすい原材料です。そのため、脱水する作業が重要になります。生産者さんからいただく量がとても多いので、どのようにして作業の省力化を図るかを考えました。

辺見さん 私は牛の飼養に力を注ぎました。学校の畜舎や施設設備、飼料生産のための機械などが老朽化しているため、どうしても手作業が多くなり、ちょっと大変でした。

GREEN編集部 「ようてい和牛プロジェクト」を核とした日々の学びが、「第7回和牛甲子園」(2024年1月)の出場へとつながりました。

山内さん 「和牛甲子園」は、和牛を飼養している全国の農業高校を対象に、和牛の飼養にまつわる取り組みなどを発表する「取組評価部門」と、飼養した和牛を出品し枝肉の評価を競う「枝肉評価部門」の総合得点を競う大会です。第7回大会には、過去最多の41校が出場し、59頭の和牛が出品されました。

辺見さん 山内先輩は第6回大会にも参加していて、私は1年のときに学校で行われた大会報告会に参加しました。そこでお会いした地域の生産者さんから教わった多くのことが、今も役立っています。第7回大会の準備では、私は取り組みを紹介するスライドや動画づくりの担当で、プロジェクトの独自性や特徴をわかりやすく伝えるためにさまざまな工夫を凝らしました。

山内さん 第6回大会の報告会にお越しになった生産者さんが、私たちをとても応援してくださり、支えてくれる大人がいることをとても心強く感じました。そうしたことに支えられながらも、第7回大会に向けては、和牛を無事に出荷できるだろうかと心配は尽きませんでした。顧問の山口先生は、削蹄の加減などを気にされていたことを覚えています。下の写真は、今回出品した「羊蹄20の69」を学校の牛舎から運びだすところです。

辺見さん 「羊蹄20の69」の全身はこちらです。体型も、毛の色つやもいいですよね。

GREEN編集部 全国から志を同じくする強豪が集まる「和牛甲子園」に参加して、どのようなことを感じましたか。

山内さん 「居場所は違っても気持ちは同じ」という仲間が全国にいて、しかも、みんながとても頑張っていることに刺激を受けました。

辺見さん 他校の取り組みを見聞きし、他校が育てた枝肉を見て、「ようてい和牛プロジェクト」により磨きをかけたいと思いました。また、他校のほうが小さなところまで緻密に準備していることを知り、この差を埋めなければと感じました。第7回大会では入賞できず残念でしたが、出品した枝肉がA5ランクに評価されたことはうれしかったですし、ほっとしました。

GREEN編集部 これまでの活動を振り返って、牛の飼養には何が最も大切だと感じていますか。

山内さん 自分たちで一生懸命やることも大切ですが、地域との連携が必要だと思いました。飼料の研究にあたって、生産者さんから原材料をいただいたり、大切な牛を試験牛として預からせてもらったり、地域の方々にたくさん助けていただきました。和牛生産や畜産経営には、地域との連携はなくてはならないのではないでしょうか。

辺見さん 日々改善を積み重ねていくことと、なにより、牛にとって良い環境をつくり続けることが大切だと感じています。

GREEN編集部 北海道農業・畜産業の発展のために、どのような取り組みや視点が必要だと思いますか。

辺見さん 小・中・高校で農業教育を義務化してはどうかなと思います。また、生産者さんの労力に寄り添う視点もほしいです。

山内さん 和牛でいえば、格付や評価は気になるところだと思いますが、そこにとらわれ過ぎず、「おいしさ」を求めてほしいと思います。

GREEN編集部 山内さんはこの春卒業ですね。後輩たちにエールを送ってもらえますか。

山内さん 研究内容がどんどん進化していくと思いますが、みんなで力を合わせて頑張ってください!

辺見さん 牛をもっと好きになって、牛や地域のことを思いながら、後輩と一緒に「ようてい和牛プロジェクト」を引き継いでいきます。

GREEN編集部 興味深い提案もあり、とても充実したお話でした。今日はありがとうございました。