おいしいの研究
道産玉ねぎ
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研究者:平原 啓甫さん
ホクレン農業総合研究所 作物生産研究部 園芸作物開発課 。玉ねぎの品種開発を担当して6年目。発芽試験や圃場(ほじょう)調査などを通じて年間数百種類の玉ねぎを見つめている。玉ねぎを使った好きなメニューはポテトサラダ。
だから年中おいしい玉ねぎを
食べられるのか!
炒めものや煮込み、サラダなど、主役の魅力を引き立てる野菜界の名バイプレーヤー・玉ねぎ。もちろん、主役級の活躍をするレシピもたくさんありますよね。そんな玉ねぎの国内生産量第1位、全体の6割以上を占めているのが北海道なんです! 前編では、道産玉ねぎに求められる貯蔵性の高さなどについて、玉ねぎの品種開発に携わる平原さんに聞きました。
玉ねぎって、
根、茎、葉?
突然ですが、問題です。私たちがいつも味わっている玉ねぎは、根、茎、葉のどれにあたるものでしょう?
では、平原さん、さっそく正解をお願いします。「はい、葉っぱです。玉ねぎの底にある糸状のものが根、その根元のわずかな部分が茎で、私たちが食べているのは茎から伸びた葉の部分なんです」。(厳密には「鱗茎(りんけい)」といいます) 圃場で栽培の様子を見せてもらった際、まだ小さな玉ねぎから青ねぎのようなものが伸びていて、これぞまさに葉というイメージでしたが、どちらも同じ葉とのこと。言われてみれば、何層にも重なっている玉ねぎの構造って、キャベツなどの葉もの野菜と似ていますよね。
という感じで、いつでもどこでも当たり前に存在し過ぎていて、だからこそ見過ごしがちな玉ねぎのあれこれを探っていきますよ!
採れない季節を
乗り越えろ!
玉ねぎ王国、北海道。スーパーの玉ねぎコーナーでも「北海道産」の文字をよく見かけます。ただ、「札幌黄」などのブランド玉ねぎを除き、品種名はあまり表記されていないようです。平原さん、道産玉ねぎにはどんな品種があるんですか? 「もっとも多く生産されているのは『北もみじ2000』で約36%。次に多いのが『オホーツク222』で約26%ですね」(※)
2つ合わせて約6割! 「北もみじ2000」のシェアは、なぜそんなに多いのでしょう。「貯蔵性が抜群なんですよ」。貯蔵性については、国内の玉ねぎ収穫リレーを頭に入れるとわかりやすそうです。春から夏までは佐賀県(国内生産量第2位)や兵庫県(同3位)などで収穫され、夏に道産玉ねぎにバトンタッチして秋まで収穫は続いていく…。
そうです、冬には収穫されないのです。これじゃあ、凍えた体を温めるおいしいシチューが味わえません! 「そうならないように、道産玉ねぎの品種開発では、全国的に収穫がない冬から春にかけて出荷できる貯蔵性の高さが追求されてきました」。そうして生まれた超エリートが「北もみじ2000」なんですね。
※北海道農政部生産振興局農産振興課「平成29年産主要野菜の品種別作付状況調査」(平成31年1月集計)
夏の収穫リレーを
スムーズに
シェア2番手の「オホーツク222」は何がすごいんですか? 「他の品種より少し早く収穫できる早生(わせ)品種でありながら貯蔵性が高く、栽培しやすさ等のバランスに優れた品種であることが大きいですね」。
先ほどは収穫のない冬から春をフォローする話でしたが、今度は夏のリレーをスムーズにするという話。「府県産から道産に切り替わる時期は、どうしても市場に出回る量が減り、その分価格も上がりやすいんです」。市場価格の安定のために、少しでも早く出荷できる品種を。これが道産玉ねぎの品種開発におけるもう1つの大きなテーマなんですね。「はい、農総研でも現在はそこに力を注いでいます」。ということで、後編では、「早生」をキーワードに道産玉ねぎの今と未来に迫ります!