【特別編】
2020
Miss SAKE
松井 詩さん

わたし × 農業

私が農業に恋した理由
北海道の高校、専門学校、短大、
大学では、たくさんの学生さんが
農業を学んでいます。
農業のどんなところが魅力?
学んでみて知った醍醐味は?
好きだけど大変と感じることは?
青春ど真ん中の日々での実感、
将来の夢などを聞いていきます。

特別編 2020 Miss SAKE

特別編 2020 Miss SAKE 松井 詩さん

帯広畜産大学畜産学部共同獣医学課程在学中に2020 Miss SAKEに選ばれ、「日本酒を通じて、日本文化の魅力を国内外に発信するアンバサダー」として文化貢献活動を行っている、松井 詩さん。冬の帯広で知った熱燗の味、北海道の日本酒と道産農畜産物のおすすめの取り合わせ、北海道の日本酒への期待などを話してくれました。

一般社団法人 ミス日本酒
101-0051 東京都千代田区神田神保町1-14-1 KDX神田神保町ビル2階
https://www.misssake.org/
Mail: sake@misssake.org

  • 松井さん

    松井さん

  • GREEN編集室

    GREEN編集室

GREEN編集部 松井さんは、この春、帯広畜産大学を卒業されました。どのような大学生活を送っていましたか。

松井さん 朝3時に起きて近郊の酪農家さんが飼育している乳牛の搾乳を行い、夏にはじゃがいも、かぼちゃ、にんじんなど、さまざまな収穫のアルバイトを行ってきました。酪農家さん、畑作農家さん、それを調理しおいしい料理を提供する方々、消費する私たち。十勝で出会った数多くの方々との地域交流を通して、その思いを肌で感じ、そして海外で育った一人の人間として、日本の魅力は【食】に凝縮されているのではないかと実感しました。『食と人を繋ぐ架け橋になりたい』という夢を与えてくれた大事な時間でした。

GREEN編集部 昨年からMiss SAKEとして活躍されていますが、日本酒は以前から好きだったのですか。

松井さん 私は、冬の帯広で日本酒に目覚めました。友人に連れられ、入ったお店の店長さんから、日本酒を薦められたのがきっかけです。50℃以上に温めた熱燗で飲むのがおいしいとのことで、熱燗をひと口、おすすめの肴を味わい、またひと口と味わっていくうちに、凍えた指先から伝わる酒器の温かさ、強張る体に染み渡る日本酒のふくよかなお米の味わい、お食事を引き立て口から鼻に抜けるその繊細な香りに、心から感動しました。

GREEN編集部 そうした経験から、Miss SAKEに応募しようと思ったのですか。

松井さん 私は、幼少期をアメリカ、中学から高校卒業までをシンガポールで過ごしました。その間、自分自身が何よりも自国のことを知らなければならないと痛感し、言語だけでなく異文化を肌で感じることで世界から見た日本、その中の一人としてのアイデンティティを培いました。帯広で日本酒の味わいに魅了され、友人とともに訪れた酒蔵様でその歴史や醸造方法を学ぶうちに、日本酒は日本の【文化】と【技術】が融合する芸術であると実感しました。より多くの方々に日本酒の魅力を知ってほしい-使命感にも似た思いからMiss SAKEに挑戦しました。

GREEN編集部 Miss SAKEになって、改めて気づいた日本酒の魅力は?

松井さん 米農家さん、蔵人・杜氏、お客様のニーズに合わせて最高の状態、最適なお料理をチョイスされる酒販店、お店の方々との出会い、さらに海外酒蔵様の取材、(一社)awa酒協会様とのお仕事を通じて、日本酒は長い伝統を守りつつも、時代に合わせ新たな息吹をまとう存在なのだと確信しました。現代の日本酒は、伝統、自然、地域社会、造り手の方々の理念や技術、そうしたいくつもの要素がなす芸術との認識を再確認しました。

GREEN編集部 北海道の日本酒には、どのような特徴を感じていますか。

松井さん 冷涼な気候、良質な水に恵まれた北海道は酒造りに最適の土地で、現在、15の酒蔵があります。北海道の日本酒は、軽快な香味がその特徴でありながら、全国各地から人々が入植してきた歴史から造られるお酒の質もバラエティに富んでいます。また、多種多彩な農畜産物が生産されている地ですから、北海道の日本酒と北海道の恵みのマリアージュも楽しめます。「本醸造酒(爽酒)とラクレットチーズ」、「辛口の日本酒とサーモンのルイベ漬け」、「純米吟醸酒と鹿肉などのジビエ料理」などは、とても相性が良いと思います。

GREEN編集部 北海道の日本酒に、どのようなことを期待しますか?

松井さん 北海道の日本酒造りは、日本酒全体の歴史からみると若い部類に入ります。一方で、北海道に適した酒造好適米の作付、酒造りに生産者と酒蔵が一体となって取り組み、現在では日本酒文化が著しい発展を遂げています。それぞれに個性を放つ酒造好適米「吟風」、「彗星」、「きたしずく」で造る北海道の日本酒に、今後も目が離せません。

GREEN編集部 母校の帯広畜産大学には、全国で初めてキャンパス内に酒蔵が誕生したそうですね。

松井さん はい。醸造学やその歴史、地域の産業と合わせて、日本酒について学ぶ場が学生に提供されています。日本の國酒としての日本酒についてはもちろんのこと、それに合わせた日本の食文化を、食を守る一人の人間としての知見から、国内外を問わず発信していきたいと思っています。

GREEN編集部 今後は、獣医師として勤務されるのですか。

松井さん 来年4月から、宮城県で産業動物の獣医師として就職予定です。大学時代、さまざまな農場で牛に携わってきた経験から、飼育方法や設備、人の接し方により動物にかかるストレスは大きく変化することを実際に自分の目で見て、肌で感じました。命と引き換えに私たちの人生を豊かにしてくれる、産業動物の限られた人生をより良いものにするため、そのQOL (Quality Of Life:クオリティ・オブ・ライフ。「生活の質」や「生命の質」の意味)に携わる獣医師になりたいと思っています。

GREEN編集部 最後に、北海道農業へのエールを一言お願いします。

松井さん 食料を生産する水田、畑、牧場や、三つの海に囲まれた雄大な山々、広大な大地を持つ北海道には、見るものを魅了する四季折々の景観があります。人と環境と動物に優しい北海道の農業に、今後も期待しています。

GREEN編集部 国内外での豊かな経験に根差したご活躍を祈っています。今日はありがとうございました。